退学少年の栄達〜才能0と馬鹿にされた俺が世界を震撼させるまで〜 作:山川真水
それからの6日間、馬車の中には相変わらず剣呑な雰囲気が漂っていた。けれど、夜の野営に入ってからは、セクナさんと色々なことを話すようになった。
彼女と会話を重ねる中で、興味深い知識をたくさん得られたおかげで、僕の旅は思いのほか充実したものになった。
例えば、水魔術による治癒は「自然治癒が不可能な領域まで、時間をかけて着実に治していく」のに対し、草魔術による治癒は「自然治癒が可能な範囲を、瞬時に治す」という違いがあること。
また、治癒に特化した者は、総じて攻撃魔術が不得意であるという法則があることなどだ。
セクナさんの話を聞きながら、僕はティアラさんの顔を思い出していた。
ガイヤの腕に巻きつけた攻撃的な薔薇。
そして、草魔術師でありながら、僕の腕を瞬時に治してみせた圧倒的な力量。
先ほどセクナさんが言っていた治癒魔術師の特徴のどちらにも当てはまらない彼女の規格外な強さを、僕は改めて思い知らされた。
そんな風に過ごしているうちに僕らの移動は終わり、目的地の国境付近へと到着した。
しかし、眼前にあったのは、洞窟と呼んでいいのか分からないほどに狭い、ただの岩穴だった。
「人ひとり通れないじゃないか、こんな穴」
ヴィクトールが不満を漏らし、水魔術で周囲の岩を削ろうとした――その時だった。
ウルグが無言で歩み寄ると、岩穴の周囲を思いきり殴りつけ、強引に岩壁を粉砕した。凄まじい衝撃音が響き渡る。
「こっちの方が早いだろ?」
「君さ……この騒音で敵に気づかれる可能性とか、少しは考えられないのかい?」
ウルグが何かを言い返そうとしたが、ヴィクトールの明らかな正論に口を噤んでしまう。
その時、穴の奥からドタドタと複数の足音が近づいてくるのが聞こえた。
二人は一瞬でいがみ合いをやめ、真っ暗な穴の奥を鋭い視線で睨みつける。
僕は松明の代わりに小さめの炎の玉を作り出し、穴の奥へとゆっくりと進めた。
揺らめく炎の明かりに照らされ、姿を現したのは3匹のオークだった。どれも武具を手にし、こちらの様子を窺っている。
「ほら見ろ、君のせいだぞ」
ヴィクトールがウルグに不満を垂らした直後、オークたちが一斉にこちらへ突撃してきた。
「今から挽回してやるよ!」
ウルグがヴィクトールに怒気を孕んだ声を返し、地を蹴った――。
しかし次の瞬間、激しい三つの水流がオークたちを文字通り壁へと叩きつけた。
「もう終わったよ。役に立たないなら、君はもう帰っていいよ」
ヴィクトールの放った水魔術により、その場にいたオークは瞬時にすべて気絶した。
結局、僕とウルグは指一本動かすことなく、あっけなく戦闘は終了してしまった。