衝撃のその先へ…   作:アグD

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感想くれたり、評価してくれる人が増えてうれしくなったので、一日早いですがどうぞ!!





第10話:デイリー杯2歳ステークス

 

ついに、レース当日がやってきた。

 

栗東から京都競馬場へ向かう馬運車の中、俺はガタガタ揺られながら、どうにも落ち着かない気持ちでいた。

 

 

なぜなら、昨日の調教が地獄だったからだ…

 

なにが地獄かって?それは不二沢さんと岡戸さんの二人がかりで、「どんな状況でも焦らないように」って、あらゆるパターンのレース展開を叩き込まれたからだ。

 

(そんなに心配なのかな……?今回は、岡戸さんの指示を何があっても聞くから大丈夫だって!!あと、流石にあの量は覚えられない…頭パンクしちゃうよ!!)

 

……けど、問題はそれだけじゃなかった。

 

調教の時に、実際の走りだけじゃなくて、二人は地面に棒で絵を描きながら説明してくれた。

 

「ここがスタートで、ここが第4コーナーでな……」

 

「で、ここでお前がこう動いて……」

 

(いやいやいや……俺、馬だよ!?そんな図解で説明する調教師、他にいないよ!?)

 

周りの調教師たちが、明らかに“変なものを見る目”でこっちを見ていた。

 

(ホント大丈夫か……?俺としては助かるけど……人間社会での立場が心配になるんだけど……)

 

でも、二人はもう確信しているんだろう。

 

俺が言葉を理解しているってことを。

 

(まぁ……便利だからいいけどね…)

 

 

 

と、昨日は色々考えることが多く覚えてないことも多く、いざ本番直前となると、教えてもらったレース展開を思い出すことで頭がいっぱいで、考え事のせいか今回の馬運車では一睡もできなかった。

 

(あれが第3コーナーで……いや違う、外に出すのは直線入ってからで……あれ?どこで仕掛けるんだっけ!?)

 

とにかく緊張しすぎて、馬運車の中でずっとソワソワしていた。

 

 

そして、京都競馬場のパドックに入っても、俺の緊張はまったく収まらなかった。

 

(落ち着け……落ち着け……作戦忘れたら終わり……)

 

ガチガチに固まって歩いていたら、観客の声が聞こえてきた。

 

「お母さん、見て!あの馬、前と後ろの足が同時に出てるよー」

 

「あの馬めっちゃくちゃ緊張してるな……」

 

(うわぁぁぁぁぁ!!見られてる!!)

 

そのせいか競馬ガチ勢っぽいおじさんたちは、俺を見て首を横に振っていた。

 

「あれは切りだな……スタートでこけそうだ」

 

(ごめん……でも無理……緊張で足が勝手に……)

 

でも、親子連れやカップルといった人々は違った。

 

「がんばれー!黒い子ー!」

 

「緊張してるの可愛いねぇ」

 

(うぅ……ありがとう……!俺、頑張るよ……!)

 

そんな緊張状態でパドックを終え、ゲートへ向かうために歩き出したその時だった。

 

背中に乗る岡戸さんが、俺の首筋を「パシンッ!」と、けっこう強めに叩いた。

 

「いいか、ソブリン」

 

その声は、いつもより低くて、真剣だった。

 

「競馬ってのは、人馬一体にならないといけないんだ」

 

(……人馬、一体)

 

「お前が全部をやろうとしなくていい。ソブリン、お前が賢すぎたせいで……私たちはつい、教えすぎてしまったようだ」

 

(……え?)

 

「だから、そんなに悩まなくていい。私たちがやってほしいのはただ一つ」

 

岡戸さんは、俺の首を優しく撫でた。

 

「私を信じて、お前の全力でターフを駆けてくれ。それだけだ。」

 

(……岡戸さん…分かったよ!俺、岡戸さんを信じる!! そして――俺を勝利に導いてくれ!!)

 

決意を固めた直後、俺は1番ゼッケンの馬として、一番最初にゲートへ入れられた。

 

ガシャン、と鉄の扉が閉まる。

 

(……よし、落ち着け。ここからは岡戸さんを信じるだけだ)

 

後続の馬たちが次々とゲートに入っていく。しかし――今日はやけに時間がかかった。

 

(長い……長すぎる……これ絶対、誰かごねてるだろ!……あと、待てない馬も絶対いるだろ……)

 

案の定、周りの馬たちもイライラし始めていた。

 

『ブフッ……!』(さっさと走らせろ!!)

『ヒヒンッ!!』(狭いよ!!早く出してよ!!)

 

(ほら見ろ……もう限界のやついるじゃん……てか俺もそろそろムカついてきたぞ(-_-メ)…)

 

ゲートの中は狭くて暗くて、今日はただでさえ落ち着かないのに、この“待ち時間”は本当にキツい。

 

(早くしてくれよ……頼むから……)

 

俺でさえイライラしてきた頃、ようやく最後の馬がゲートに収まった。

 

(よし……全員入った……!いよいよだ……!!)

 

 

そして――

 

世界が一瞬静寂に包まれ…

 

――カンッ!!

 

ゲートが開いた。

 

 

『行く!!』

 

俺は飛び出したい衝動を抑え、岡戸さんの指示に従って、馬群の中団へスッと収まった。

 

『これが……“王道の作戦”……!』

 

前走では絶対できなかった動きだ。

 

ペースはのっそりしていて、前の馬たちも落ち着いている。

 

『焦らない……焦らない……まずは岡戸さんの声を待つ……』

 

そして直線に差し掛かった瞬間、岡戸さんが手綱を軽く引き、ついでに小声でつぶやいた。

 

「このまま、少しペースを上げろ」

 

『あいあいさー』

 

俺はその指示通りにスピードを上げ、前の馬のすぐ後ろへピタッとつけた。

 

(で、どうしたらいいです?岡戸さん?)

 

「このまま内側ギリギリを維持して、コーナリングもだ」

 

『了解!』

 

最後のコーナーを、俺は内ラチすれすれで駆け抜けた。

 

その瞬間――前の馬が外へ膨らみ、目の前に抜け道が開けた。

 

「今だ!! ソブリン!!」

 

(うおおおおおお!!)

 

俺はその合図を受け、馬群を一気に飛び出した。

 

ムチなし。

ただの合図だけで加速する。

 

風が変わる。

視界が開ける。

 

(抜ける……抜ける!!)

 

前にいた馬たちが、まるで止まって見えるほどの伸び。

 

観客の声が爆発した。

 

「ソブリン来た!!」

 

「なんだこの強さ…!」

 

「強い!!強すぎる!!」

 

(さらに!……向こうへ!!)

 

岡部さんが叫ぶ。

 

「ソブリン!!そのまま行けぇぇぇ!!」

 

(任せて!!)

 

俺は全力でターフを蹴り――

 

7馬身差の圧勝。

 

観客がどよめき、実況が叫び、岡戸さんが俺の首を叩いた。

 

「やったぞ、ソブリン!!完璧だ!!」

 

(やった……やったぁぁぁ!!)

 

俺は、岡戸さんを信じて走り、岡戸さんに導かれて勝った。

 

これが――人馬一体の走りか…なかなか気持ちの良い走りだったぜ!

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

デイリー杯2歳ステークスが終わり、ウイナーズサークルの横では、馬主陣へのインタビューが始まっていた。

 

カメラが向けられ、マイクが差し出される。

 

 

『今回の勝利、おめでとうございます!まずは不二沢調教師、今のお気持ちは?』

 

不二沢さんは、まるで「当然だろ」と言わんばかりの顔で答えた。

 

「これくらいは当然です」

 

(え、当然なの!?)

 

「ソブリンは能力が高い。今日の結果は、むしろ順当ですよ」

 

淡々と、しかし自信満々に語る。

 

 

続いて、岡戸さんにマイクが向けられる。

 

「まあ、7馬身差は妥当です」

 

(妥当なんだ!?)

 

「ただ問題は、あのぶきっちょな馬をどう鍛えるかですね」

 

(ぶきっちょって言われてる……)

 

「クラシックは取れますし、取らせます」

 

その言葉には、一切の迷いがなかった。

 

(かっけぇ……てか、クラシックって何?)

 

 

そして最後に、馬主の松田さんへマイクが向けられた。

 

『松田オーナー、今日の勝利はいかがでしたか?』

 

松田さんは、明らかに戸惑った顔で口を開いた。

 

「えっ……あ、はい……いや、その……え?勝ったんですよね?」

 

(めっちゃ戸惑ってる!!)

 

「いや、もちろん嬉しいんですけど……7馬身って……え?そんなに強かったの……?」

 

(オーナーが一番驚いてる!!)

 

「え、あの……これからも、よろしくお願いします……?」

 

最後は完全に“困惑したままの笑顔”で締めた。

 

 

その横で観客の声がどっと湧き上がる

 

『ソブリン強すぎ!』

 

『しかもテイオー産駒でしょ!夢が広がるわ~』

 

『これは、ディープに続く無敗の3冠行けんじゃね!?』

 

『4番人気でこれは反則だろ!』

 

その声を聞きながら、俺はウイナーズサークルで胸を張っていた。

 

 

そして――俺は鼻を高く鳴らし、次のレースに向けて期待を昂らせた。





な、なんだこいつ…(恐怖)



今回のレースはあっさりめで、次のレースは実況入れます!


あと改めて、評価と感想ありがとうございます!!
皆さんの感想も読むのが楽しいので改善案とかでもどしどし書いちゃってください!!
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