ワシの思惑通り、アビドスは騒ぎとなった。
サーモバリック騒動は広がりを見せ、注目は工場からアビドスへと移り変わった。
クロノス報道部が現地のアビドス高校やSRTの大元、連邦生徒会長に直撃インタビューを試みたり、その対応にそれぞれが追われていっておる。
早速というか、現アビドス生徒会長のホシノからは「馬鹿、阿保、鉄屑」「偽善者」だの言われ、挙げ句の果てに「汚い大人」と罵倒された。
連邦生徒会長からは「何がしたいのですか」だ。
ド直球過ぎてオイルの涙がで、でますよ……。
だがワシ、カイザーPMC理事は挫けない!
着実にここまで育て上げ、ワシの城ともホシノ虐待おじさん部屋ともなったアビドスをヘイどうぞと手放して堪るか!
それに、やらない善よりやる偽善。
人の為の善と書いて偽善ともいう。
サーモバリック弾は条例違反では無いという主張のもと、実際の使用用途及び威力を見て貰い、判断を連邦生徒会に投げておく。
当の生徒会からは、そもそも使うな現物見せろ、話はそれからだとせがまれてもいるが。
大人で企業様の第2工場を攻撃するテロ組織を信用するとか無理と言い返した。
すると向こうは慌てて撤退した事、偽物のミサイルや証拠データの件を持ち出してきたが「何か問題?」で通す。
通常は無理だが、目的のサーモバリック弾が工場に無かった為に動かぬ証拠を取り逃した事、そのカイザーが「いや別にソレ違法物ちゃうねん。 どデカい蛇な対ビナー用兵器やで、実際使う所見せたるわ」と苦し紛れにも息巻き、されど自らクロノス報道部を呼び寄せて正当性を主張、騒ぎを大きくした為に、最早隠密に確保、主犯の逮捕や罰則刑を課すのは困難となってしまった。
こうなると、後はアビドスで現物の所在を確認し、使用される前に無力化するのが考えられるが……だからこそ、人をワイワイと呼び集めて天然の監視カメラを張り巡らし、隠密行動も、その逆に荒っぽい騒ぎも起こせなくしておいた。
コソコソしても、銃や爆弾で強行突破しても人の目につき、ましてや報道機関のカメラの前となれば、キヴォトス中に知れ渡り、SRTの名に泥を塗る事になる。
それは生徒会長もFOX小隊も望むまい。
このままサーモバリック弾を見つける事が出来ず、出来ても堂々と出されては迂闊に近寄れまいて。
指を咥えて砂漠でドカンとイクのを特等席で見ておるが良いわ!
勿論、世間様はサーモバリック弾の存在に懐疑的、批難の声も上げるだろう。
だが実際に害獣駆除……対ビナーとして使用されたなら、特例なら良いのではという雰囲気も生まれてくる。
こうした動きは、諸君にも覚えがある筈だ。
猛獣の熊が人里に降りてきて、対策に追われる……なんてニュースは毎年の様に聞いているのではないかね?
アレも安全圏から「熊さん可哀想」とか「熊だって生きてる」とか好き勝手に言う奴がいるが、実際に被害に遭い、畑や家を荒らされるだけでなく、喰い殺されたり、生き延びても一生モノの傷、後遺症を抱えるという悲惨な目に遭っている現地民含め、大半は駆除に賛成の方向だろう。
……来年のゲヘナ辺りは、まぁ、1人の幼女が反対でもしようものなら、全力で妨害しに来そうではあるが。
その意味でも今年にやる意義はあるとする。
兎に角。
その例に倣い、今回の件をナイナイにしつつ、アビドスの名を連邦生徒会やキヴォトス中に向けて覚えをめでたくするのだよ。
サーモバリック使用予定日時まで時間はある。
その間にも、報道部や野次馬がアビドスで宿泊し、現地民にアレコレと取材する筈だ。
するとあら不思議、カイザーに好意的な意見が多く、実際にアビドスは復興しているではありませんか。
そんなアビドスに害成す可能性があるビナーは正に害獣であり、市民は日々を震えて過ごしています、的な報道でもされたら、世論は「ビナーってナニ?」となり、段々その正体がヤベェデカさのアイツだと知り、通常兵器ではどうにもならないゴ◯ラな奴という扱いをされ始め、ならサーモバリック使用もやむなしか、という流れになる。
そうなれば、連邦生徒会長やSRTといえども、絶対悪ではない相手を成敗できたりはしない。 この件に関わった役員もいるし、世間からバッシングされたくないしな。
ここは変に攻撃するよりも、復興著しいアビドスと仲良くし、己の組織評価へ繋げ、人員や資金を融通してくれるよう交渉するのが吉と判断する筈だ。
「正義厨の狐共も、少しは考える切掛になるだろうて」
失望するのは勝手だが、面倒は起こしてくれるなよ。
……そう。 武装蜂起、テロ行為のような、な。