地球人と魔族の混血はサイヤ人を超えたい 作:抹茶好きの紅茶
空に響き渡る打撃音。血は宙を舞い、四方八方に光弾が飛来する。これは戦いなどではない。一方的な蹂躙であった。
適う筈のない人外を相手に、私は足掻いている。死ぬ気で目の前の理不尽に立ち向かっている。
長身で筋骨隆々。青い服に白いマントを携え、額に2本の角を生やしたソイツは、金色の眼で私を捉える。
「──ほう。大した力を持たぬ貴様が、よくぞこの暗黒魔界の王である
「……ふぅ、はっ、はぁ……光栄。褒美代わりに、見逃して欲しい」
息を切らし、腹に突き刺さった槍を引き抜きながら、目の前の奴にそう意見する。
何故……何故こうなったのか。思考の片隅で、走馬灯のように50年間の思い出がフラッシュバックしていた。
突然だが、ドラゴンボールという作品は知っているだろうか。
具体的に知らずとも、聞いたことぐらいはある筈だ。
知らない人にはインフレ激しめの超次元格闘作品とでも言っておこう。
さて、そんなドラゴンボールの世界には、多種多様な種族が登場している。もし転生するならば、一体どんな種族になりたいだろうか。
様々な変身形態を持つ戦闘民族サイヤ人?
はたまたフリーザ一族*1?
ナメック星人とかも夢がある。その他愉快な種族も盛りだくさん! もー迷っちゃ~う♪
「──地球人。地球人か、よりにもよって地球人かあ……!」
日課の修行を終え、浜辺で日の出を見ながら深く溜め息をつく。もう何度目かの愚痴をこぼしていれば、不意に腹の音が鳴った。
落ち込んでようと腹は減る。焚き火の側で焼いていた骨付き肉を手に取り、そのまま齧り付き頬張った。
固い、臭い、中までちゃんと焼けてない。処理の最中混入した毛で吐きそうになるも、無理やり水で流し入れ、腹を満たす。
そうして焚き火に肉を戻し、再び深く溜め息をついた。
ええ。はい。そうだよ 地球人だよ 悪いかよ!?
良いだろうがよ、地球人。技術力なら第7宇宙の中でもツフル人あたりとタメを張れるかそれ以上だぞ*2。
正直、テンション上がったのは転生直後だけ。生まれ変わって彼是5年。苦労しまくってる私としては、もう平穏に暮らしたいと思い始めてきた頃だ。
ただまあ悲しきかな。ドラゴンボールの地球は一般人にとても厳しい世界である。郊外に住むには危険だし、街に居ても殺される可能性があった。RR軍やピッコロ大魔王、人造人間 セル バビディ一味 ブウ 破壊神 フリーザetc……GT含むならもっとだし、なんなら地球ごと破壊されることも結構ある。
そう簡単に破壊するな、惑星を。
そのうえ単純に治安が悪いときた。なんなんだこの世界。とまあ色々精神的に荒んでぐちぐちと言ったが、私自身、なんだかんだこの世界を楽しんではいる。
私だってもう一度死にたくはない。
その為、こうして愚痴をこぼしながらも修行に励んでいた、。
あと欲を言うなら悟空に会いたい。戦って "おめぇ、つえぇな~!"って言われたい!
種族がなんだ!地球人だって死ぬ気で鍛え続ければフリーザ以上にも成れる!セル並みには……うーん……ま、まあ、地球人だってやる時はやるもんだ。
為せば成る為さねば成らぬ何事も!
ヤムチャや餃子に転生した奴らも頑張っていたんだ!私にだって、やってやれないことは──
──エイジ420。街で拾った新聞の切れ端を見直し、改めて項垂れる。うん。死にたくないとか悟空と手合わせとか、まずそれ以前の問題だ。
原作開始はエイジ749。このままでは悟空と手合わせするどころか、摩訶不思議アドベンチャーにすら参入出来ない。
無論、ドラゴンボールで長寿にしてもらう……というのも考えたが、そもそもドラゴンレーダーが無い。
「……ま、今は鍛えるしかないか」
今答えのでないことを考えたって仕方ない。そも占いババや武天老師さま、鶴仙人や桃白白だって何故か長生きなのだ。私だって──どうすれば長生き出来るのだろうか。そもそも何であの人達は300歳超えて元気ピンピンなのだろう?
確か不死鳥だとかの設定があったのは覚えているが、それが本当にあるのかは知らない。なんなら武天老師さまはピッコロ大魔王に殺されてるし……うーむ、謎である。
そんな答えの出ないコトを考えながら、今日も重りを背負って運動する。なんにせよ、何をやりたいとか、あれそれが叶う叶わないとか。そんなことは結局些事なのだ。
兎に角、今出来ることをやる。四の五の言わずに、やってみなきゃわかんねぇ!の精神である。
「フッ、はっ! たぁ!」
『Gugyaaaaaa……!』
猛スピードで対象の周りを走る事で翻弄し隙をつくる。その後にジャブで動きを一瞬止め、跳び上がって頭にスレッジハンマーを叩き込む。
ドシンと衝撃音が辺りに響くと同時に土煙が宙を舞い、地面が揺れ動いた。
「……ふぅ、恐竜の肉ゲット~♪」
私が今倒したのは恐竜。幼少期の孫悟飯が追われていたアレに似た奴だ。
うん、改めて思うがドラゴンボール世界っておかしい。何がどうして素手で巨大な恐竜を倒せるのか……前世で培った常識が音を立てて崩れゆくのを幻視する。
ともあれ、肉は確保できた。巨体を引きずりながら拠点へ足を進め──
「──もし、そこの坊っちゃん。わたしに塩水を恵んではくれませんか?」
「……いや、持ってないですけど」
「そうですか……」
恐竜を引きずり歩いていれば、足元から声が聞こえる。掴んでいた恐竜の尻尾を離し、声の主を見下ろせば、そこにはウミガメが此方を見上げて言葉を紡いでいた。
はて、ここは荒野。海からは十数キロは離れている。ゆえにウミガメなどいる筈がない、の、だが……さて、どうしたものか。声色から察するに、色々と困ってそうだ。流石にこのまま "それじゃあサヨウナラ" じゃあ明日以降の目覚めが悪い。
「……よければ海まで運びましょうか?」
「いいのですか! というか何故わたしが海に行きたいと──いえ、なんにせよ助かりました。かれこれ半年は彷徨ってまして」
「よく干からびずに生きてましたね!?」
お前リクガメなんかと違って水棲生物だろ。
なんにせよ、流石に見捨てるのも忍びないと思い、助けることにした。というか、なーんかこの亀 既視感が……えーっと、なんだったかな。
転生して5年、思い出せないことも増えてきたものだ。脳内で滑りの悪い記憶の引き出しを動かしながら、彼、ないしは彼女を背負って猛スピードで海まで運ぶ。
途中、背後から悲鳴のような野太く情けない声が聞こえてきたような気がしたが、まあ気のせいだろう。私が全力で数分程走れば、あっという間に海岸に到着した。
「着きましたよ」
「あだっ、せ、世界が回って……ハッ! おお、本当に海ですよ! どうもありがとうございます!」
「いいですよ気にしなくて。もう大丈夫ですか?」
「はい、おかげさまで。その、何かお礼をしたいところなのですが……すみません。実はわたし──亀なんです」
「でしょうね」
別に見返りを求めている訳ではない。この善行が、巡り巡って自分に返ってくることを期待するだけである。
私が転生してから十数年。誰かと喋ったのは、この出来事が最初で最後だった。
独りぼっちの寂しさを紛らわす意味でも、相も変わらず修行に励む。身体を動かし、戦い方や気の操作だったりを試行錯誤し、飯を調達し、休む時は休んだ。
毎日毎日、その繰り返し。斯くして私は20歳の誕生日を迎えることになったが、祝う人は居ないし、これといって特別感もない。
「うん、旅に出よ」
精神は限界を迎えていた。人間とは孤独に耐えられない生き物なのだと私は理解した。
包み隠さず言うのなら──
すっげー暇。あと単純に寂しい。くすぶるheartに火をつけるような相手と闘いたい!
そんな思いを胸に、私は荷物を持って武者修行の旅に出た。海を越え、山を越え、砂漠を越え、荒野を超えて、数年ほど地球を歩き回り、様々な経験を積み重ねる。しかし、色々なことを成し遂げても、成長したとは言い難かった。
モンスター型地球人に襲われていた村を救ったり、塞き止められていた川の水を流したり、腕自慢の荒くれ者を倒したりエトセトラエトセトラ。
本当に色々な事を経験した。だが、未だ当初の目的を達成出来ていない。
確かに、暇は解消したといえるだろう。だが、互いを高めあえるようなライバルは居ないし、孤独感に関しては寧ろ悪化した。
20年もの間、人と殆ど接しなかったことにより、私は喋り方を忘れていた。なんなら声の出し方すら忘れていた。
簡潔に言えば、コミュ障を極めていたのだ。
そんな状態で人助けをしていれば、当然問題があるわけで。
少し考えてみて欲しい。
ちょっと小突く程度で悪人を倒したら、村人全員から"このご恩は一生忘れません" と一斉に頭を下げられた時の気持ちを。
貧困した村に通っていた川が上流で塞き止められていたから原因を取り除いただけなのに、村人総出で感謝された挙げ句に無理してご馳走を振る舞われた時の気持ちを。
心痛むわ!
遠慮したいのに、"ぁ、ぇと、その" としか喋れんわけで勘違いされまくるし!無言で立ち去れば勝手に美化されて噂は広まるし!
行く先行く先で私が敬われるべき存在みたいになってるし、なんか勝手に尊称つけられたし……若武尊? 誰なんだ、それは。尊って、私は皇族ではないのだが。
確かに、転生当時の孤児で蔑まれてた時よりかはウン百倍も良い待遇ではある!あるのだが、人里に立ち寄る度に拝まれるのも嫌だ!ええい、0か100の扱いしか出来ないのかこの世界の人間は……!
そんな扱いに耐えかねて、私はとある森の奥地に存在する雲を突き破る程の搭を登っていた。
そう、カリン搭である。
武術の神と称された彼の噂はエイジ440の現在でも轟いていた為、噂を頼りに数年かけて見つけたのだ。
そうして2日間かけて搭を登りきり──
「ふっ、はぁっ、たぁ!」
「あ、それ。ほれ。そんなんじゃいつまで経っても超聖水は飲めんぞよ」
「くっ、はぁっ!」
──飲めば強くなれるという超聖水を巡り、私は目の前の仙猫を追いかけ攻撃を繰り返していた。
純白の毛並み、愛くるしい見た目。一見弱そうに見えるが、見た目と違ってカリン様はとても強い。
戦闘力が、という話ではない。カリン様の強さは、その類いまれなる武の技術にある。
この追いかけっこだって、何も闇雲に逃げているわけではない。私の動きが、より実戦的に、より洗練されるように動いていた。もう少し、あと少し、此方にそう思わせる動き。おちょくるような態度や言動で此方を刺激し、モチベーションの向上に努めている。イタズラ好きだが尊敬に値する人物……仙猫だ。
それはそれとして、いちいちムカつくような言動なのでフラストレーションは溜まってゆく。ええいこんのクソ猫!一旦捕まりやがれってんだ!
「何のために、力を追い求めるのじゃ? 今のままでも十分強かろう」
「カリン様、心読めるでしょ」
「お前のは曇ってよく読めん」
夜中に休息を取っていると、カリン様がそう語りかけてきた。ふむ、何のために、か。
「この世には、私より強い奴がウヨウヨ居る」
「うむ、そうじゃな」
「負けたくない。死にたくない。それと──」
前世からの憧れ。今世の目標。天井の無い強さ。それらに想いを馳せ、夜空を眺めて手を伸ばす。肉眼じゃ見えやしないだろうが、あの星々の中には色んな種族が存在していて、その中にはとても強い奴がいる。限界を超えても勝てない奴、理不尽にも思えるほど強い奴。この世界に天井はなく、極めても極めても、極め足りない。もし、満腹以上に満足できる闘いが出来ると思えば。
「──すっごくワクワクする」
「……変わった奴じゃの。あ、ほいっと」
「チィッ!」
「手癖の悪い奴じゃの」
チッ……真面目な話で油断させたが、そう簡単に超聖水は取れなかった。心が上手く読めないんじゃなかったのか。
公式からの供給過多で妄想を書きなぐりました。
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