地球人と魔族の混血はサイヤ人を超えたい   作:抹茶好きの紅茶

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 (/ω・\)チラッ




オヤバカ

 

 

 時は流れ、エイジ710。

 

 そこは第1魔界。灯火のない王宮内の廊下を、静かに潜み進む小さな影が1つ。キョロキョロと周囲を警戒し、誰も居ないことを確認するとホッと胸を撫で下ろした。

 

「……ふぅ──」

 

「おや、キドニィ嬢。こんな所でどうなされました?」

 

「どわーっ!? ッ、しぃーーー……!」

 

「は、はぁ」

 

 キドニィと呼ばれた少女は、立てた人差し指を口元に運び静かにするよう促す。その後、コツコツという歩行音に気づいた少女は、焦りながら直前に話し掛けてきた大柄な男へ否応なしに言い放った。

 

「ティーパ。ちょっと匿ってくれ」

 

「へ? それはどういう──」

 

 返事は待っていないとばかりに少女は気配を消し、近くに放置してあった木箱の中へと隠れる。その様子に男が困惑していると、近づいてきた足音の主が姿を表した。

 

「やっほ、ティーパ」

 

「おお、ホオズキさん! お疲れ様です。こんな場所まで足を運ばれるとは珍しいですね、どうかなさいましたか?」

 

「キドニィ、見なかった?」

 

 ホオズキは近くの木箱に視線を向けつつ、ティーパへと声をかける。長年の付き合いから諸々を察したティーパは、少し考えたうえで、誰も居ない廊下の先へ視線を移しながら口を開いた。

 

「キドニィ嬢でしたら、先ほどホオズキさんが近づいてきた事に焦ってそのまま……不躾ながら何があったか聞いても?」

 

「……うん。仕事、第2魔界に連れてく。1人で、留守番はまだ早い」

 

「なるほど。それでしたら、今日は俺が面倒を見ましょうか?」

 

「いいの?」

 

「ええ、オレ今日は非番ですから。しかし、ふむ。やはりホオズキさん、随分とお疲れの様子……そうです! 次回の会議時、我ら一同で新たなるスペシャルダンスを披露いたしましょうか!」

 

「あー、えっと……た、楽しみにしておく。それじゃあ、よろしく」

 

 呆れてるような、ひきつった顔をしたような、そんな反応を示したホオズキは、彼に感謝を伝えると足早に去っていった。

 そうして姿が見えなくなった頃、ティーパは木箱に隠れたキドニィへ優しく声を掛ける。

 

「──行きましたよ」

 

「……あー、その、だな」

 

 木箱から出てきたキドニィは、言葉を詰まらせながらも何とか声を捻り出そうとする。その様子からティーパは微笑みながら口を開いた。

 

「少し、身体を動かしましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 憲兵詰所の鍛練広場。身体の小さな少女は、尖った猫耳を頭から生やした紫肌の男へ縦横無尽に動きながら攻撃を仕掛ける。

 拳、蹴り、爪、尻尾。多彩な攻撃で短いリーチを補い、小さいからこその利点を活かす。流石は戦闘民族と言うべきか、僅か10歳にして既にサイバイマンを越える強さであった。

 

 だが、そんな攻撃を男は難なく受け流し、涼しい顔で戦闘をこなす。

 

「くっ、だぁ! こんっのぉ!」

 

「甘い。尻尾を巧く使っていますが、防がれたからと咄嗟に跳ぶのは感心しませんね」

 

「ぐはっ……つつ、もういっかい!」

 

 空中で叩き落とされたキドニィは地面に倒れた状態から跳び起き上がり、再びティーパへと猛スピードで距離を詰める。

 

「ですから、空を自在に飛べない身で──んなっ!?」

 

「ガーー!」

 

 初撃を防がれ距離を開けようと跳び上がったキドニィへ、男が再び叩き落とそうと膝を曲げて飛ぶ、その直前。

 キドニィは引っ掛かったと言わんばかりに口角を上げ、その後に口を大きく開く。

 すると前舌の辺りにクリーム色の気弾が練り上げられ、飛び上がり向かってくるティーパへ破壊光線を繰り出した。

 

「へっ! どうだ! まいっ──」

「──油断しない!」

 

「グヘッ……!」

 

 クリーム色のビームに呑まれ、煙を放ちながら爆発したティーパに対し、キドニィが意気揚々に勝ち誇り高笑いをしていると、いつの間にか背後に回られていたティーパの拳骨によって再び地面へと叩き落とされてしまった。

 

「いっつつ、容赦ねぇー!」

 

「実戦で敵が容赦をしてくれるとでも?」

 

「うぐっ……」

 

「──ですが、あの攻撃は見事でした。そうやって意表を突く戦術は素晴らしい。ただ、顔に出てしまったのは減点ですね」

 

「へいへーい」

 

 胡座をかいて不貞腐れ気味に地面に座るキドニィへ、ティーパはスポーツドリンクを手渡した。キドニィは受け取った直後に勢いよく飲み干そうと吸い込むが、案の定噎せてゲホゲホと咳を繰り返す。ティーパはそんな様子に若干呆れながらも、前傾姿勢になるよう支えて介抱をした。

 

「ゲホッ、はー、はー……ありがとな、助かった」

 

「いえいえ」

 

 改めてゴクゴクと飲料を飲むキドニィを見て、ティーパは思考を巡らす。

 

 ティーパはホオズキ直属の部下の1人、彼是300年来の仲である。初対面の時は相当やんちゃしていたようだが、それはまた別の話。今までもキドニィの世話もしてきており、ホオズキが仕事で忙しい時は度々親代わりのようなこともしていた。

 

 そして最近、キドニィは反抗期を迎えていた。ホオズキ達と距離を取り、話しかけても生返事で終わる。『服、ホオズキと一緒に洗わないで』なんていう日も近いのかもしれない……そのうえ、どうやらキドニィには悩みがあるようなのだ。何処か不満げにしているキドニィに、ホオズキやティーパ、他の世話してきた知人達が心配しているが、聞き出そうにも聞き出せないのが現状である。

 

 しかし皆、赤ん坊の頃におしべを替えてきた程の付き合いだ。それとなく理解は出来る。

 

 無理もないだろう。生まれは遠き果ての宇宙。育ての親は血は繋がっておらず、忙しい身で十全に接しているとは言い難い。友人も居らず、同族も居らず、治安の悪い魔界で育っている。センチメンタルになってもおかしくはないし、悩みの一つや二つ、出来て当然なのだ。

 

「……大丈夫。オレも、ホオズキさんも、皆も、キドニィ嬢を大切に思っています。ですから悩むひ──」

 

「あ? どうした急に。おう、十分すぎるぐらいに気持ちは伝わってるぜ? だけどよー、お前ら過保護すぎんだわ! アタシとしちゃ、最近すっげー暴れ足りねぇの!」

 

「──はい?」

 

 撤回しよう。我々は理解していなかった。

 センチメンタル?同族が居ない?

 なんだそれは。

 

 戦闘民族サイヤ人は、そんなことを気に留めやしなかったのだ。

 

「昔はよー。第3魔界とかの仕事に連れられた時とかは色んな奴を相手に出来て楽しかったんだけどさ。最近は治安も良くなっちまって、アイツらも随分と腑抜けちまっただろ? だから着いていってもつまんねぇんだよ。匿ってくれてありがとな。たださ、ホンット皆過保護すぎんだよ。あれぐらいの相手、アタシなら余裕で────」

 

 キドニィは不満げに愚痴をこぼしてゆく。そんな言葉に、ティーパは困ったような嬉しいような微妙な表情を浮かべた。想像していたソレとベクトルが違いすぎて感情が追い付いていない。そも治安が良くなった理由はキドニィを想ったホオズキが徹底的に潰し回ったからである。まさかそれが悩みの種になっていたとは思わなんだ。

 

「──だからさ、アタシ決めたんだ」

 

「は、はあ。何をです?」

 

「魔界を出て、アタシが生まれた……あー、なんだったか。惑星プラント? ってとこに行く」

 

「……はい!?」

 

「ま、ホオズキに1発入れてからだけどな。立てた目標は達成してから行った方が気分が良いだろ。つーわけで、ティーパ、もっかいだ! 先ずお前から地面に這わせてやる!」

 

「え、えぇ!? というか、まだやる気ですか!?」

 

 

 

 

 

 

「─と、いうことでした。どうしましょう?」

 

「……うん。キドニィの、好きに、させるべき……だと思う」

 

「そう、ですよね……なんというか、その、分かってはいたのですが、やはり早いですね。親離れというものは」

 

 仕事終わり。行きつけの居酒屋で沈んだ顔をしながら酒とツマミを口に運ぶ魔族が6、7人。全員キドニィの世話をしてきた者達だ。たった10年。基本的に寿命が1000年以上ある魔族にとって、その時間はあまりにも短い。

 

「というか、大丈夫なんですかね? 最近じゃ、コルドとかいう地上げ屋が宇宙で暴れ回っているようですし」

 

「いやいや、その前にツフル星人のが問題だろ。噂じゃ、サイヤ人を虐げてるなんて聞いたが」

 

「……ツフル星人、全滅させる?」

 

 そんな一言に場が凍りつく。

 相変わらずの無表情。しかし、付き合いの長い魔族達には分かる。その言葉はガチであると。

 

「「「い、いやいやいや! 流石にマズいっすよホオズキさん!」」」

 

「あ、あまり干渉しすぎるとダーブラ王に怒られますよ」

 

「それに、破壊神とかに目をつけられるかもしれないでしょう! 危険です!」

 

「う……で、でも……」

 

「そもそもホオズキさん。前回の長期休暇が10年前なんですから、あと25年は取れないでしょ」

 

「うぐっ……」

 

 ホオズキは言葉を詰まらせる。確かに、これ以上自分が暇を貰えば、魔界の治安が元に戻ってしまう可能性があるからだ。

 

 魔族には多かれ少なかれ悪の心があり、そしてその悪の心は、周囲の環境によって縮小・肥大化してしまう。一度でも魔界に悪の心が広まれば、あっという間に元の危険な魔界に戻ることになるのだ。

 

 あと、流石にダーブラ王から『働け』と叱責される。

 

 過去1度だけ、キドニィの育児にあたって、ダーブラ王から本気のお叱りを受けた時があった。

 ホオズキ談であるが、破壊神と出会った時よりも恐怖したそう。

 なんと無表情から変わることの無かった顔が、叱られた際には眉間に皺をよせ、目を細めた表情に変化し、泣きっ面とも呼べそうなシワシワ顔になるほどであった。当時、半年ほどはダーブラ王の名を出すだけで体育座りをして頭を抱える程である。

 流石に2度目はゴメンだそうで、ションボリと口を閉ざした。全員が暗い表情でテーブルを囲む最中、ティーパは机を勢いよく叩き、注目を集める。その後、真面目な表情で全員へと語りかけた。

 

「皆、キドニィ嬢を心配する気持ちは分かる。しかし、ここで我々がすべきはグチグチと心配することではない。離別の時、笑顔でいってらっしゃいと送り出す準備だ! 違うか!」

 

「「「ティーパ……!」」」

 

「そしてぇ! その時の為に! 我々で! これまで以上の! 過去に類を見ぬ至高のスゥペシャルッダンッスを編み出すのだ!!!」

 

「「「ッおーーーー! 勿論っすよー!」」」

「お、おー!」

 

 そうして子離れ出来ぬ者達の戯れ言をBGMに、夜は更けていく。

 原作開始まで、残り39年。

 

 





 お待たせしました。元はじっとりさせる筈が……何故かこうなってしまった。
 ストーリー進めるのメインに、日常系のお話をこれ以降は番外編として、時系列入り乱れながら出来上がり次第ちょくちょく投稿します。

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