さて……砂漠対策の壁や植林展開、太陽光発電所の建設、ビナー対策の設備や兵器研究も進む中。
ワシは高校にもテコ入れしようと思う。
ハッキリ言えば、教育だ。
根無草に学生証という身分証明を提供し、公共サービスを受けられるようにし、砂漠対策を進める今、次に必要とされるのは生徒の意識改革である。
というのも校門を潜って後は用無しハイ終わりという感覚の生徒が少なくない。
ホシノやノノミ、シロコの強さに従う奴はまだ良い。 駄目なのは勉強もバイトもせず、その癖に下らん承認欲求でイキって世間様とワシに迷惑を掛けるクソガキ共だ。
そのせいで一部区画で治安悪化、市民が萎縮しており、事業者や市民が出ていく要因になっておる。
一応の所属であるアビドス高校への不満も高まっていて、本来するべき内政をカイザーがしている件も合わさり、評判は悪い。
不良のみならず、成績や財力の悪さもあり、落ちこぼれという印象も強い。
しかも事実だから、ホシノは言い返せないという……。
現生徒会長として謝罪し、その力のままに問題児をボコすばかり。 だが生徒数は多く、1度や2度フルボッコにされた程度では反省しない猛者がいるという、ゲヘナのような始末。
で、ホシノが苦しむだけならザマァ見ろと笑うだけだが……市民の流出要因という、ワシの小遣いが消えるのは看過できないワケで。
あと素行が悪い学校となると来年、奥空アヤネと黒見セリカが入学を回避してしまう可能性もある。
そうなると、アビドスやキヴォトスの存亡を賭けた総力戦に支障が出て、バッドエンドになるかも知れない。
なので重い腰をあげる必要があったのだよ。
さても、具体的にはどうしていくか?
とりま当然とも言える御触れを出し、ワシは貴様らを見ておるぞ……と内政干渉兼遠回しに脅迫。
悪事を働く者は、最悪学生証の取り上げをすると脅し、そうでなくても授業も部活もバイトもせず、意味無くふらつく者は落第だとも言っておく。
勘違いして欲しくないが、厳しい事を言ってるつもりはない。
これを言うと反発が出るが、学生の領分は勉強である、残念でもなければ当然の規則だ。
どこの学校でも、この辺は共通しておるし、高校生の歳に、いちいち言う事ではない。
が、それが出来ていたら、そもそも此処には流れて来ていない。
本質はさておき、生徒のテキストを貼られているならば、相応の振る舞いをして貰おう。
その点、キヴォトスのルールとやらにも合致している筈だ、まさか己の規則に卑怯と言うまいな?
次に地位向上を目指す。
そもそも今のアビドスは他の学校と比べても、格に劣る地位にある。
例えばキヴォトス3大校、特にお嬢様学校のトリニティ総合学園。 その生徒会組織のティーパーティ所属となれば、生徒の身分でもタワマンの部屋を借りるなんて行為も夢では無い。
何故ならば、トリニティの権力や財力、それらを維持出来る風格が担保となり、その中枢組織に属するとなれば地位も高く力もある「勝ち組」と見做されるからだ。
取引する側としても、そんなお高い人と繋がりが持てるのは嬉しい。
それだけの品質や信頼を勝ち得る事となり己の格を上げる事になるし、直接の高収入だけでなく、もしかしたら商談が広がるかも知れない。
逆に下手を打って信頼を損ねれば、人生を左右しかねない相手ともなり得るが、そこまでいくと身を弁えた商人も多い、とにかく余計な心配は皆無だ。
対して無名の地方となると、例え身分証があっても、ボロアパートの部屋を借りるにも訝しまれることも。
素行が悪い学校となれば最悪、審査もして貰えず名前だけで跳ねられるという苦々しい可能性すらある。
生徒の時点で扱いが酷いならば、仮に卒業とやらが出来ても進路に苦しむのでは?
ユメのように穏やかな性格で幸運な者でも、学が無いとなると肉体労働……それこそ如何わしく、ばるんばるんとナニかをされてしまう可能性だってあるのだ。
この「名門のエリート」と「地方の落第生」の偏見の存在は馬鹿みたいに大きい。
まぁ実際その通りで、何も言い返せないのが辛いなぁホシノ?
兎に角、治安を乱す挙句に本人達にも将来性が無い事を長々と説明したが、幸いにもワシ、カイザーPMCが牛耳っている地だ。
コネで傭兵でもなんでも安月給で雇ってやる方法も無しにもあらず。
だが全員が傭兵になりたい訳では無い。
カイザーPMCもトラブルや命令1つでアビトスから撤退する可能性が十分ある。
そもそも経歴が中退や退学、資格も無く犯罪歴塗れで、社会不適合レベルに協調性の無い連中が、部隊という規律や集団行動塗れの環境で生きていけるか怪しい。
腐った根性を叩き直す、なんて言い回しがあるように、もしかしたら変わる奴もいるだろうが……PMCであれどこであれ、矯正組織ではないからな。 その辺は勘違いしないで貰おう。
こうした事情からも、アビドスの将来を見た時、そこには不安感しかない。
これら不安感を取り除く事こそ、アビドスの治安と名誉回復、地位向上により生き残る鍵である。
その上で生徒達が自活ができるようになれば、ワシが世話をする手間が無くなるし、PMCが撤退した後も最低限、自治区を維持するだけの政治は出来るようになる。
その為に、ワシは重鎮やスポンサーと相談、協議を重ね、ワシは以下の3つの策を行使する事になった。
1.カイザーからの推薦枠を作る
2.資格講習を受けさせる
3.カイザー系への就職ルートを構築
推薦枠というのは、ワシがバイトや部屋を借りたい生徒の後楯になる事だ。
アビドスというだけで不当な扱いをしてくる程度の輩なら、悪徳カイザーの権威がチラチラすればビビって頭をヘコヘコするのが大半だ。
勿論、誰と構わず盾になる気は無い。 成績や人格に問題が無い生徒が対象だ。
これによって元々真面目な生徒の生活はある程度守られ、不良も生きる為だと多少大人しくなるだろう。
資格講習は、読み書き算盤の低級資格を受けさせ、最低限この生徒は常識的な知識を持ってますよと主張する。
すると不良校の生徒は悪=迷惑行為以外出来ないという偏見、レッテルが薄まり、門前払い率が減少。
他にも危険物取扱いやら、重機講習やらを開き、希望する者は受講できるように。
そうして資格を取得させ、バイト先の幅が増えれば、健全な稼ぎ方を覚えて、カツアゲやら強盗やらをする奴が減る筈だ。
それら受講費の殆どはこっちが受け持ち、僅かな分はアビドス高校に負担させる。
何もかもコッチが世話すると、何もしない癖に文句だけは言ってくる学校の構図になるからな。
それはそれで、縁を切った時に金回りでアタフタし始めそうで面白いが。 それを見て愉悦に浸るのも一興か。
で、カイザー系への就職ルートだが。
これはユメみたいなパターンを想定しとる。 卒業した生徒や、アビドスでも退学や停学処分になった者を受け止めるセーフネットだ。
幸い、ワシは傭兵や警備業のPMCだけでなく、建築業のカイザーコンストラクション、金融系のカイザーローンも兼任しておる。
それらに訓練組やインターン枠を構築、ここにブチ込み現場に教育を投げ渡す。
そこで良い加減大人になれよ……と、青春の思い出をぶち壊しに来るロボット市民や管理AIに分からせて貰い、労働の素晴らしさをご覧頂く事にする。
そのまま野放しにして愚連隊となり、犯罪集団になられるよりマシだからねしょうがないね。
あと、ここには記載していないが、詐欺対策や悪質な勧誘への対策講義も行う予定。
不良じゃなくても、ユメみたいな馬鹿もいるからな、必要な事だろう。
とまぁ、上記の色々を教育としてアビドス高等学校の授業に混ぜ込み、ワシは他の改革や、対ビナー兵器にも邁進するのであった。