レース前の箸休め回です。どうぞ!
朝日が差し込む馬房。藁の匂いと、ほんのり冷たい空気が心地いい。
(ん……よく寝た……)
昨日の騒動を思い出し、ちょっとだけ心が沈んだ。
そこへ、軽い足音。
「おはよう、ソブリン」
七瀬さんが笑顔で入ってきた。
「ヒヒン」(おはよう)
朝飼いの餌が置かれ、俺はもぐもぐ食べながら、七瀬さんに裏堀り*1をしてもらう。
「昨日は大変だったねぇ……でも、ソブリンはよく頑張ったよ」
(うん……ありがとう)
そんな穏やかな時間の中――七瀬さんが何気なく言った。
「そういえばスティルちゃん、今日の朝に栗東へ戻るんだって」
……ピタッ。
俺の足が固まった。
「ソブリン?どうしたの?」
(スティルさん……帰っちゃうの……?)
七瀬さんが足を離した瞬間――俺は馬房から飛び出した。
「ちょっ、ソブリン!?待って!!」
厩舎の前に停まった馬運車。
その前で、スティルインラブが乗り込みをめちゃくちゃ抵抗していた。
『……いやよ。まだ……』
御幸さんが困った顔で言う。
「スティル、頼むよ……栗東に戻らないと調整ができないだろ……?」
そこへ――
「ヒヒィィィン!!」(スティルさーーーん!!)
俺は全力で駆け込んだ。
スティルさんが驚いて振り向く。
『ソ、ソブリン……!?』
「スティルさん、帰っちゃうの……?」
スティルさんは一瞬だけ目を丸くし、すぐに柔らかく微笑んだ。
『ええ。帰るわ。でも、またすぐ会えるもの』
「……昨日は、ごめんね」
『ふふ、もう怒ってないわよ。あなたの顔を見たら、どうでもよくなったわ』
(よかった……)
スティルさんは俺の顔をじっと見つめた。
『あなたが頑張るなら、私も負けていられないの。だから――』
スティルさんは馬運車のステップに前脚をかけ、振り返って言った。
『次に会う時までに、もっと強くなっておきなさい 約束よ』
胸が熱くなる。
「うん!!絶対強くなる!!」
スティルさんは満足そうに頷き、馬運車に乗り込んだ。
知らない人が俺に笑いかける。
「ありがとう、ソブリン。スティル、やる気出たみたいだよ」
馬運車がゆっくり動き出す。
俺は見えなくなるまで、ずっとその後ろ姿を見送っていた。
……その時だった。
「ソブリーーーン!!!!」
(ひっ!?)
背後から雷みたいな声が落ちてきた。
振り返ると――七瀬さんが、顔を真っ赤にして全力疾走でこっちに向かってきていた。
「なんで勝手に馬房から飛び出すの!!危ないでしょ!!心臓止まるかと思ったんだから!!」
「ヒヒィィン!!」(ご、ごめんなさい!!)
そこへ、さらに不二沢さんも走ってくる。
「おいソブリン!!お前、馬運車の前に飛び出すなんて危険すぎるぞ!!七瀬さんが青ざめてたんだからな!!」
(うぅ……本当に心配かけちゃった……)
七瀬さんは肩で息をしながら、俺の顔をじっと見つめた。
「……ソブリン。本当に、無事でよかった……」
怒っていた顔が、ふっと緩んだ。七瀬さんは俺の首元にそっと手を添え、優しく撫でてくれた。
「心配したんだよ……でも、スティルちゃんを見送りたかったんだよね」
「ヒヒン……」(うん……)
不二沢さんも苦笑しながら言う。
「まぁ……気持ちは分かるけどな。次からは絶対に勝手に飛び出すなよ。お前はもう“ただの馬”じゃないんだから」
(……うん。気をつける)
七瀬さんは最後に、いつもの優しい声で言ってくれた。
「さ、ソブリン。今日からまた調教、頑張ろうね。スティルさんに胸張って会えるように」
「ヒヒン……!」(うん!!)
(スティルさん……次に会う時、絶対に胸を張って会えるように……俺、もっともっと強くなるよ)
朝の光の中で、新しい決意が静かに燃え上がった。
そんな決意を胸に調教コースへ向かった俺を待っていたのは、不二沢さんの冷静な一言だった。
「ソブリン。次のレースまではまだ時間がある。でもな――次は格が違うレースだ。お前は理解しててもミスるからな… 今のうちに軽く基礎をおさらいしておくぞ。」
(格が違う……?)
その言葉の意味を理解する前に、調教が始まった。
岡戸さんの指示の確認、走るフォームの確認、ゲートのチェック、コーナーの入り方の修正など…
(ぜぇ……ぜぇ……
軽めって言ってたのに……!)
七瀬さんが遠くから苦笑しながら声をかける。
「ソブリン、無理しないでねー!……って言っても、不二沢さんは聞かないか……」
(ほんとに聞かない……!!)
調教が終わる頃には、俺は完全にヘトヘトだった。
放牧地に出された瞬間、俺はその場に倒れ込みそうになった。
(つ、疲れた……)
そこへ、ズシッ……ズシッ……と重い足音。
(あ、この足音……)
振り向くと、ゼンノロブロイ さんがのっそり歩いてきた。
『おい、ソブリン。生きてるか?』
「ヒヒン……」(ギリギリ……)
ロブロイさんは鼻で笑った。
『不二沢の“軽め”は軽めじゃねぇぞ。あいつは昔からああだ』
(知ってたら覚悟したのに……)
ロブロイさんは俺の横に並び、のんびり草を食べ始めた。
『しかしよ……昨日は派手にやらかしたな』
「ヒヒン……」(うん……)
『まさか、スティルがあそこまで怒るとはな…想像したこともなかったぜ。お前は一体なにをやらかしたんだよ』
「ブルっ… ヒヒーン?」(特には…しいて言うなら女性関係?)
ロブロイさんは吹き出した。
『あーあ……若いってのは大変だな』
そして、ふっと遠くを見る。
『まぁ、俺らは引退したら、もうレースの世界とは違う場所で暮らすからな。気持ちが高ぶることも、競い合うことも減る。のんびり草食って、昼寝して……そんな毎日らしい。』
(……引退したら、そうなるんだ)
ロブロイさんは、そんな俺の表情を見て笑った。
『まぁ、お前にはまだまだ先の話だ。今は“走ること”だけ考えてりゃいい』
「ヒヒン……」(走る……)
ロブロイさんは、少し声を低くして続けた。
『それに、お前の次のレースは G1 ってやつなんだろ?』
「ヒヒン?」(今までのと何か違うんです?)
ロブロイさんは、草を噛みながら続けた。
『そりゃお前――まず人の数が桁違いだ。まずスタンドが揺れるくらい声が飛ぶ。音もデカいし、空気も重い。』
(お、音がデカい……?)
『それにな。走るやつらが速ぇ。 今までのレースとは“別物”だと思っとけ。あいつらは勝つために生まれてきたような連中だ。まぁ、俺は3回も勝ってるんだがな!』
「ヒヒン!!」(流石!ロブロイさん!)
そしてロブロイさんは、俺の目をまっすぐ見た。
『でも――お前もその舞台に立つんだ。胸張って行けよ、ソブリン』
「ヒヒン!!」(オッス!!)
実際にこんな馬の世話するのは大変そう…
あと、これは気性難なのか?
あと、少し悩んでいることがありまして、ソブリンがグルーヴさんに種付けするぞーってなったときにトニービンのクロスがヤバいなと思いまして、
トニービンを母母父にして、母父を誰にしようか悩んでいるのですがいい馬いたら教えて欲しいです!!
ちなみに、今これかなって考えてるのはブライアンズタイムです。あ、サンデーサイレンスは無しでお願いします。