地球人と魔族の混血はサイヤ人を超えたい 作:抹茶好きの紅茶
私が魔界へやってきて80年が過ぎた。相も変わらず仕事と修行に明け暮れる日々。物騒な大魔界に慣れ、ここでの生活も悪くない。なんて思い始めたぐらいだ。
なにはともあれ、私は長期間かけて強くなり続けている。ゴマーやデゲスにアリンスといった面々から命を狙われているし、何より強くならねばダーブラ王直々に殺されてしまうのだから。
だからこそ、今日も今日とて、休日を利用してコピーマンと戦っている。
桃色の空の下、辺りには爆発音混じりの打撃音が木霊する。落ちたら終わりの暗黒の海の上、無数の浮遊島を移動しながら、瓜二つの容姿をした2人が戦闘を繰り広げていた。
そこは第3魔界。充満するガスによって空気が重く、身体が動かしづらい場所。治安は悪いものの、修行をするにはうってつけの場である。
「くッ、ハっ! ダぁ!」
手刀、前蹴り、フック、ボディブロー、ジャブ、回し蹴り、アッパー。次々に繰り出された攻撃を見ずに躱す。別に舐めプというわけではない、目に頼らず気配だけで戦闘を行う修行である。
そのうえ、相手は私。戦っていれば自ずと弱点や改善点も見えてくる。本当に使い勝手が良いなコピーマン。やはり栽培マン系統ってわりと有用なのでは……
「ふッ、ハぁ────ッでやぁ!」
「ん……? っと!」
攻防を繰り返す最中、多生の違和感を覚える……依然として捌けはするが、少し危ない攻撃も混ざってきたか。
気のせいか少しずつ強くなっている?おかしい、今ではそんなこと一度も──
「ハァーー! ダダダダダダ!」
「──なるほど」
うん、絶対気のせいじゃない。気の総量、パワー、スピード。それら全てが私よりも強くなっている。なるほど、これは完全に私の上位互換──
「──だぁ!」
「ッ、いっつぅ……」
私の顔面に拳が直撃する。咄嗟に反撃を行うが、スルリと躱され逆に気弾をお返しされた。煙で視界が悪くなる中、目の前の奴はニヤリと笑う。随分と、人間らしくなったな。
「……修行相手として、丁度良い」
「余裕だな。まさか、贋作が本物に勝てないとでも?」
「流暢だね、喋り方」
「ほざけ!」
攻撃が来る前に、身体につけていた重りを外して攻防戦を再開する。何故強くなったかは分からないが、自分よりも強い写し身が相手だなんて、ちょっと燃えてきた。
とはいえ不味いなコレ、本気でやらないと普通に負ける。互いに攻撃を仕掛け、捌き、往なし、避け、受け、反撃をする。一見千日手に見えるこの現状、しかし押し負けた方へ確実にダメージが蓄積してゆく。このままでは100%此方が……チッ、肉弾戦は不味いか。なんとか距離を──いや、気弾の撃ち合いでも間違いなく押し負ける。復活虫や元気虫を取り出して口にする間は無い。考えろ、突破口はある筈だ。なあに、高々思考と戦闘技術が同じで、パワーとスピードと気の総量が少し負けてるだけ……駄目じゃねソレ?
「ッつぅ……! はっ、はっ、はぁ……」
「なんだ、もう息切れか? もう少し楽しませてくれよ、ご本家さまッ!」
「くっ……! 手心とかないの」
「ないね、これっぽっちも! 俺達をいたぶり続けたテメェの自業自得だ!」
「…………正論。心が痛む」
「ならば死ねぇ!」
あっぶな!?
なんとか極大の気功波を避けて反撃を行う。いやほんとジリ貧だ。全身、内外問わず出血し、そろそろ力もでなく……あっ、しまっ──!?
「ガハッ……!」
「ハハッ、ハハハハハ! よくも今まで
「ゴホッゴホ……つぅ、はぁ、はぁ、ハッ……」
「──チィッ! お前のそのなんてことねぇみてぇに澄ましたその態度も気に入らねえんだよぉ!」
「ゲホッ……」
重たい一撃を貰い怯んだところに、幾度となく打撃を打ち付けられ、物理的に胃が破れたか血反吐が宙を飛ぶ。恐怖、怒り、もどかしさ。多種多様に変わりゆく思考は、全身の痛みにより一周回って穏やかに。走馬灯のように今までの記憶が再生される。実際、使い潰し続けたコピーマンの怒りは正当なもの──あー、やっば。思い返して今更気づいたが、魔界に居続けてちょっと思考が魔族寄りになってるな。
いや、それ以前からか。思えば、転生してからその兆候はあった。確かに私は、転生直後から過酷な人生を歩んできた、心が荒むのも理解は出来る。しかし、どんな悪人であろうと、何も感じずに損得勘定だけでソイツを死に追いやるのはおかしい。
なんとなく察したが、どうやら意識が種族的な肉体に引っ張られているようだ。より幼く、より非道に。
もしも、どこぞの生まれ変わったナメック星人のように、一緒に同じ時を共有できる人間がいれば、また別であったかもしれないが……過ぎたことを言っても仕方がない。前世の意識が、今世の自分を省みる。
そうだ、これは自業自得──とはいえ、今負けるわけにはいかない。
「だぁッ! っ、はぁー……フゥーー……」
「当たるわけないじゃん、そんなテレフォンパンチなんかさ。自棄にでもなったのかなぁ!」
力を込めて、私は拳を大振りする。相手は軽々と躱し、此方への意趣返しとばかりに隙の少ない強撃を放ってきた。
これは賭けだ。出来る自信は無いが、やれなきゃどのみち負けて死ぬ。今更ながら、どうして私は自分の行いで死にかけているんだ……そんな思考を片隅に放り投げ、迫りゆく拳を前に精神を統一する。
「──ゔっ……!」
その声を放ったのは、私ではなく相手だ。
無心、ただひたすらに周囲と相手を視て、身体に行動を任せる。
全てにおいて劣っているのならば、優れた部分を生み出せば良い。無駄を省き、思考を省き、今までの経験に従う。
そう、身体が勝手に判断して動くように──
「なっ!? ダァッ──ぐっ、がぁっ!?」
攻撃を捌き、生じた隙に反撃を行う。より速く、より鋭く、より熱く。心臓の鼓動音が耳の側で聴こえる、全身を引きちぎるような痛みが脳へ伝達される。
未熟、不完全、未完成。なんとも御粗末だが、曲がりなりにも再現された
たった5秒。されど5秒。
それだけの時間で、互いは満身創痍の状態へ変化した。
相手は目に見えて狼狽えている。当たり前だ、たった数秒で優勢は覆り、あまつさえ自分までもが死にそうになっているのだから。
そんな相手に向け、最後の力を振り絞って指向性のある気功波を放つ。
「ぁ、ガッ!?」
「ブラスト レイ!」
着弾時に爆発し、塵埃が宙を舞う。
感じていた気は消滅した。
──確かに、今までの自分はおかしかったのだろう。久方ぶりに込み上げてきた何ともいえない感情を、私はしっかりと噛みしめる。
「私に、魔術を、教えてほしい……です」
復活虫を口にして傷を治した後、私は第1魔界の王宮へ帰還する。その後、間を置かずに私はとある魔族の部屋を訪ねていた。
社交辞令の挨拶をした後に、頭を深く下げて、そうお願い申し上げる。正面に座る女魔族は、目を丸くさせながら物珍しげに返答した。
「あら、どういう風の吹きまわしかしら。アナタは魔法や魔術には興味がないとばかり」
「あんまり、知らなかったから。でも、意識が変わった。出来る限り、研究の手伝いをする。だから──
辿々しく、必死になって言葉を紡ぐ。前世や今世を色々と思い返してみる最中に気付いたのだ。あのコピーマンは、魔術によって強化されていた。でなければ説明がつかないし、私はそれに似た事象を知っている。
「魔術を教わるのなら、私じゃなくても良いんじゃないかしら? お兄様と言わずとも、アリンスやゴマー、マーバという魔女もいるでしょう?」
「アリンス様とゴマー様は、私を、目の敵にしてるから。マーバ様よりも、トワ様の方が、戦闘で使える魔術を、沢山知ってそう」
目の前のトワという女性。ダーブラ王の妹にして、ゼノバースの黒幕。とはいえ、コピーマンを強化したのは目の前の彼女ではないだろう。魔術で強化するだけならば、アリンスやゴマーにも可能だし……それに、もう一つの可能性として────
「ふぅん……ま、少しぐらいならいいわよ。それと、これは独り言なのだけど……研究費が追加で欲しいわね」
「……ワ、カッ……タ。な、なんとか……スル……!」
鬼かコイツ、魔族だったわ。うごごごご……仕方ない、私のポケットマネーから出そう。ダーブラ王直属の部下ということで結構貰ってるし……うぅ……ご飯代がぁ……
何はともあれ、目的は果たせた。
私がトワに接触した狙いは2つ。1つは単純に魔術を覚えるため。
ドラゴンボール世界において魔術とは、魔力を扱って不思議な事を行う術である。エネルギーの吸収、身体強化、洗脳、金縛りエトセトラエトセトラ……他人を害する黒魔法と、反対に白魔法なるソレもあって、ここら辺はややこしい。
しかし自由に使えるようになれば、様々な戦法が行える。覚えていて損はないだろう。
そして、2つ目の理由は……歴史改変を行うトワへの媚売りである。もし今ミラや仮面のサイヤ人とか連れてこられて戦闘にでもなれば、その時点で私は死ぬ。というかあの世にすら行けず消え去るだろう。彼方はキリを稼ぎたいから此方が強くなるまで直接来ることは無い……と、思いたい。
あと今回のコピーマンみたく、面倒なタイミングで敵を強化されるとか、本当にたまったもんじゃないからね!
コピーマンとの戦闘で忘れかけていた知識を思い出せたのは不幸中の幸いだな。
斯くして、私はトワに魔術を教わり始め、修行法を己と向き合うモノへ変えた。
私が魔族である以上、私の思考は非道なソレへと変わりゆく。
しかし、同時に地球人でもある。
だからこそ、初心を忘れず、精進し続けなければならない。
別に生き急ぐような真似をしなくてもいいのだ。
時間はたっぷりあるのだから。
エイジ570──転生してから155年。
私はダーブラ王を前に跪き、とある要望についての返答を待つ。
「──フン、良いだろう。キサマが勤めてからの約100年。大魔界は安定し、繁栄し続けている。大義であった。少しの間、羽を伸ばしてくるがいい」
「はっ! ありがとうございます」
「サービスだ、最新の宇宙船を貸してやろう。キサマのことだ、目的は食巡りだろう?」
「……そんなところ、です」
立派な椅子に座るダーブラへ感謝を伝え、部屋を後にする。長かった……信頼を勝ち取り、自由行動が許されるまで、本当に長かった……!いやまあ信頼自体はされていたが、部下の育成にホンッッッッッ卜ウに時間が掛かった……しかしだ、今の部下達ならば数年程度は仕事を安心して任せられる。
漸く、漸くだ。魔界から外へ出ることが出来る!
魔界の食文化を発展させ続けていたが、それでも、心のどこかで満足していなかった……待っていろ!全宇宙の美食達よ!わはははははは!
……勿論、食だけが理由ではない。食巡りは目的の精々85%程度、残す15%は──
「ワープ様。第7宇宙の──えーっと、
一面に回り続ける半球のようなハッチがビッシリと配置されている真っ白な世界。目の前の機械チックな巨大出目金へ、そう伝える。
長期休暇の目的は食巡り。そして、スピリットのコントロールだ。
主人公の内面的な移り変わりは一旦これにて終了。
初めてのアンケートゆえ、勝手がよく分かりませんが、よかったら投票してくださると助かります。沢山のお気に入り登録、評価、感想ありがとうございます。大変励みになります!
この先の展開について
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大魔界の小話を挟む
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サイヤ人周りをしっかりやる
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色々カットして早めに原作へ
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作者にお任せ