「おお! 対ビナー兵器が出来たのか!?」
開発部から諸元表が送られて来た。
対ビナー兵器を試作、実戦データ収集の為にも現場で使ってくれという。
書面では『対ビナー砂上戦闘艦』と格好付けておるが、どうも大型のホバークラフトに武装と装甲を施した代物とのこと。
武装は船首に大型捕鯨砲、左右側面にも幾つかあり、打ち出したアンカー越しに高圧電流を流したり、追跡装置を装甲内部に埋め込むのを想定している。
「捕鯨砲とはな……これも時代か。 まぁ相手は鯨のようにデカい相手だ。 使える物は何でも使うのみ」
しかしホバークラフトか……考えたな。
空気を下に出して船体を浮かせる事で、水上のみならず陸上でも移動可能、それも砂漠なら遮蔽物もなく、砂に足を取られない。
ビジョン的には、不良グループのジャブジャブヘルメット団が所有していたか?
そして普通に生徒に扱われ、破壊されたり直されたりするイメージも……急に不安になってきたぞ、そんな物がビナーに有効なのだろうかと。 武装的にも半信半疑なところだ。
「まぁ防砂堤に並行しての開発で急拵えだ。 性能は怪しいが、使ってやらん事には分からんよ」
結局はコレに尽きる。
一応アビドス砂漠で動き回れる事はテスト済らしく、そこは問題ない。
問題はビナーとの交戦データが不足していて、有効な手段が分からないという事。
やはり積極的に狩り出していかないと、得られるものは無いということだ。
「幸い奴は縄張りから出る事はないし、元ミレニアム生の設置した震度計で大凡の位置は割り出せる。 そこに砂上艦という機動力をぶつければ、戦うにも逃げるにもやりようはある……たぶんな!」
船員には我がPMCのオートマタとしても、操船と捕鯨砲絡みがメインとする。
奴に直接攻撃する戦闘員は、神秘を持つ生徒を雇ってぶつけるとしよう。 その方が有効だからな、悔しいが。
他にも援護兼護衛として戦闘ヘリ部隊を随伴させるとして。 他のあらゆる試作兵器も総動員だ。
レールキャノンを長距離狙撃に転用、援護射撃が出来るようにし。
シェマタの副砲として試作した列車砲を砲兵隊に配備、火力支援させる。
超最新鋭兵器として二足歩行兵器、ゴリアテの強化発展型機も船に載せて行こう。
「フハハハハ! ガキどもの世話ばかりで疲れていたところだ、釣りでもして気分転換というワケだぁ!」
ワシは意気揚々と書類を書き連ね、それらの準備を整えて対ビナー部隊を編成。
早速出撃命令を下すのであった……!
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カイザーPMC バイト急集!
日時--:-- 時給○万円〜
状況次第で特別ボーナス
連絡先○○○-○○○○-○○○○
(以下仲介人メッセージ)
(モモトーク自動一斉送信)
バイト戦士諸君、新たな仕事だ。
アビドス砂漠にいるビナーと交戦して欲しい。
アビドス砂漠のビナーは、分厚い装甲と原理不明の超兵器で武装した、砂の下を高速で移動する能力を持つ巨大な白蛇鯨ロボットだ。
開発経緯や起源等は不明ながら、その装甲は強靭で、戦車砲の火力であっても全く歯が立たない。
逆に向こうの武装、特に口吻から放たれるレーザー砲は、岩をプリンのように軽々と破壊する威力があり、並大抵の装甲で防ぐのは不可能だ。
巨体だけでもかなりの脅威であり、体当たりでもされたら無事では済まない。
そんな奴が度々職場を荒らしている。 それ故に、これまでPMC社の頭痛の種だった訳だ。
それと戦えと言うからには勿論理由がある。
数少ない実戦データから、どうも弱点は口吻内部への攻撃及び、鱗装甲同士の僅かな隙間に攻撃を捩じ込むのが有効との報告がある。
特にレーザー照射のチャージ中に攻撃してやれば、その膨大なエネルギーを跳ね返す事が出来る可能性が示唆されている。
上手くいけば機能停止、めでたく特別ボーナスという話だ。
……正直、PMCの連中も確証がないんだろう。
最悪、試作兵器群の実験体、体の好い当て馬になってしまうかも知れない。
当日は砂上戦闘艦と嘯く大型ホバークラフトに乗り込み、ビナーを捜索、発見次第様々な武器で攻撃を加えて実戦データを収集予定。
というか、コレが主目的だ。 無理してジャイアントキリングを狙う必要は無い。
その代わり、時給や見返りはデカいぞ。
勇敢なバイト戦士諸君の連絡を待つ。
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「バイトリーダーとして乗れ、なんて理事さんに言われたけどぉ……」
「うへぇ、これで対ビナー兵器? 雑だなぁ。あとおじさん、捕鯨砲といい、好きになれないよぉ」
砂上戦闘艦を主軸とした「白蛇鯨絶許隊」が編成され、討伐に向かう生徒達が大型ホバークラフトに詰め込まれていく。
戦闘艦というだけとても大きく、飛行甲板まで設けられている。
といっても、今は航空機ではなくゴリアテの一種か、黒々ボディの二足歩行兵器が鎮座しているだけだが。
船本体には捕鯨砲とされる火薬式アンカー射出器が複数と、機関砲の銃座とした武装に加えて多少装甲も施され、その重量に負けないように強力なエンジンを搭載、機動力を確保している様子。
中央の箱型船内には、操舵室以外にも仮眠室や、ビナーを捜索する為のレーダー監視室、そこには他の電子戦装備も試作器か否かを問わず詰めるだけ詰め込まれているときた。
正/契約社員的な立場のPMC兵がそれら装備を使用し、募集で駆けつけたバイト戦士は普通に手持ち武装で戦うというスタンスだ。
なんか理不尽に感じるかも知れないが、何故か神秘を持つ生徒達の方が本職より強いのだから、これでも良いという判断なのかも知れない。
そんな試験モリモリの乗り物に、生餌のようにしてユメが乗せられ、釣られるようにして2年ホシノも乗船する。
「あっ、ホシノちゃん来てくれたんだ! 髪がちょっと伸びた?───そっか、クジラが好きだもんね!」
「……ビナーは興味無いですけど、ユメ先輩が船に乗るって聞いたんで。 バイト募集に託けて様子見ですよ」
「そうなんだ、ありがとうね! あっ、私の盾、使ってくれているんだ?」
「……相変わらずそうで、何よりです。 取り敢えず一緒にいる間は盾、返しますよ。 嵩張るんで」
「なんか呆れられてる!?」
いつかのやり取りを交わす2人。
カイザーに就職?したユメに思うところはあるホシノだが、元気そうな様子に一先ず胸を撫で下ろし安堵した。
……背も胸も、去年と変わらない風ではあるが。
そうして武装が試作メインの豪華客船ならぬ砂上船で、物騒なデート……バイト戦士らビナー攻撃し隊が出航するのであった……。