退学少年の栄達〜才能0と馬鹿にされた俺が世界を震撼させるまで〜   作:山川真水

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再戦

「気になる点は、ハンスとはすれ違う形で接敵したってことだ」

 

再戦を決めた直後、ウルグがいきなり僕たちの盲点を突いてきた。

 

「そうだな。目的地が山奥なら、ハンスとあんな場所で鉢合わせるわけないしよ」

 

「じゃあ……誘拐とは別の目的があるってこと?」

 

そこまで考えていなかったと僕は軽く彼らを尊敬した。

 

「そう考えるべきだ。目的は不明だが、奴はロートへ戻る道を辿っていた」

 

ウルグはそう断定した。

 

「他の可能性もあるんじゃねえか?」

 

ガイヤが食い下がるが、ウルグは冷静だった。

 

「かもしれんが、他を考えても無駄だ。読みを外した時にまた考えればいい」

 

ガイヤも納得したのか、それ以上の追求はやめた。

 

「でも、どうしてロートに戻るんだろう」

 

「金策だろうな。誘拐した家への身代金の要求か、あるいはさらなる略奪か……。略奪だったら獲物を運び出すため馬車を使うはずだ」

 

それを聞き、僕は敵を捕まえる最良の方法を思いついた。

 

「じゃあ、ロートから出てくる馬車を狙えばいいんだね」

 

「簡潔に言えばそうなる。言伝なら裏道を使われるが、略奪だった場合は馬車を使う。それならルートは絞れる。」

 

ウルグは思考をまとめ、それが最善だと判断を下した。

 

「……要は、ただの賭けじゃねえか」

 

ガイヤが腑に落ちない顔でぼやく。

 

「ああ、賭けだ。だが馬車が通らなければ、川沿いに戻って誘拐された連中を解放すればいいだけだ」

 

妙案とは言い難い博打だったが、僕たちはその賭けに乗ることにした。

 

正門からしばらく離れた街道の脇で、息を殺して待ち伏せる。

 

数分後。闇の向こうから、荷台を引く馬の蹄音が聞こえてきた。

 

「ビンゴ!」

 

ウルグが低く昂った声で円錐岩を生成する。

 

「――今だ!」

 

合図とともに、僕たちは一斉に飛び出した。

 

 

 

剣を抜いたティアラは、決してハンスから目を離さなかった。

 

炎を警戒しつつ、ウルグの放つ岩の弾幕を軽やかな身のこなしで回避する。

 

その後、ウルグが接近してきてティアラに対して猛攻を振るうが全て難なく躱していく。

 

時折、足元から突き出る岩に苛立ちを覚えるものの、数合の攻防を経て、彼女はウルグを「脅威ではない」と断じた。

 

攻撃自体は集中していれば当たることはない。だが、背後のハンスに意識を割かれているせいで有効な反撃に移れない。

 

その状況が、ティアラの中のストレスを蓄積させていく。

 

彼女はあえて徐々に動きを荒々しくしていって、外見からでも分かりやすいくらいに苛立っている事をアピールする。

 

そして、ウルグの追撃を強引にいなした直後、ティアラはハンス目掛けて一直線に肉薄した。

 

予想通り、ハンスから炎球が放たれる。

 

それを視認した瞬間、ティアラは雷光のような速さで横へ跳んだ。

 

回避された炎球は、そのままティアラの背後を狙っていたウルグの胸元に直撃した。

 

(――はい、一人目)

 

爆炎に包まれるウルグを一瞥もせず、彼女は残るハンスを仕留めるべく加速する。

 

その時、全く想定もしていない場所。斜め後ろ辺りから拳が飛んでくるのが見えた。

 

(うそ…!?)

 

咄嗟に剣の腹で受け止めるが、直後、硬質な衝撃音が響いた。

 

剣が粉々に砕け散り、ウルグの拳がティアラの脇腹を深く撃ち抜いたのだ。

 

血を吐きながら、ティアラは己の過失を呪った。

 

(……忘れてた。この子、高難度の岩魔術『岩石化』の使い手だった……!)

 

ここで治癒術を使えば、自分が魔術師――ひいてはティアラ本人であると露見するリスクがある。

 

だが、砕かれた肋骨の破片が内臓を突き刺す激痛に、もはや正気を保つのも限界だった。

 

歯を食いしばって逃走を図るが、いつの間にか足元の地面が泥化しており、無様に足を滑らせる。

 

転倒の衝撃でさらに骨が食い込み、あまりの激痛にティアラはその場で肋骨を抑えて苦しそうに咳き込みながら血を撒き散らす。

 

「よし、終わったな。ナイスだお前ら!」

 

「あとは拘束して、魔術団にでも突き出せばいいよね」

 

「臨時報酬、期待しちまうぜ」

 

さっきまでの殺伐とした空気は消え、三人は和気藹々と勝利を確信しながら近づいてくる。

 

横たわったまま、ティアラは濁った瞳で少年たちを見つめた。

 

(…………もう、殺すしかないかな)

 

ティアラは自身の傷を人知れず超高速で治癒しながら、掌を地面に伏せた。

 

次の瞬間、少年たちの足元から、棘を纏った真っ赤な薔薇が爆発的に急成長し、逃げる隙も与えず彼らの身体を絡め取った。

 

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