地球人と魔族の混血はサイヤ人を超えたい   作:抹茶好きの紅茶

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師の教え

 

「──そこっ!」

 

「ぬっ!?」

 

「……とった、取ったー!」

 

 燦々と輝く太陽の下、雲の上のカリン搭の頂。

 空気の薄いその地にて、動き回る影が2つ。私は攻撃を仕掛ける最中、仙猫が持っていた壺を杖ごと奪いとることに成功した。

 

 3ヶ月。3ヶ月だ。私は3ヶ月間もの間、カリン様を相手に攻防戦を繰り返し……そうして、漸く。そう、漸く超聖水を奪えたのだ!ふは、ふははははは!どーだザマーミロ!人様をおちょくりまくるから足元を掬われるのだ!

 

「ふふん……! あ、飲んで良い?」

 

「うむ。文句無しじゃ」

 

「うん、いただきます」

 

 壺から付属のコップに液体を注ぎ、ゴクリと勢いよく飲む。うん!うまい──

 

「──ただの水」

 

「にゃっはっは! 気付いたか。そう、超聖水はただの水じゃ。しかし、わしとの修行でおぬしの力は何十倍にもなっておる」

 

「うん。どうも、ありがとうございました」

 

 カリン様に対してペコリとお辞儀をする。ムカつくこともあったが、それ以上に敬意と感謝を。転生してから25年、動けるようになった頃から武の道を進んでいる私としてはカリン様は尊敬の対象でもあり、初めての師匠でもあるのだ。

 

「……どれ、餞別じゃ──筋斗雲よ!」

 

「っ、わぁ……!」

 

 遠くの方から、此方に向けて接近してくる超巨大な金色の塊。カリン様はその金色の物体、雲の上へ飛び乗り、一部を千切り取って私に投げ渡した。すごい、すごいすごい!本物だー!

 

「それは筋斗雲といってな、心の清らかな者のみが乗れる雲じゃ。一言呼べば何処でも駆けつけ、自由に空を飛ぶことができる優れものじゃ」

 

「清らか。うん、清らか……」

 

 恐る恐る手を伸ばし──ふわふわの感触に目を輝かせる。ウッヒョー!私が清らか判定マジか!ありがとう、ありがとう筋斗雲!

 軽く飛び乗り、筋斗雲を撫でる。ふわふわモコモコでとても乗り心地がよさそうだ。ついに、ついに夢のひとつが叶う……!

 

「カリン様。改めて、お世話になりました」

 

「うむ」

 

 カリン様に改めて頭を下げ、筋斗雲に脳内で命令を送る。そうすれば筋斗雲は思った通りに動きだし、あっという間に空を駆け進む。数秒もすれば、カリン搭は見えなくなった。

 

 

 

 

 

 風を切って空を縦横無尽に駆け回る。残念ながら、私は未だ舞空術を習得していない。それどころか気の操作すら覚束ないのが現状だ。体内にそういう不思議エネルギーが駆け巡っているのも分かるし、動きにあわせてエネルギーが各所に集合するのも感じ取れる。しかし、意識的に動かすことは不得手だ。気功波など、夢のまた夢だろう。

 

 瞑想、気の探知、操作、体内で気を練り動かす。転生直後から意識的に行っている修行。その成果は未だぼんやりとしたものだけだ。何かが足りないのか、はたまた何かを間違えているのか。ずっと考えているが、答えは出ない。

 神様でも居たら教えを乞いたいところだが、なんでも今は後継者選抜で忙しいらしい……後継者選抜? うーん、そんな設定あったっけなぁ?

 

「こ、の、ヤロ──カハッ……!?」

 

「はい。おしまい」

 

 思考する片手間で暴漢を懲らしめる。なんというか……手詰まりというのが、これ程までに辛いとは。修行以外にやることもないので、いつものように人里で悪人を成敗する。つーかこの世界ほんっと治安悪ぃな!?

 

 溜め息をつきながらも、近くの飯処に入り注文をする。

 バクバクと20人前をペロリと平らげ、再度料理を注文をする。うん、やはり旨い。転生しても食事は楽しみの一つだ。疲れきった心身を休めてくれる……いったいこの量が私の身体の何処に消えてゆくのかは知らない。ドラゴンボール世界の不思議である。

 

「隣、いいですかな?」

 

「? んぐ、うん。いいよ」

 

 そう話し掛けてきたのは白い立派な髭を生やした老人だ──このお爺さん、相当強いな。白い胴着からして、武道家であることは確かだろう。さっきからイメージで仕掛けているが、まるで隙がない。純粋な力は私の方があるとは思うが、気の操作技術は私以上だな……多分、今戦っても、私は勝てないだろう。老人は一人前の中華料理を注文すると、此方に対して再び口を開いた。

 

「何か、思い悩んでいるようじゃな」

 

「……まあ、うん」

 

 見透かしたような言動だが、それは確かなので素直に頷く。実際、気を自由に操ることの出来ない私では限界がある。そうだな……お爺さんに教えを乞うてみるか。

 

「──気の操作について、私に教えて欲しい」

 

「ふむ、そうじゃな。一つ、聞かせておくれ。おぬし、何のために武の道を極めんとする?」

 

「む……負けないため? それと、強い奴と闘うとワクワクする」

 

 以前もされた同じような質問に、改めて真実を話す。このお爺さん、眉一つ動かさずに会話するのでちょっと怖い……強者特有の圧というのだろうか。此方の語りを聞き、老人は数拍の間を置いて再び喋り始める。

 

「……確かに、それも一つの理由であろう。しかし、おぬし、何か他にやりたいことは無いのかの?」

 

「やりたいこと……やりたいこと……?」

 

 やりたいことと聞かれますか。うーん、特には……転生してこの方ストイックに修行しかしてこなかったので、趣味というのは持ち合わせていない。強いて言えば……

 

「修行?」

 

「ほう、そうか。それでは、教えられんな」

 

「……何故」

 

「青いの。おぬしは修行というものを履き違えておる。よいか、修行とは辛いものでも強くなることでもないのじゃ。特別な動きも、洗練された気の操作も必要はない」

 

「じゃあ、なんで貴方は強い」

 

「修行とは心身を健康にするもの。時に頑張り、時に休む。その繰り返しを行い、健全な状態で思い切り人生を楽しむ。その結果、いつの間にか強くなっているものじゃ」

 

「…………人生を、楽しむ」

 

「おぬしはまだ若い。存分に人生を楽しめ。修行など日常生活の片手間に行えばよいのじゃ」

 

 年配の一言が重く突き刺さる。楽しむか、楽しむときたか……強くなるためでもなく、無理にやるものでもなく。修行は、日常生活の一部……そっか。そうか。

 

「そういうもの、か」

 

 ポツリと溢れた言葉に、老人は何の反応も示さない。どうやら私が思い耽ている最中に食事を済ませていたようだ。そのまま去りゆく背中に、私は一言声を掛けた。

 

「お爺さん、名前は?」

 

「──武泰斗じゃ」

 

「武泰斗様、ありがとうございました」

 

 色々な気持ちを込めて、深々とお辞儀をする。

 老人は礼を受けて少し立ち止まり、そのまま店を出ていった。そうか、武泰斗様か……どこかで聞いたような……まあ、高名そうな武道家だったし、噂で聞いたことでもあったのだろう。

 追加注文した料理を再び平らげ、メニューを見る。

 

 私のやりたいこと。趣味……趣味か。それじゃあ──

 

「こっから此処まで全部ください」

 

「いっ!?」

 

 ──まず、この世界を旅してみよう。そして世界中の料理を味わうんだ。

 

 







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