衝撃のその先へ…   作:アグD

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新馬戦です…
どうぞ!!


第6話:新馬戦

 

「ソブリ~ン! そろそろ出るよ~」

 

「ヒヒーン」(はーい)

 

今、行きますよ~……

と言いつつ、足取りはめちゃくちゃ重い。

 

というのも、俺は今から馬運車に乗って

新馬戦に向かうらしい。

しかも、函館…

故郷の北海道に戻れるのはうれしいけど、

正直、初レースということもあって、

食事が全く喉を通らない。

 

(俺、緊張しすぎだろ……

 もし、このレースに負けたら……

 俺、殺されちゃうのかな……)

 

いや、そんなことないって分かってるけど、

不安って勝手に膨らむんだよ。

 

不二沢さんや岡戸さんは

「天才だ」「G1獲れる」

なんて言ってくれてたけど……

 

(それでも不安なんだよ~~~!!)

 

いつもだったら、こんな時にロブロイさんが

 

『お前だったら大丈夫だ』

 

みたいなことを言ってくれるはずなのに、ちょっと前に“イギリスに行ってくる”とか言って

いなくなっちゃったから、余計に怖い。

 

(ロブロイさぁぁぁん……

 なんで今日に限って海外なんだよぉ……)

 

しかも、"俺がいない間はお前がここのやつらを従えとけ"なんて言うもんだから、最近は俺に喧嘩を売ってくるやつが多くてほんとに困っちゃう…

メンチを切ってきたかと思ったら、急に後ろを向いて蹴りを食らわせてくるやつとかいるから油断ならないんだよね…

そういうのは、華麗に躱してから、わざわざ顔の前まで行って頭で小突いたりしてるんだけど、全然懲りないのか、1週間もすれば同じことをやってくるんだ。

 

(俺の覇気が足らないのかな……?)

 

もう、馬達のボス代理をやるだけでも手が一杯なのに、

そこに加えて初レースとか俺もう疲れちゃった……

 

こんな時は――

七瀬さんに頭グリグリするしかない!

 

「ヒヒーン」(七瀬さーん……)

 

七瀬さんが振り返って、

俺の顔を見てすぐに気づいた。

 

「もう、ソブリンったらどうしたの?

 怖いの?」

 

俺はコクコクと頷く。

 

「ヒヒィ……ン……」(こ、怖い……)

 

七瀬さんは苦笑しながら、

俺の顔を両手で包み込むように撫でてくれた。

 

「大丈夫だよ。

 ソブリンは、ちゃんと頑張ってきたじゃない。

 不二沢さんも岡戸さんも、あなたのこと信じてるよ」

 

(……うぅ……)

 

「それにね、ソブリン。

 “怖い”って思えるのは、

 本気で頑張ってきた証拠なんだよ」

 

その言葉が、

胸の奥にじんわり染みていく。

 

「ヒヒン……」(七瀬さん……)

 

「大丈夫。

 あなたはちゃんと走れる子だよ」

 

七瀬さんは自分の胸に俺の顔を、

ぐりぐりと優しく押し当ててくれた。

 

(……あぁ……落ち着く……

 これだよ……これが欲しかった……)

 

「さ、行こう。

 みんな待ってるよ、ソブリン」

 

俺は深呼吸して、

馬運車のスロープへと足を踏み出した。

 

(よし……行くか……!

 怖いけど……でも、走りたい……!)

 

こうして俺は、

人生……いや、馬生初のレースへ向かうため、

馬運車に乗り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

うん、ああーー

よく寝た~!

 

え?疲れは取れたかって?

もちろん!!

 

しかも、こっちは東京より涼しいから、

俺にとっては絶好調だぜ!!

 

もう、俺に敵は無しよ!!

ワッハッハー!!

 

「よし! そろそろ行くよソブリン。」

 

その掛け声とともに手綱を引かれ、長い道を歩いていくとパドックに着いた。ここは観客が俺たちを見る場所らしい。馬の状態を見て人気を決めるんだって。

 

(そんなので俺たちの良し悪しが分かるもんかね?

 ……いや、体調くらいは分かるか)

 

ただ――ここ、親父みたいなおっさんしかいない。お兄さんとか女の人とか全然いない。しかも中には目が血走ってる人もいて、めちゃくちゃ怖い。そんな観客たちの前をぐるぐる回っていると、いろんな声が聞こえてきた。

 

「ダークソブリンか、こいつは父トウカイテイオー!?」

「切りだな」

「いや、待てよガタイは良いな…馬体重は…520kg!? こいつら夏の2歳馬だよな!?」

「けど、父テイオーは走らないだろ…」

「それより、父サンデーサイレンスのヤマニンプレアデスの方が良くね?」

「いや、海老名のファインビンテージの方が来そうだぞ…」

 

 

なんか……俺、人気なくね……?

え?マジ?

俺、この中で一番デカいんだぜ!?

普通こういうのってデカさで決めない?へこむわ……

もう走るのやめようかな……

 

その時。

「大丈夫だソブリン。

 お前の強さは俺たちが一番知ってるから、安心しろ」

 

岡戸さん……( i _ i )

分かった!

俺、こいつら全員ぶち抜いてやるよ!!

 

(やったるぞーー!!)

 

「ヒヒーーーン!!!」(うおおーーーー!!)

 

「うわ! いきなり叫び出した!」

「こりゃ気性難だな。切るか……」

 

(あ、もっと人気下がったかも……

 ごめんね、岡戸さん……)

 

 

 

 

パドックをぐるぐる周り終わった後は、

ゲートの前をまたグルグル……グルグル……。

 

(ちょっと、グルグルさせすぎー!!

 俺、目回るって!!)

 

でも、ゼッケン番号順に次々とゲートインしてるから、

もうすぐ俺の番だ。

 

俺のゼッケンは12番。

つまり――最後。

 

「ソブリン。お前がゲートに入ったら、すぐレースが始まるから準備しておけ」

 

分かったぜ!岡戸さん!!

 

「次―ダークソブリンどうぞー」

 

「やっと呼ばれたか。行くぞ、ソブリン」

 

あーー緊張してきた……

でも、最速でスタートして一番にゴールすればいいんだろ……

よし!見ててくれよ!!岡戸さん!!不二沢さん!!)

 

《大外枠のダークソブリンがゲートに収まりました。函館第4R新馬戦、芝1800m。馬場状態は稍重との発表。まもなく発走となります》

 

(うわぁ……ゲート狭っ……

 でも、ここから始まるんだな……!)

 

《今、スタートしました!12番ダークソブリン、いいスタートを切りました!おっと、4番アドバンスハピネスは出遅れか?それ以外の馬たちはそろって綺麗なスタート!》

 

えっ、ちょ、ちょっと!?

俺、めっちゃ前に出ちゃってる!?

 

《やはりハナを切ったのは12番ダークソブリン!2番手争いは11番スパイラルライフと8番カネスキングオー!その後ろはやや縦長の展開に落ち着きました!》

 

ヤバイヤバイヤバイ!!どうしよ!!スタート良すぎて先頭に来ちゃった!二人からは“最初は中団で様子見ろ”って言われてたのに!  「ソブリン!!落ち着け!!」 あーモウ!こうなったら全力で走るしかねぇ!!!

 

《おっと、ダークソブリンさらに速度を上げた!?これは掛かっています!これを受けて後方勢はペースを落とした!前と後ろで大きく差が開き始めました!》

 

《第3コーナーを回って、ダークソブリン依然として先頭!しかし、ペースが速い! これは飛ばしすぎか!?》

 

(あああああああ!! 脚が止まらん!! でも気持ちいいぃぃ!!)

 

そんな感じで暴走していた俺だが――

 

(……あれ?)

 

急に脚が重くなった。

 

(やば……体力……切れた……?)

 

《ダークソブリン、ここで失速!掛かり気味の逃げが響いたか!?》

 

(うわぁぁぁぁぁ!! やっちまったぁぁぁ!!)

 

その瞬間、岡戸さんの声が飛んできた。

 

「ソブリン!! 落ち着け!! 息を入れろ!!」

 

お、岡戸さん…

 

(……これ勝てる? 俺……まだ……いける?)

 

「やっと、正気に戻ったな。

 いいか、よく聞け、200mだ。

 残り200mになったら、合図を出す。

 それまでは、体力を回復させろ。

 いいな!!」

 

(……そうだ。

 まだ終わってない。

 勝負はここからだ……!)

 

俺は必死に呼吸を整え、

残り200mまで体力を回復させることに集中した。

 

《さあ、第四コーナーに差し掛かってきました。以前先頭はダークソブリン。このリードを守り切れるか!! おっと! ここで動いた!ファインビンテージが外から一気に!さらにニシノロドリゲスも並んで上がってくる!》

 

(うわっ、抜かされた!!

 抜き返してやる!!)

 

「落ち着けソブリン。ここは我慢だ。」

 

(あ、そうだ……我慢我慢……!)

 

《いよいよ、最後の直線に入りました!!先頭、変わりましてニシノロドリゲス!!その後ろ、ファインビンテージが追いすがる!!ダークソブリン、もうこれはしまいか!!》

 

《残り200mに差し掛かりまして――》

 

その瞬間。

 

パシッ!!

 

岡戸さんのムチが、

俺の右の尻に一発入った。

 

同時に――

 

「ソブリン!! 行け!!」

 

岡戸さんの声が、

雷みたいに頭の中に響いた。

 

(……来た!!これが“ラストスパート”の合図!!)

 

身体の奥に残っていた力が、

一気に爆発する。

 

(行くぞおおおおおお!!!)

 

地面を蹴った瞬間、

視界が一気に開けた。

 

風が、音が、世界が――

全部後ろに吹き飛んでいく。

 

《―ッ!! ダークソブリン伸びる伸びる!!ものすごい脚だ!!前との差がみるみる縮まる!!》

 

(待ってろよ……!

 抜く!! 全部抜く!!)

 

ファインビンテージを――

一瞬で抜き去り、

 

ニシノロドリゲスの背中が

目の前に迫る。

 

(そこだ!!)

 

《ダークソブリン、並んだ!!いや、一気に抜き去った!!これは強い!!》

 

(まだいける!!もっと!!!!)

 

《残り100!!ダークソブリン、後続を突き放す!!2馬身!! 3馬身!!これは圧倒的!!》

 

(うおおおおおおおお!!!)

 

《ダークソブリン今、先頭でゴールイン!!デビュー戦を“3馬身差”の完勝!!これはとんでもない馬が現れました!!》

 

(……勝った……?

 俺……勝ったんだ……!)

 

岡戸さんが俺の首をポンと叩く。

 

「ソブリン……お前、すげぇよ。

 本当に……とんでもない馬だ」

 

(へへ……

 やった……やったぞぉぉぉ!!)

 

俺は思わず、

勝利の 雄叫び(ヒヒィィィン!!) を空に響かせた。

 

 

 

 

 





いや~大変でしたね(棒)。
ちなみに、先行で走った場合は7馬身はついていたと思います。あと、レコード。
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