衝撃のその先へ…   作:アグD

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昨日は投稿できなくて申し訳ないです…少し忙しくて…
ってことで明日、明後日は絶対投稿します!
とりあえず、どうぞ!


第11話:ケンカ!

 

 

デイリー杯を圧勝した俺は,一度栗東の厩舎に戻って、ここで世話になったみんなから軽く祝福を受けた。

 

(“軽く”のはずなんだけど……)

 

特にグルーヴさんとシーザリオさんといった歳上の牝馬からは――ちょっとネットリした祝福を受けた。

 

『ソブリン、すごかったらしいわねぇ……♡』

『今度、もう一回手取り足取り教えてあげよっか?……♡』

 

(や、やめて……近い近い!!)

 

ムーン君とリシャール君は笑っていた。

 

『お前、完全にお姉さま方のアイドルじゃん』

『あーあ、匂いめっちゃついてるぞ』

 

(うるさい!!)

 

そんなこんなで祝われたあと、俺はすぐに美浦へ帰ることになった。

 

 

そして美浦に着き、放牧地へ向かうと――

 

そこには、まるで待ち構えていたかのようにスティルインラブが立っていた。

 

「あ、スティルさん!久しぶりですね!!」

 

『あら、待っていたわ』

 

「え!待っていてくれたの?嬉しい!」

 

『うふふ……ところであなた、レースは勝ったみたいね。』

 

「え!なんで知ってるんですか!?」

 

『ええ。私の騎手さんが教えてくれたわ。』

 

「そうなんですね! そしたら、スティルさんのレースはどうなったんですか?」

 

 

スティルさんはわざとらしく首を傾げた。

 

 

『あら、知らないのね……』

 

「い、いや!もちろん知ってますよ…!! た、たしか勝ったんでしたっけ…?」

 

『まぁいいわ。許してあげる。

 もちろん勝ったわよ。

 

「流石スティルさんですね!!」

 

『当然よ。だから、私はご褒美が欲しいのだけ――』

 

 

そう言いながら、スティルさんがゆっくり近づいてくる。その鼻先が、俺の首元にピタッと触れた瞬間――

 

空気が変わった。

 

 

『……ねぇ、ソブリン。』

 

「ひっ……!?」

 

 

『なんであなたから……ほかの女の匂いがするの?しかも、あの女狐の…』

 

「あっ……これは……その……」

 

 

スティルさんの目が、にっこり笑っているのに、全然笑っていない。

 

(やばい……これはやばい……!!)

 

これは本格的にヤバいと思ったその時だった。

 

 

放牧地の奥から、ズシッ……ズシッ……と重い足音が近づいてくる。

 

(え……この迫力……まさか……)

 

姿を現したのは――海外遠征から帰ってきたゼンノロブロイ さんだった。ロブロイさんは状況を一瞬で察し、目を細め、耳を伏せ、低い声で言い放った。

 

『おいスティル……てめぇ 俺の弟子を脅すたぁどういう了見だぁ!?』

 

(お、親分!!助けてくれぇー!!)

 

だがスティルさんは冷静に、しかし挑発的に返す。

 

『あら、ロブロイじゃないの?悪いけど、これは“私たち”の話なの。口出ししないでもらえる?』

 

ロブロイさんの眉がピクリと動く。

 

『“私たち”の話だぁ?俺の弟子を困らせるたぁ、礼儀がなってねぇじゃねぇか!!』

 

スティルさんも負けていない。

 

『礼儀?あなたこそ、弟子だのなんだの勝手に言って……ソブリンは私の大事な――』

 

『大事な“何”だって?言ってみろよ?あぁん!?』

 

『言わないわよ!!あなたに言う義理なんてないもの!!』

 

『じゃあ黙ってろ!!ソブリンが怯えてんだろうが!!』

 

『怯えさせてるのはあなたでしょ!!大声出さないで!!』

 

『出すわ!!弟子守るためならな!!』

 

(やめてぇぇぇ!!俺のために争わないでぇぇぇ!!)

 

二頭は鼻先をぶつけ合い、完全にケンカモードに突入した。

 

土が舞い、地面が震え、放牧地の空気がピリピリと張りつめる。

 

 

 

 

その時だった。

 

放牧地の外から、聞き覚えのない男性の怒鳴り声が響いた。

 

「スティル!!ゼンノロブロイ!!やめろ!!」

 

(だ、誰!?)

 

見知らぬ人が、スティルさんに向かって全力で走ってくる。続いて、不二沢さんと岡戸さんも駆け寄ってきた。

 

「ほらスティル。落ち着いて…」

 

「おいロブロイ!! ソブリンを巻き込むな!」

 

「二頭とも落ち着け!!危ない!!」

 

三人がかりで必死に引き離す。

 

ロブロイさんは鼻を鳴らし、スティルさんはプイッとそっぽを向いた。

 

(はぁ……助かった……でも、なんか申し訳ない……)

 

 

 

そこへ、追加で七瀬さんが駆け寄ってきた。

 

「ソブリン。今日はもう馬房に戻ろっか……」

 

「ヒヒン……」(はーい……)

 

俺は七瀬さんに連れられ、二頭のケンカを背にしながら放牧地を後にした。後ろではまだ、ロブロイさんとスティルさんが人間たちに押さえられながら睨み合っている。

 

(……帰ってきて早々これかよ……二匹には悪いことしたな……)

 

七瀬さんが優しく背中を撫でてくれた。

 

「今日はよく頑張ったんだから、もう休んでいいよ」

 

(……うん。今日はもう寝よう)

 

馬房に戻ると、藁の匂いがふっと安心をくれた。

 

俺はそのまま、静かに目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

岡戸さんside

 

 

放牧地での大騒ぎがようやく収まり、私と不二沢さん、そしてさっきソブリンを助けに飛び込んできた男が、放牧地の柵の前で肩で息をしていた。

 

「……いやぁ、今のは危なかったな」

 

私がそう言うと、

 

「まったくだ。まさかあの二頭が本気でやり合うとは思わなかったよ……」

 

不二沢さんが苦笑しながら汗を拭った。

 

その横で、先ほどの男が帽子を取り、深々と頭を下げた。

 

「すみません、先ほどはありがとうございました。止めに入っていただいて……」

 

「いや、そんなに気にしなくてもいいぞ、御幸君」

 

不二沢さんも頷く。

 

「こちらこそ、スティルインラブ を押さえてもらって助かったよ」

 

男――御幸秀明は、少し照れたように笑った。

 

今、こちらに頭を下げているこの男は、スティルインラブの担当騎手、御幸秀明 である。

 

 

そして御幸さんは、こちらを見ながら少し困ったように眉を下げた。

 

「普段のスティルは大人しいんですけどね…というか大人しすぎて目立たたないんですけど…今日は、ソブリンの匂いを嗅いだ瞬間にスイッチが入ったみたいで」

 

「匂い……?」

私が聞き返すと、

 

不二沢さんがため息をついた。

 

「あれじゃないか?栗東から出発する際に牝馬たちに囲まれてたからな。その匂いじゃないか?」

 

「あー……」

私は頭を抱えた。

 

御幸さんは続ける。

 

「でも、あんなに怒るスティルは久しぶりでした。昔の……クラシック期の頃の気迫を思い出しましたよ」

 

不二沢さんが目を細める。

 

続いて、御幸さんは、少し迷ったように言った。

 

「実は……スティルの引退を考えていたんです。でも今日の気迫と今回のレースを見て、思い直しました」

 

私と不二沢さんは顔を見合わせる。

 

「まだ走れる、と?」

 

「はい。次はエリザベス女王杯に向かいたいと思っています」

 

不二沢さんはゆっくり頷いた。

 

「いい判断だ。今日のスティルは……確かに“戦う馬”の顔をしていた」

 

私も同意した。

 

「ソブリンに怒ってた時の迫力、すごかったもんな……」

 

御幸さんは苦笑した。

 

「ええ……あれは本気でしたね」

 

しばらく沈黙があり、不二沢さんがぽつりと言った。

 

「……で、ソブリンの方はどう見る?」

 

俺は腕を組んだ。

 

「走りは文句なし。気性も前より落ち着いてきた。ただ――」

 

御幸さんが首を傾げる。

 

「ただ?」

 

俺は苦笑しながら言った。

 

「……まさかとは思うが、あいつ、スティルに恋されてるんじゃねぇか?」

 

不二沢さんが吹き出した。

 

「いや、あり得るな。あの慌てっぷりは普通じゃない」

 

御幸さんも苦笑しながら頷いた。

 

「ま、まさかスティルが……けど、そうしたら今日の気迫は説明つきますね…」

 

三人は顔を見合わせ、同時にため息をついた。

 

「……こりゃ、しばらく騒がしくなるな」

 

最後に、御幸さんがふと思い出したように言った。

 

「そういえば……スティルは予定通り、明日そのまま栗東に戻す形で大丈夫ですか?」

 

「ああ、その予定で頼むよ」

 

そう答えた瞬間、三人同時に、また深いため息が漏れた。

 

「……明日、絶対また揉めるよな」

「間違いなくな」

「ソブリンの前で会わせたら……地獄だな……」

 

三人の視線が揃って遠くを見つめる。

 

そして――

 

「……はぁ、明日が思いやられる」

 

その言葉で、夕方の放牧地に静けさが戻った。

 






まさかスティルが府中牝馬Sを勝っているとは…
これ、ウマ娘のストーリー大幅に変わるな。

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