昨日は忙しくて投稿できなかったので、明日も更新します。
馬運車が動き出すと、美浦の景色がゆっくりと後ろへ流れていった。エンジンの振動が身体に伝わる。そのリズムに合わせるように、胸の奥で、ロブロイさんの言葉が何度も反芻される。
「後のボスの座は、お前に任せる。」
「お前も種牡馬になれば、また一緒に暮らせるはずだからよ。」
『……ロブロイさん……』
嬉しい。誇らしい。でも、寂しい。そんな気持ちが全部混ざって、胸の奥がじんわり熱くなる。
だけど――馬運車が高速に乗り、日高へ向かう道に入った頃には、その感情をそっと胸の奥にしまった。
『……今は、考えすぎても仕方ない。ロブロイさんの言葉は、ちゃんと覚えておく。でも、今は……故郷に帰るんだ』
そう思った瞬間、胸の奥にあったざわつきが、少しだけ静かになった。エンジンの低い唸り。揺れる車体。遠ざかる都会の匂い。そのすべてが、人間時代の子どもの頃に戻るような安心感をくれた。
『……少しだけ、寝よ……』
まぶたがゆっくりと落ちていく。ロブロイさんの声が、遠くで優しく響いた気がした。そして俺は、揺れる馬運車の中で、静かに眠りへ落ちていった。
どれくらい眠ったのだろう。馬運車が止まり、扉が開く。寝ぼけた頭を一気に覚ませるような冷たい風。晴れ晴れと広い青空。懐かしい草の匂い。
『……帰ってきたんだ』
その瞬間――
「ソブリン!!」
聞き覚えのある声が、勢いよく駆け寄ってきた。サムだ。俺と同じ時期に育った、栗毛のやんちゃ坊主。
『サム!!』
サムは勢いよく俺に頭をぶつけてきた。
「お前、すげぇじゃん!同世代の中で頭一つ抜けてるんだって?俺の飼育員さんたちが褒めてたぞ!!」
『へへ……まぁね』
「まぁね、じゃねぇよ!お前、完全にスターじゃん!」
サムは嬉しそうに跳ね回る。その姿を見て、胸の奥にあった寂しさが少しずつ溶けていった。
「たとえお前が同世代のスターだとしても、俺の方が速いから競争だ!!」
『何言ってんだお前?俺の方が速いに決まってんだろ!!!』
日高の冬は風が冷たく、地面も硬い。厳しい環境だが、それは馬にとっても同じだ。
夜には馬着*1をつけるけれど、走っているときは別だ。
『……この空気、懐かしいな。しかも、走っている最中の風が気持ちいい…』
その上、サムと一緒に走ると、身体の奥が自然と熱くなる。
「おいソブリン、手加減すんなよ!」
『そっちこそ!』
二頭で雪の上を蹴り、牧場の丘を駆け上がる。息が白く弾け、蹄が雪を散らす。そのたびに、俺の中の“競走馬としての炎”がまた強く燃え始めていた。
走り終わって、休憩している合間、サムがふと得意げに言った。
「そういえば俺、この前のレースでレコード勝ち?したんだぜ」
『えっ!? サムが!?』
「おうよ!人間たちがめっちゃ騒いでた。“サムのやつ、やればできるじゃねぇか!”ってな!」
サムは胸を張って笑った。
『……すごいじゃん、サム』
「だろ?でもな――」
サムは俺の顔を見て、ニヤッと笑った。
「次はお前の番だろ?レコードでもなんでも、全部ぶっちぎれよ。お前ならできるだろ?」
その言葉が、胸の奥に火をつけた。
『……うん。次は俺が獲る。G1だろうが、レコードだろうと俺が獲る。ロブロイさんにも、そしてお前にも負けないくらい』
サムは嬉しそうに尻尾を振った。
「よし!じゃあ今日も走るぞ、相棒!」
『望むところだ!!』
冬の青空は高く、澄んでいて、どこまでも青かった。その下で俺は、サムと一緒に互いがバテルまで走り続けた。ロブロイさんの言葉を胸に、サムの期待を背に、そして――自分自身の未来のために。
『絶対に強くなる。ロブロイさん……見ててね』
日高の風が、俺の決意を後押しするように吹き抜けていった。
今日も短めで申し訳ない…
けど、次…次こそは長めにします!!