降格回避√カイザーの野望   作:ハヤモ

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前書き
更新頻度低下中…体調不良の中…


狐娘、ハメられる。

SRT特殊学園。

Special Response Termの略であり、特殊部隊を育成管理する学校である。

連邦生徒会長により創設されたこの学園は、ヴァルキューレ警察学校では対応できない捜査及び迅速な制圧、確保を目的とした特殊部隊員が生徒として在学。 必要とあらば目標を制圧しに動く。

それは身内の連邦生徒会であれ我々大企業であれ関係ない。 問答無用で介入できる権限と武力を併せ持ち、それらを扱うだけの高度な技量も持っている。

 

故に入学試験も、その後の学園生活も大変厳しく、日々訓練漬け。

一般生徒が謳歌する青春と同等のモノは味わう余裕はなく、下手するとそのまま学生を終えてしまう可能性もあるという。

キヴォトスの平和の為に犠牲となる……美徳ながら嗚呼、可哀想、うわぁ可哀想な生徒ともいえた。

 

まぁワシら悪徳企業としては全く有り難くない存在だし、自らその道を選択したとなれば同情の余地なし、いよいよ可哀想とは思わん。

しかも来年、学園が閉鎖するのを知らんのだから、哀れな子羊共よなぁ?

 

というのも来年、責任者である連邦生徒会長が謎の失踪を遂げるのだ。

するとサンクトゥムタワーの行政権が混乱、キヴォトスは混乱の渦中に陥ってしまう。

SRTに関しては責任の所在が不明になった事で連邦生徒会内で揉めに揉め、結局は閉鎖する流れだ。

存続するべきという意見もあったが、SRTが暴走した場合、誰が止められるのか、その責任を取れるのかという問題を解決できなかったのだ。

 

……てか、キヴォトスの最高権力者とはいえ、たった1人いなくなっただけで瓦解する組織は、果たして組織と言えるのか甚だ疑問である。

カイザーならば、ワシのような理事や重役が1人左遷された程度じゃガタつかんぞ。

プレジデントともなれば混乱はするだろうが、各社がある程度独立しているからな、多少は大丈夫だろう。

……上層部はトップの座を狙って、戦国時代と化すかも知れないが。

 

最も、それだけキヴォトスという学園都市の維持管理が、特殊過ぎるという事でもあるか。

連邦生徒会長……何者なのだろうな?

 

閑話休題。

 

閉鎖決定後、在学生はヴァルキューレ警察学校に移籍する事になり、その装備や権限は一気に縮小。

しかし一部SRT生徒が母校閉鎖に反対、武装蜂起して連邦生徒会を襲撃したり、公園を不法占拠して抗議運動をするなど、恐れていた事態を引き起こした。

皮肉にも、それら危険行為により、益々閉鎖するべきという意見が根強くなってしまうという。

 

フハハハ! ザマァないなぁ!?

己の首を己自身で絞めるとは!

 

やはり武力では解決出来ない事もある。

いや、寧ろそうする事で悪化する物事もあると、正義を掲げるなら気付いて欲しい。

いや、尻の青いガキンチョには難しいかぁ?

 

何故、法律があるのか。 何故、悪徳大企業カイザーが幅を利かせているのか。

机上の空論でお偉方が作った物もあれば、企業が都合良く動く為の物、血で書かれたマニュアルもある。

世界はそれらを元に回っていく。 そんなこの世界は正義か悪なのか。

人それぞれの正義と悪が鬩ぎ合う中、欺瞞だらけの世界で果たして己の正義を信じ切れるか?

 

正義潔癖症のまま生きるのは大変ゾ。

世界は薄汚れ、お偉方のいる空の上は腐臭がする。 青1つ無い曇空に劣るドブカス色の下、雨の代わりにゴミが降ってくると考えた事はあるか?

貴様らの生きる世界から見上げる青藍の空は、誰かが貼り付けたテクスチャではないかと疑問に思った事はあるか?

 

そんな世界に活かされる。

それを是とするか否とするか。

何処まで自覚し、容認して生きれるか?

 

まっ、他人の思想など興味無いね。

とりまSRT閉鎖は都合が良いので放置だ。

 

精々、今のうちに臭い正義を振り翳すが良い。

その分、現実と理想の狭間で苦しむ姿をワシは堪能できるのだからなぁ。

 

おお、哀れ哀れ。

 

だが潰れる前に、少しは役に立って貰おう。

 

 

「SRTの精鋭部隊、FOX小隊。 そのデータを収集し、我がPMCの糧とする」

 

 

歴史通りならば、第2工場に間も無くFOX小隊が突入してくる筈だ。

それを利用する。 そして一般傭兵や我が特殊部隊SOFの底上げの土台となって貰う。

 

 

「そうでなくても、ユキノ率いる狐共の判断……確認しておきたいしな」

 

 

まだ2年、されど既に精鋭であろうし。

まだ学園も閉鎖しておらず、純粋な正義の理念を、それぞれの小さな胸に抱いて戦えていて士気も高い。

 

……故に、閉鎖された来年。

カヤ防衛室長の駒にされ、悪徳カイザーと共にし、テロリスト化した際のユキノのハイライトオフ気味の目で飯ウマだ。

 

 

「汚れ、堕ちていく前の君達を見せてくれ」

 

 

事件は現場で起きる。

インダストリー第2工場で、子狐を待つ。

 

 

 

───────────────────

 

 

 

SRT特殊学園2年生。

FOX1ことユキノ率いる精鋭「FOX小隊」はこの日、カイザーインダストリー第2工場の強制調査に踏み切った。

 

条例違反となる大量破壊兵器……弾道サーモバリック弾が開発されているという匿名の通報を受けたのが始まりだ。

諜報を担うFOX2のニコが突入に足る情報を収集。 盾持ちのFOX3がポイントマン、対物ライフルの狙撃手FOX4は施設外から俯瞰、臨機応変に後方支援する手筈となった。

 

迅速かつ丁寧に、しかし大胆に。

通常は出回っていない強力無慈悲な武器装備と、それらを扱う技量でもってして、制圧はものの3分で出来る……筈だった。

 

 

「……どういう事だ?」

 

 

しかしいざ突入して、ユキノは困惑した。

情報を集め、内部の構造や警備状況、その武器装備に至るまで完璧に調べ上げた。

なのに工場内は蛻の空。 閑散とし、警備はおらず、肝心のサーモバリック弾も確認できなかった。

サーマルゴーグルで熱源探知を試みるも、壊された機械や、それら残骸から発せられる余熱を視覚情報として投影するばかりである。

 

 

「まだ熱を帯びてる。 慌てて逃げたみたい」

 

「ちょっと! じゃあ目標はどこいったの?」

 

 

ニコとクルミが周囲を警戒。

どこかで情報が漏れたのか。 いや、未来予知でも出来ない限り、ここまで動けるものか。

心当たりはないが、罠の可能性が現実味を帯びてきて、ユキノは撤退命令を出そうとした、その時。

 

 

「ッ! 工場の真上! 何か落ちてくる!」

 

 

外にいたオトギが警告。

それとほぼ同時、質量ある物体が轟音と共に屋根を突き破る。

それは狙ったように小隊の前に落下。 砂埃を立て、やがて晴れた先には。

 

 

「ッ!?」

 

 

地面に突き刺さる、小さな翼を付けた棒状の物体。 ミサイルの形状をしたソレからは、ピッピッピッ……と電子音を奏でている。

サーモバリック弾と思わしき物。 それかこのタイミングだろう、罠には違いない。

退避するか、爆弾の解除を試みるか。 一瞬で判断をつけ、指示を出そうとするユキノだったが。

 

 

「フハハハ! 聞こえるかね"泥棒"狐諸君!」

 

 

ミサイルからは、如何にも悪党な声が響いた。

ノイズ混じり。 どうやら録音されたテープが再生、スピーカーで垂れ流しているらしかった。

しかし言及の仕方などから、我々の来訪は想定済みなのは明白だ。

 

 

「我が社の対ビナー装備を奪おうという賊の情報が入ってなぁ。 ここは放棄したよ」

 

「なんだと?」

 

 

そういう設定にする事で、難を逃れる気だろう。 付き合う気は無い。

だが対ビナーとは。 アビドス砂漠で出没するという、謎の白蛇ロボットと聞くが。

アビドスは実質カイザーPMCの支配圏。 そこと関わりがあるというのは、この工場もPMCと繋がりがあるということ。

ならば、今喋っている者はその関係者、重役……カイザーPMC理事か?

 

 

「だが折角来てくれたのだ。 玩具で遊んであげよう、楽しんでいってくれたまえよ」

 

「ふざけないで!」

 

「目の前で床に突き刺さるミサイルは、対ビナー用サーモバリック弾のモックアップだ。 だが火薬を充填していてな、爆発すればまぁ、工場くらいは吹き飛ぶ威力はある。 3分間待ってやる。 逃げても良いが、それで周辺に被害が出たとしたら、それは君達のせいになる」

 

「人質のつもりなのね」

 

「汚い。 さすが大人、やる事が汚い」

 

「フハハハ! 仮にも君達に善良な精神とやらがあるのなら、悪足掻きしてみるが良い。 世間様からの覚えも良くなるかもなぁ! さぁ答えを聞こう!」

 

「……爆弾を解体する。 ブラフだと断じるには情報が足りない。 かかれ」

 

 

結局、選んだ道はソレだった。

当初の目的は失敗に終わったとしても、意気消沈する暇は我々には無い。

罠だったとしても、それを解体、分析すれば目標に近付けるかも知れない。

正義とは、1度や2度で挫けるものじゃない。 それを示す為に、私たちは逃げる訳にはいかないんだ。

 

 

 

・・・

 

 

 

「偽物よ、これ」

 

「……そうか」

 

 

サーモバリック弾のモックアップとやらの解体を試みたところ、あまりにも拍子抜けな結末となった。

 

火薬や危険な物質なんて積んでいなかった。

では3分後に何が起きるかといえば「買い物はカイザー社」という、宣伝ビラをつけた風船が上がるというだけである。

 

なんてことだ。 ここまで馬鹿にされるとは。

 

 

「完全に遊ばれたね、私たち」

 

「……ごめんなさい。 私がもっと情報を集められていれば、こんな事には」

 

「FOX2に落ち度は無い。 ここまで回りくどい真似をしてくる相手だ。 情報そのものが、罠だったのかもな……」

 

 

何処かでミスをしたのだろうか。

いや、今は信じる道を、正義を踏み躙られた気分で、感情が表に出てしまいそうだ。

 

 

「これ見て頂戴」

 

 

クルミが、偽ミサイルからチップを抜き出した。

解析に回せば、直ぐにもデータが出てくる。

 

 

「本物のサーモバリック弾の諸元表か」

 

「条例違反として告発するには、十分過ぎるわ」

 

「アビドスに移送されたってあるよ」

 

「でも、なんで不利になる証拠をわざわざ残していったの?」

 

 

馬鹿にしてくると思えば、此方の意図を汲み取るような行為に、再び困惑する面々。

とにかく動くにも、これを上に報告しつつ、次の指示を待たねばならない。

 

 

「この騒ぎを聞きつけたクロノス報道部への対応もしなくてはな」

 

 

カイザーPMC理事。

貴方は、我々に何を望んでいるんだ?




後書き
堂々巡り感が否めず。
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