降格回避√カイザーの野望   作:ハヤモ

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前書き
ユメの処遇をどうこうと。解釈違い注意。
盾持ちである事もあってか神秘は子供の守護者、母神イシスなのではという意見も。
そんなユメですが、死なずにいる事で物語に悪影響が出……ないと良いなぁ。

アビドスのオーパーツはアトラハシースの箱舟ではなく、ウトナピシュティムの本船でしたね……修正しました。
モチーフは同じノアの方舟絡みとしても、ブルアカ内では描き分けていますからね……。


ユメの卒業式参列招待

生徒の記号を持つ数多の神秘が跋扈する地に、青春学園のテキストを貼りつけた此処キヴォトスだが。

住まう生徒が卒業する、大人になるとは、どういう事象なのか、実のところワシにも分かっとらん。

 

キヴォトスの外とやらに旅立つのか?

しかし戻ってきた生徒の話は聞かぬ。 キヴォトスの中で大人になった人も見聞きしない。

ワシが知らんだけかもだが……。

 

黒服には偉そうな事を言ったが、ユメの手前、気になる事象ではある。

ユメが消えて無くなるようならば、新たなホルス避けの光物を探さねばなるまい。

 

しかし一方で、こうも考えられる。 ワシと契約している以上、ユメはキヴォトスから消えずに残り続けるのでは、と。

とまぁ、グダグダ愚考しとったら。

 

 

「私、アビドス高校を卒業するんだ」

 

 

来てしまった、その時が。

ワシの元に来て、そう言うユメはどこか大人びた笑顔を向けてくる。

黒背広ではなく、陽気も月光も跳ねる純白、ある意味で晴れ着の制服を纏って。

最後は「生徒」のつもりなのだろう、卒業するならば、もう着る事は無い記号だからな。

 

まぁワシはいつも通りに接してやるだけ。 余計なアクションは、互いの本質を歪めてしまう。

 

 

「だからどうした? わざわざ多忙なワシに報告するとは、随分な余裕を見せてくれる」

 

「うん……でも言わなきゃなって」

 

「ふんっ」

 

 

鼻で笑ってやるが、報連相のうちの2つくらいは出来た点は成長したとみるべきか。

軽く労いつつ、ユメという存在の行先を見極めてやろうではないか。

 

 

「先ずはおめでとう、とでも言っておけば満足か? だがよくもまぁ貴様のような弱肉が留年しなかったものだ。 その点は追加で褒めてやっても良い」

 

「酷い!? 私も色々頑張ったんだよ!」

 

「そうか。 で? 契約書通りウチに就職する流れで良いのだろうな?」

 

「その事で、理事さんには悪いけど……」

 

 

らしくなく、しおらしくモジモジし始める。

おいおい、契約書をちゃんと読まなかったな?

だから反故にしろと切り出すかぁ?

 

 

「卒業式に参列して欲しいなって」

 

「だが断……なんだと?」

 

 

なんと言ったか、この娘。

卒業式? 他所のガキンチョの?

 

 

「アビドス高等学校の卒業式。 ホシノちゃんは嫌がるかもだけど、お世話になった人には来て貰いたいの」

 

 

お前は何を言っているんだ。 自身がホルス避け、人質の身分である事を忘れているな?

生徒如きが、カイザー理事のワシに指図できると思うなよ。

 

 

「ワシは忙しい。 第一、貴様の親でもなんでもない。 行くメリットも無い」

 

 

寝ぼけたデカパイを突っぱねる。

世話とやらは全部ワシの為だからな?

 

それも本来貴様ら生徒がする領域だったところを、已むを得ずしたのだ。 勘違いも甚だしい。

でもでも、とユメは食い下がる。

 

 

「でも理事さんは私を助けてくれた。 沢山の、行き場のない子達も守ってくれた。 砂に埋もれていくアビドスに人を呼んで、活気を戻してくれている」

 

「生徒の為でもアビドスの為でもない。 全てワシの降格回避が目的、その予防線を張った際の副産物に過ぎん……この際だから言わせて貰うがな、本来なら貴様ら生徒がするべき役割だったのだぞ、口の利き方には気を付けた方が良い」

 

「それでもなんだ。 駄目かな?」

 

 

落ち着き払い、慈愛に満ちた目で同情を求めてくる。 これが仕事の取引であったなら時間の無駄だとバッサリ切り捨てた。

感情だけで物事は動かないし稼げもしない。 なんなら損をする。 美徳より悪徳が蔓延る世だ、そうした善性は利用されて骨の髄までしゃぶられてポイ捨てされるがオチよ。

 

……だが、ここまでユメがしつこいのは初。

今までヒィンヒィン鳴くばかりの馬鹿だったのに、なぜなのだ。

 

 

「なぜ、そこまでワシを参加させたい? 何を企んでいるのだ、事と次第によっては契約違反としてゲマトリアか何処かに───」

 

「私を、私達とアビドスを見て貰いたいから」

 

 

駄目だ、理由になっとらん。 堂々巡りだ。

だが弱小高校とはいえ、キヴォトスの卒業式や卒業生がどうなるのか、気になるのは確かだ。

或いは大学のようなモノがあり、より高位の器に移籍する者もいるかも知れん。 少なくとも初等部、中等部は確認できている。

 

ユメの場合、このままワシの秘書というか、ホルス避けとしてカイザーに就職か。

それはそれで1つの形だろう。 ワシとしても現状維持となり、その方が好ましい。

それを確実なモノとする為に「観測」し、ユメが別の役割、器を得ていく過程を間近で見るのも面白いかも知れん。

 

それにホシノを制御する以外にも、シェマタの件もある。 その意味でもユメは暫く必要な人材といえた。

 

 

「わかった。 そこまで言うのなら出席しようではないか」

 

「! ありがとう理事さん!」

 

「砂塗れで埃臭い校舎になんぞ入りたくないが、現場視察は重要だからな。 それに不良だらけだろう、PMCを警備に連れて行くが嫌とは言わせない」

 

「うん! 必ず来てね!」

 

 

笑顔満開のユメは、そう言って去っていった。

はぁ〜……やむを得ん。 言ってしまった手前、行かないとな。 口約束でもある種の契約の形、色々言っておいてワシの方から違反してましたでは気分が悪い。

 

ワシ、警護をつける為にPMCに電話をする。

適当に1人か2人の兵士で良いだろう。

 

 

「もしもし、あ、ワシだワシ。 カイザーPMCのジェネラルに繋げろ。 待て待て、ワシワシ詐欺じゃない!?」

 

 

───理事ともあろう方が弱小高校の、それもたった1人の為の卒業式に?

 

……と、少し訝しまれたが「ワシ理事ゾ、黙って働け給料は出る!」と勢いで指示したら、万全に守る為だと大部隊を付けられた。

そして1人1人に特別手当を出さねばならず、予算を組み直す羽目になった。

おのれジェネラル……ワシが1番悪いけど!

 

 

「しかしなジェネラル。 何故ワシ1人に基地1つに配備されたあらゆる兵器を総動員なの?」

 

「それは貴方様が我々の理事だからです」

 

「幾つかの小隊で良くない? 部隊が動くと燃料代とか食糧とかで、めっちゃ金掛かるんだよ、お分かり?」

 

「……お言葉ですが理事。 相手は弱小高とはいえ、かの小鳥遊ホシノがいます。 他にもライバル社であるネフティスの令嬢、十六夜ノノミに、素性が不明ながら高い戦闘力を持つ砂狼シロコは警戒するに値するかと。 それに不良とはいえ束になればそれなりです。 特に神秘を持つ生徒達は、同じ武器を振り回すにも何故だか防御や攻撃力が高い傾向にあります故に」

 

「なるほど。 で、正直なところは?」

 

「稼ぎ時ですな」

 

「やっぱりな」

 

 

金、やはり世の中は金なのだ……!

今回はカイザーの金で何とかできるが、それでも派手にやらかすと私事がバレて降格処分される恐れがある!

 

 

「敵は身内もだ……!」

 

 

ユメもだが、奴らのほざく青春にある愛や友情とやらを否定しているのではない。

 

だが余りにも金が重過ぎるのだ。

金はヘイローより重い……!

 

だからなユメ、そしてアビドスの連中よ。

コレは投資だ。 いつか返して貰うからな!!

 

 

 

───────────────────

 

 

 

「姐さん! 起きて下さいホシノ姐さん!?」

 

 

アビドスの制服を着崩す不良の1人、シロコの舎弟が、使い走りのままに血相を変えて屋上へ駆け上がると、昼寝しているホシノを揺さ振り起こした。

 

 

「ふぇ〜なにぃ? おじさんが気持ち良く寝ているのを邪魔しちゃ駄目って教わらなかった?」

 

「それどころじゃないんスよ! 理事のおやっさんのトコが、カイザーPMCが大部隊をウチのガッコを取り囲むように展開してるって!」

 

 

刹那、ホシノの目は鋭くなると素早く起き上がり、周囲を見やる。

カイザーPMC基地や発掘現場のある砂漠方面から、金属光沢の群れが動いているのが確認できた。

詳細不明。 しかしかなりの数には違いない。

 

 

「……動員数と武器は。 シロコちゃん達と連絡とって、できるだけ数を揃えて」

 

「え、えーと」

 

「走れ! 行くんだ!」

 

「はいぃ!?」

 

 

滅多に見せない、ホシノの危機迫る表情にビビり散らしながら、不良は方々に連絡を取っていった。

ホシノは臨戦モード。 タクティカルベストにサイドアームの拳銃、メインの自動散弾銃にユメの盾、アイアンホルスを装備。

 

 

「PMC理事の奴、とうとう動いたのか。 ユメ先輩の卒業式に合わせてくるなんて、随分と良い趣味を持ってるね」

 

 

ホシノはアビドスの表向きの自治組織である高校を、遂に制圧しに来たと思った。

そうでなければ、オートマタのボディが放つ閃光の海が、突然に大移動なんてしないだろう。

 

実際はユメの卒業式に参列する理事を守るという姑息な名目で、ジェネラルが大部隊を動かして特別手当枠を増額させるという安直な意図の結果なのだが。

 

分かる訳がない、ユメが未だにホシノたちに報告や連絡をしてないのだから。

あいや、言ったとしても信じて貰えないだろう。 規模が規模、そしてここは些細な喧嘩で銃撃戦が日常のキヴォトスだ。

 

 

「ユメ先輩も、みんなの事も、私が守る。 もう誰も奴らには盗らせない。 思い出も、汚させない!」

 

 

たった1人の卒業式。

寂しいかと思えば、どうやら寛大で大々的に送って貰えそうだった。

 

 

「将軍! アビドス高校が此方に反応した動きを見せております、蜂の巣を突いた騒ぎです!」

 

「カイザーPMCの威厳が効いているようだな。 このまま萎縮して貰えたなら、宣伝兼抑止力となり、ボーナスを貰えてみんなハッピーに……」

 

「ほ、報告! 先行していた第1、第2小隊がホシノの襲撃により壊滅!」

 

「え"? 向こうヤる気なの? マジで?」

 

「シロコに襲われた砲兵陣地との連絡途絶!」

 

「歩兵中隊、ノノミの機銃掃射で被害甚大!」

 

「各部隊から不良グループと交戦中との報!」

 

「理事は無事か!? 連絡を取れ急げ!?」

 

 

ドカァンドカァンと爆音と銃声、怒声と悲鳴がアビドス市街地に響き渡る。

 

 

「陣形を維持しながら前進する」

 

「覚悟して下さいね〜⭐︎」

 

「うおおッ! 番格に続けええ!」

 

「私達の居場所を守るんだああ!」

 

 

何故こうなったのか。 報連相を怠った結果なのか、私情に塗れた結果なのか。

今となっては兎に角……。

 

 

「この痴れ者共があああ!!?」

 

「ひぃん!? みんなやめてえええ!?」

 

「ユメェ! ホシノに連絡はしとらんのか!?」

 

「理事さんが来るとは言ったつもりだよぉ」

 

「くそっ、流石に大部隊はマズった! 普通は攻撃しようなんて思わんが、ここはキヴォトス、しかも相手は融通の効かないホルスと愉快な仲間達な事を失念しておったわ!!」

 

 

卒業式の賑やかさだけならば、歴代に名を連ねられる生徒会長に、ユメはなれたかも知れない……。




後書き
親父化していくカイザー理事。
あと万事屋アルちゃんなBGMが流れそう。

感想評価、ありがとうございます。励みになります。投稿開始からなんとか1週間、作品を消さずにここまできました。今後とも不安定な中ですが……。
展開が足踏みじゃないか不安もありつつ。
アビドスに篭り続けるにしても、本編時間軸に行かないと物語に緩急ができず、他キャラが使えない問題もあるかなと。
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