降格回避√カイザーの野望   作:ハヤモ

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前書き
プレッシャーやモチベ、ネタや書き方に詰まって、預言者の合体ロボを見たり、エリカを見たり、な◯う系のニュースやレビュー、その設定や台詞回しへの批判解説を見て参考の1つにしてみたり…


サーモバリック弾、発射/狐の敗北

弾道サーモバリック弾……そのミサイルが専用トレーラーに載り、大通りを徐行する。

その前後側面には警護の随伴兵がおり、更には戦車と二足歩行兵器までが護衛に参加しておる。

道中のビルには狙撃兵も配置済。 赤冬的な軍事パレードといえる様相となり、多くの市民と生徒を驚かせ、様々な表情で道中が彩られた。

 

好意的な声、反抗的な声。

不安気な声もいれば、期待する声もあった。

クロノスの無機質なレンズ越し、それらがミサイルと共に映し出され、キヴォトス中に放映されていく。

 

中には───。

 

 

「経済的威圧を始め、土地買収、自治区侵犯、軍事的威嚇、人質外交、違法取引、密輸などをしている犯罪企業カイザーを許すな!」

 

「「許すなー!」」

 

「アビドス高校を媒介とし政治浸透での情報操作や世論誘導による社会的不安を煽り、自治区の傀儡化を図り、連邦生徒会の弱体化戦略を長年とってきた。 そんな悪徳カイザーを許すな!」

 

「「許すなー!」」

 

「違法気化爆弾は建物を壊すだけでなく、衝撃波や熱波、酸欠を引き起こし、ヘイローが壊れる可能性のある非人道兵器だ、許すな!」

 

「「許すなー!」」

 

 

やたら具体的で元気溌剌なデモ隊もいた。

ヘルメットを被り、プラカードを振り回しとる。

レッドウィンターの工務部、デモ好きなミノリでも出張してきたのか?

てかサーモバリック弾そのものは、ナニを今更……ここはキヴォトスゾ?

改造品が危険といえば、一体どれだけの違法物が闇市や路地裏で扱われていることか。

だが貴様ら生徒は神秘……ヘイローで担保されておる。 ワシらと違って幾許か安全圏に暮らすブルジョワな得意(特異)様がナニをほざくのか。

 

だが止まらんよ。 1度流れ出した勢いは……!

 

 

「フハハハ! それすらも祭りを盛り上げるスパイスよ! もっと泣け、叫べ、見て笑え! 愚民が騒ぐほど、SRTの狐共は手を出せまい!」

 

 

良いぞぉ、愚民共よ! 狐共にミサイルは「すっぱいぶどう」と思わせ諦めさせるのだ!

 

このまま市街地の外、砂漠に出たら即発射ポイントだ。 ビナーがいそうな場所に発射、その威力をお披露目する。

それでビナーが沈黙すれば儲け物だが、目的は特例を認めさせる事であるし、野次馬の多くもビナーそっちのけで、その発射や爆発を見たい者が大半だろう。

 

アレだ。 サバイバルホラー系映画で、終始殆どが怪物優位であり、登場人物が次々やられるのがあるが、視聴者側はそれで良いワケだ。

何故なら、見てる側は人間がどう勝つかよりも、怪物にどのようにやられるかを期待しているからである。

勿論、そこからの逆転劇とか、知恵の絞り方とか、絶望の表情や必死の表情を見て楽しむ者もいるだろうが。

需要と供給のバランス、何方がより利益が出るか舵を切る必要がある。

つまり、ここでも多数派が優先されるのだよ。

 

客がナニを見たがっているか。

それを把握、認識し、ショーを提供してやろうというのだ。

実に利益を追求する企業らしい、素晴らしい思想だと思わんかね?

 

 

「理事、弾道サーモバリック弾、目標地点に到達しました。 いつでも撃てます」

 

 

ジェネラルから連絡が来た。

おお、もうか。 思考回路で独り言を呟いている内にあっという間だったわ。

 

 

「よろしい。 神仏照覧……! 発射しろ!」

 

「はっ! サーモバリック弾、撃てッ!」

 

 

ジェネラルが叫んだ、刹那。

 

轟音と共に白線が青藍へと飛び上がり、空が白い畝で耕されていった。

それは脱色した虹のように、曲線を高速で描くと、やがて遠くで火球を生み出した。

 

 

「フハハハ! フワーハッハッハッ!!」

 

 

大火、烈火、業火、劫火の大地……!

 

 

「圧倒的じゃないか、我が軍は!!」

 

 

ミニチュアの太陽はみるみる膨れ上がり、空にヘイローのような、空気の衝撃波によるリングを広範囲に広げていく。

同時に衝撃波が市街地に到達、ガタガタと立て付けの悪い家が揺れ動き、上空の報道機関のヘリがよろけ、砂塵が砂嵐のように覆い被さっていく。

空気、そして砂の津波。 市街地を呑み込まないよう配慮しなければ、瞬く間に砂の下であった。

 

 

「やはり最後に笑うのは勝者であるワシ、カイザーPMC理事だぁ! SRT、連邦生徒会! ワシの! ワシの勝ちだぁ!!」

 

 

声も通らない強風と轟音は、ほんの刹那的であったが、爆心地は未だ火球の名残。

陽炎が揺れ、ともすれば蜃気楼の様であった。

それはひと時の、夏の夢───。

 

 

「ところがどっこい、ユメじゃない!」

 

「理事さん、呼んだかな?」

 

「呼んどらん! というか存在を忘れとった!」

 

「ひぃん!? 理事さん酷いよぉ!?」

 

 

これもまた、ワシなりの青春よな。

 

 

 

───────────────────

 

 

 

「これが目標だった威力か」

 

 

野次馬や、クロノスが目を白黒させる中。

FOX小隊長、七度ユキノは爆心地を見て呟く。

爆風で髪が靡く横顔……その顔は固く変わらない。 元々表情の起伏が無い生徒だが、機微が無い訳では無い。

現に僅かに拳をギュッと握り、任務失敗、敗北を悔やんでいた。

 

サーモバリックの使用……。

害獣、ビナーによる市街地への被害を懸念し、先んじて駆除をした……それが表向きの理由だ。

だが恐らくは、軍事利用が目的だった筈だ。 工場に突入された事で、急遽言い訳の為に用意された寸劇……アビドス劇場、それが目前の正体だと勘繰った。

 

しかし疑わしきは罰せず。

何より……連邦生徒会長からの、当初の命令であった、確たる証拠の押収には失敗した。

気を遣われ、督戦による状況確認に変更されたものの、ユキノ達は納得出来ず、信じる正義の為、出来る限り不正の証拠を集めようと動いた。

そうすれば、サーモバリックそのものの確保は出来ずとも、捜査継続の根拠になり、次へ繋がると考えたからだ。

 

この自発的な行動は、来年の「道具は道具らしく」という冷血かつ合理的な思考に陥る前だからこそ起こせたものである。

部隊が勝手に動くのは御法度に思えるが、この件に捜査権を与えられている内はと解釈、まだ自らの正義を信じているからこそだった。

 

だがそれすらも上手くいかなかった。

時間が無かったのもあるが、PMC理事が騒ぎ立て、報道機関含め、人を沢山集めたのが痛かった。

人混みという、無数の監視カメラ兼世論の縮図、同時に守るべき人々が内混ぜとなったショーケース……その檻の中では、迂闊な行動は出来ず、いつも以上に慎重にならざるを得ない。

目立つ訳にはいかず、武器装備で怪しい施設に片っ端から土足で踏み荒らすような、強行突破なんてもっての他。

連邦生徒会に、SRTに泥を塗る真似はできない。

 

そうこうしている内に、サーモバリック弾が運搬され、そして起爆……今に至る。

その威力は凄まじく、条例違反云々という理屈ではなく、本能的な恐怖を人々に与えた事だろう。

 

戦場は、銃や爆弾を使用したものから、会議室での議論に移り変わる。

果たしてビナー退治に、その爆弾は妥当なのか過剰なのか。 偉い人達がどう判断をつけるのか。

何にせよ、最早SRTの任務ではなかった。

 

 

「FOX小隊、撤退する」

 

 

踵を返す狐達。

しかし、その正義の炎は尽きちゃいない。

 

 

「FOXは、SRTは2度と負けない」

 

 

来年、その想いは打ち砕かれるのか。

それとも───。

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