「ベアトリーチェといっしょ」な光堕ちアリウス物語を書きたかったのですが、既に存在していたので、カイザー光堕ちです。
追記:すみません、原作に出てきたカイザーPMC理事を主人公に据えているのですが、プレジデントのようにカイザーコーポレーション全体の偉い人という訳ではありません。
一応金融系とか兼任している人物(ロボ)ですが、権限は限定的と思われます。なのに作中ではアレコレとご都合主義的に動きます。ご注意下さい。
ある日、大企業カイザーグループビル、高層階にある理事室。 相応の権限を与えられた幹部級の地位を持つ"勝ち組"しか入る事が許されない摩天で荘厳な空間にて、主は1人のゲスト……異形と向かい合う。 その者、漆黒の背広を纏う異形の男『黒服』は、部屋の主、カイザーPMC理事に語り始めた。
「本日はビジネスの機会を設けて頂き、誠に有難う御座います」
「構わん……『ゲマトリア』と我々『カイザー』の利害が一致しただけの事」
カイザー理事と黒服は別々の組織だが、目的の方向性で協力し合えると意気投合。 ビジネスパートナーとして手を取り合う事になっていた。 しかし目的は双方、金ではない。 今回のセッティングは、各々の利害を再確認する為の、謂わば契約内容の確認である。
「カイザーはアビドスの権利を順当に買い取り続け、合法的に砂漠に眠るオーパーツ『ウトナピシュティムの本船』を発掘。 私はカイザーに情報提供と支援をしつつ、同地域にいる最高の神秘の持ち主『暁のホルス』と接点を持つ。 そして、ゆくゆくはそれぞれを手中に収める計画。 お間違いないですか?」
「……その件で確認したい。 貴様が言うのはアビドス高等学校の小鳥遊ホシノか?」
「ええ、彼女が此方側につかせざるを得ない状況を作り、私共の管理下に置きます。 まあ、どのような役割を持たせるかは企業秘密というものです。 契約内容の範囲外という事でお赦しを」
「当ててやろう。 キヴォトス最高の神秘、神話体系における最も偉大な神と称される神秘の持主を手中に収め、不可逆とならない程度に『反転』させることで、刹那的にも崇高とやらを観測する……違うか?」
「……! やはり貴方をビジネスパートナーに選んだのは間違いなかったようです」
理事長の心中を見透かす慧眼に、黒服は襟を正す思いで敬服する。 出来る事ならば理事を敵ではなくゲマトリア、味方として取り入れたいとさえ思う。
そんな黒服の態度に、理事は鼻にかけるでもなく、ただ淡々と態度を示すのみ。
「学園都市というテクスチャを貼られたここ、キヴォトスにおける行政は連邦生徒会、そして各自治区の生徒だ。 いずれも部分的にしか経済に加担してこない子供達に過ぎん。 だが1人1人が大人には無い力を有している。 それを探究したいのは分かる。 だが黒服、これは老婆心から言わせて貰うが、彼女達の未来を堂々遮る真似はするな。 過信ですくわれるのは、足元だけだ」
「意外でした、てっきり貴方は生徒の事を考えていないものかと。 過去に何かおありで?」
「大人だけで回せるなら、伊達に超巨大学園都市なんて仰々しく呼ばれないだろう。 数多いる生徒は大切な消費者、お客様だ……ただ、それだけの話だ」
「肝に銘じておきましょう。 私としては、カイザーと敵対する意図はありません。 貴社の大切な客人となるならば、丁重に扱いましょう」
理事は窓の外に広がるビル群を見ると、どこか温かみすら感じる慈愛の目で一瞥する。 今見える景色だけで、どれだけの子供達が往来しているのだろうと。
黒服はその背を見て、一礼後に部屋を去った。 黒服から見たそれは、人生に答えを見つけ達観し、堂々とした、或いは引退を決意した、もの寂しい王の背中であった。
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ファッ!?
カイザー!? ゲマトリアナンデ!?
カイザーPMC理事の思考回路はショート寸前であった。 何故ならコケた衝撃で新たに生まれた人格との差に精神が乖離しているのだから。
カイザーPMC理事は『ブルーアーカイブ』の舞台『学園都市キヴォトス』の悪徳大企業『カイザーコーポレーション』の偉い人の1人であり、物語本編の最初の方から登場、PMCの他、ローン系などの業務を兼任、アビドス高等学校の生徒達に法外な借金を負わせて苦しめる親玉的立ち位置である。
性格は偉そうで横暴、見た目もふくよかなお坊さんのような、カ◯ジの大槻班長みたいなデザインの黒々ロボットであり、分かりやすい悪役だ。
ところがある日、不幸にも何もない廊下で転倒、頭を強打してしまう。
一時は意識不明の重体となったが、奇跡的に修復され、職場に復帰した。
その際、彼の意識は別次元の人間と交わってしまったのである。
世間的に憑依、というやつだろう。
「何でこうなったのだ。 なんでワシ、アビドスの生徒に悪い事して喜んでるの? JK虐めて興奮する悪党オヤジなの? あ、悪党だったわ……とにかくスケジュールを確認、え、黒服と会談予定入れてるの? やべぇんじゃよ、ナニ話せば良いん?」
以降、情緒不安定感、人格変化はありつつ、横柄な態度は軟化し、代わりに慈愛や悪運の強さが備わった。
そんな中で挑んだ黒服との会談。 ゲマトリアと接点があるのは良い事なのか分からないが、ここで得体の知れない異形集団との繋がりがブツンして復讐されると怖いので、それとなく大人ぶって、ある事無い事適当な言葉や思わせぶりな態度でやり過ごした。
「ぶっねぇ……とにかく、改めてワシが鉄クズなのは理解した。 同時に未来で何が起こるのかも何故か理解できてしまった。 トリニティのティーパーティに未来予知できる生徒がいると聞いたが、こうなると本物だと信じる他ないな。 であれば……」
そうして彼は、アビドスとの交渉に再度挑む。
エッホエッホ。 今まで御免って伝えなきゃ。
「いや待て、今後、アビドスはどうする?」
今まで「悪い事してスマンね、これから仲良くしましょうや」では大人に不審感を募らせているホシノから更に睨まれる。 ユメはアッサリ受け入れそうなガバ信頼があるが、下手に動いて、黒服が契約違反認定してきたら、何かヤバい事されそうで怖い。
「黒服もだが、そもそもワシ、カイザーで1番偉いワケじゃないから。あくまでPMCの理事だから。 一応金貸業とかも兼任してるけど上から睨まれて降格して権限剥奪されたら終わりだから。 もしかして詰んでない?」
曖昧な未来予知で見えるビジョンに、己が何かやらかし過ぎて降格された光景が見える見える……。
悪事で上り詰めた地位とはいえ、ここまでの努力を廃校寸前の生徒達でパァにするのも惜しい。
「ううむ……おっそうだ(唐突)、ある程度見えたビジョン通りに事を進めて、なんか失敗しそうな選択を回避すれば、それとなくイケんじゃない? ワシ天才か?」
などとガバ理論を脳内供述。
善は急げ、思い立つ日が吉日。 そんな訳でアビドスとの契約内容を確認、カイザー側と連邦法と照らし合わせ、そこにワシなりの拡大解釈を加えていく。
アビドスが闇金なカイザーローンにしている借金とは、先代が自治区を砂嵐、砂漠の侵食から守る為の資金としてこさえたものだ。
その為に土地を切り売り、担保にしまくるも、砂嵐はどうする事も出来ず失敗。
アビドスは砂漠に侵食され続け、住むには厳しくなっていき、どんどん衰退。 自治区をほぼ失い、市民も生徒もアビドスから去ってしまった。
そして今のアビドス高等学校には、3年生で押し付けられるように生徒会長になった梔子ユメと、1年生の小鳥遊ホシノしか在学していない。
ハッキリ言って、アビドスの復興と借金返済は2人だけではどうする事も出来ないだろう。
一応来年以降、新入生は入学するものの。
そんな衰退地だが、カイザーは拘った。
元自治区、その広大な砂漠の何処かに、オーパーツが眠っているというからだ。
黒服による情報提供に、カイザーは乗った。
そのオーパーツさえ手に入れば、学生が実行支配する此処キヴォトスで、戦略的有利に立ち、インフラの制御権を奪取出来るかも知れない。
そのオーパーツの発掘指揮を任されているのがワシ、という感じなのだが。
まあ、その、なんだ……金も権力も手に入ると、今度は夢を追いたくなるというか。
老いたCEOに付き合う形なんよなコレ。 いや意義はあるけど、結局キヴォトスの脅威になろうとしている話だしねコレ。
「うーん、でも投げたら降格待ったなし。 てか下手したらクビだよ。 何とかこう、上も下も誤魔化していくしかないな……」
実は黒服、ブツを本当に発掘出来るかは期待していない。 主目的はあくまでホシノ、その力である。 そこを突けるか?
いっそホシノを拉致ってみるか?
いや無理だわ。 あのピンクチビ、最高の神秘と黒服がいうだけあって、キヴォトストップレベルに滅茶苦茶強い。 カイザーPMCの戦車隊をけしかけても鉄屑の山にされかねん。
「いや待て、奴の心残り、生きてんじゃん」
ワシ、未来のビジョンで見ていたよ突破口を。
梔子ユメだ。 あのデカパイほわほわクソザコ無警戒な青緑髪なら、口説くにも拉致るのも簡単にできる。 問題は手を出したのがバレるとホシノが基地1つ壊滅させてくる事だな。
そんなユメだが少し未来にてホシノと喧嘩別れするようにして砂漠で遭難、脱水症状でヘイローが壊れてしまう(死んでしまう)。 そしてホシノがハイライトオフになる。 そこを突く。
「よし。 ユメを監視し、砂漠で死にかけたら颯爽とワシが現れ助けよう。 そんでその勢いでウチにお持ち帰りだ。 ならばホシノに襲われる理屈もない」
そんなガバ理論でユメの監視を開始。
ロボットとはいえ、オッサンがJKを監視とかヤバいが、バレなきゃ犯罪じゃないんだよ、その辺、大人は、カイザーは得意でね?
そして、その日がやってきた。
「暑い、動いてないのに暑いよぉ……」
遂に来たあああ!! この運命の日が……!
「うおおお!! 今行くぞユメぇぇぇ!!」
ワシ、すぐさまヘリを飛ばし、現地に急行。
アビドスの視察移動中、偶然発見したテイにし、砂漠のど真ん中で倒れているユメを救助、ハイ◯ースならぬヘリに放り込み、ぐへへと水を飲ましてやる。
なお、程よく希望と絶望を反復横跳び出来る思わせぶりな証拠品として、コイツのアイアンホルスなる鞄型に変形する鋼鉄の盾は置き去りにしてやる。
まぁ、発信機、盗聴器込みでだがな。
「しっかりしろ。 まだツケを払って貰ってない、保険にも入ってない奴が勝手に死なれちゃ困る!」
「おじ、さんは……?」
「なに? 借金相手の大元を忘れるとは、その胸並みにいい度胸だ。 ワシはカイザー理事、お前達アビドスの借金相手だ、そして恩人だ。 ちゃんと覚えとけ」
「うん……ありがとう……」
「ふん! 働いて返して貰うからからな!」
そうしてワシ、カイザーはユメを確保する事に成功。 後日、検査入院だの治療中は安静絶対と言い訳し、敢えてホシノとは連絡をさせないようにすると、そのまま切札として懐にしまっておく。
一方、脅威となるホシノの様子をワシは聞く。
「早く……早く、早く……!」
イヤホン越し、ホシノが回収した盾越しに聞こえてくるは、嘆き、慟哭、懺悔……!
「ユメ先輩、すみません、すみません……私のせいです。 私のせいで……私が殺したんだ……あんな喧嘩別れみたいな事をしなければ……ッ、あ、ああ……うわああああ!!!」
恐らく盾を抱きしめて号泣中である。
「あー可哀想。 うわぁ可哀想(愉悦)」
ニチャア……と邪悪に微笑むワシ。
愉悦……! 悦楽……!
このようにして、悪と善を同時に熟していく。
両方やらなきゃならんのが辛いところだが。
「フハハハ! 程よくメスガキ共を苦しめて、しかし救いも与えて飴と鞭、そして己の地位を守るぞい!」
やっぱりワシ、悪徳企業の悪党オヤジだわ。
メモ
カイザー:ドイツ語で皇帝の意。
ブルアカ世界では悪徳大企業。多くの事業を手掛けている。アニメでは紙幣にカイザー理事と思われる顔が刻印されている事や、後々の事件の責任追及を連邦生徒会に受ける際、失業者の大量発生による経済損失を鑑みて、罰金刑にのみ留められるなど、学園都市での地位、影響力はかなり大きい事が伺える。
理事:組織・団体を代表し、事務を管掌する地位にある者の職名。
ブルアカではカイザーPMC理事の事を指す場合が多い。本編第1章、ゲーム開始後初めて訪れる事となる高校、アビドス高等学校の借金相手でもある。 如何にも悪役といった、カ◯ジの大槻班長みたいなデザインのロボットであり横柄な性格。 高校を廃校へ追いやり、アビドスの土地を掌握しつつ、神秘の探究者集団ゲマトリアの黒服と共謀、砂漠に眠るオーパーツを発掘しようとする。
が、先生率いる生徒の活躍により失敗、やがて失脚する末路を辿るのだが……。
なんか当作では不慮の事故で人格が変貌。一人称が「ワシ」の好好爺?になった。
ゲマトリア:研究、探究の組織。構成員それぞれが独自のアプローチで崇高なる概念を追及する。黒服もその1人。追及の為なら生徒を犠牲にするような選択を見せる為、悪役の雰囲気があるが、主人公である先生と敵対しようとは思っておらず、寧ろ好意的に接し、危険に際して警告、ほんの僅かながら助力したり、仲間に引入れようとする素振りさえある(約1名除く)。
元々あった組織名を、彼らが用いて名乗っている。構成員はキヴォトスの者ではなく、先生同様に外の者。ただし違う世界からの可能性。構成員が先生に好意的なのは経済、美術面でのアプローチをする彼等にとって「先生」という概念は慕う存在である事も、可能性としては挙げられる。