降格回避√カイザーの野望   作:ハヤモ

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SRTの失望

連邦生徒会の決断には、多くの哀楽があった。

 

賛否両論だが、先ずは大きな脅威が現れた際、銃の次に繋がる手段が取れるという安心感が見て取れた。

皆の記憶でいうと、獣被害拡大に伴い規制が緩和され、緊急時は各行政の判断での銃使用が許可された……等であろう。

 

一方、企業に忖度して市民を蔑ろにしたという冷たい意見もある。

急遽決められた法律故、懐疑的な意見も少なく無いのだ。 予想できた事ではあるが。

これもまた、覚えがあるかも知れない。

とある食べ物を販売する企業が食中毒か何かの問題を起こしたが、その企業のみ咎めるのではなく、今後その食べ物は、民間であれ許可なく作ってはならんという市民を巻き添えにした新たな法律が出来た話などだ。

この部分だけでは、政治家が賄賂や権力などの忖度で、企業贔屓しているのではと受け取られても仕方なさそうな話が、過去に起きているのである。

 

拡大解釈出来る可能性を危惧する声もあった。

 

特例という部分に関し、細かく定められていない為に好き勝手できる危険性を孕んでいるという指摘だ。

例えばだが、テロリスト集団アリウスが大規模なテロを計画している中、自治区の場所が分かったとしよう。

するとテロ被害を阻止するとして、自治区にサーモバリックや、準じた大量破壊兵器を使用、殺られる前に殺れの精神でテロリストを根絶やしにするという短絡的な行為が容認されるかも知れないのである。

生命の如何、倫理観もだが、この時に無関係な市民や建物が巻き込まれるのも仕方ない犠牲として割り切られてしまう可能性があり、そうなると市民側としては堪ったものではない。

 

拡大解釈は良くある話であるが、これがエスカレート、無理矢理なこじつけになってくると、益々人々の反感を買い易い話となってこよう。

諸君の記憶だと「ちくわ銃」がそうだろうか。

銃としての機能が備わっていない装置でも、特殊な弾を作れば撃てるから銃刀法違反とする……。

その特殊弾は筒状のもの、それこそ最悪、ちくわでも撃てるのではということで、揶揄される形で一部で知れた話……だったか?

誰がそこまで特殊な弾を作れるのか、そんな事言ったら何でも駄目になるじゃん的に、批難も少なくなかったか。

 

他にも曖昧な法律はあると思うが、何であれ解釈次第でどうとでも出来る部分があり、しばしば批難の的にされている。

今回もその1例になってしまったという訳だ。

 

本当なら曖昧さ回避の為、議論を重ねて詳細を決め、ブラッシュアップするべきもの。

しかし今回、法案が急がれたのは、連邦生徒会内での汚職の隠蔽、アビドスとカイザーの好感度稼ぎをして、その人員と資金を得る事が優先された結果だった。

 

その真意を知る者、察する者は少なくない。

ユメは表向きの理由にアッサリ納得したが、ホシノは連邦生徒会への失望を深めてしまう。

 

 

「やったねホシノちゃん! 連邦生徒会が認めてくれたって!」

 

「今まで助けてくれなかったのに、復興してきたら手の平を返すなんて、虫の良い……」

 

 

元々助けてくれない連邦生徒会には失望しており、襲撃すら考えた事もある。

しかし今回、利権が絡んだ途端に手を出してきたから、その心情は察するものがある。

それでも純真無垢なユメが喜んでいると知れば、憎悪が薄まってしまうのも事実。

何より今のアビドスには守るべき生徒と市民が多くいる。 私怨で愛する者や土地を危険に晒す訳にはいかず、自制するのであった。

 

だがアビドスとは別に失望する者達もいた。

SRT特殊学園の生徒達である。

 

 

「えぇ……そこ認めちゃうんだ?」

 

「連邦生徒会は何を考えているの?」

 

「私たちが最初に上手く収めていれば……」

 

 

オトギ、クルミ、ニコの三者三様。

FOX小隊の面々はショックを受けていた。

 

連邦生徒会長により創設され、サーモバリック無力化の任務を与えられておきながら、結末がこれではあんまりだ。

心のどこかでは、きっと超人と呼ばれる連邦生徒会長なら、正義を貫いて断固抵抗の意思を見せてくれる……そう思ったのに。

 

裏切られた。

 

いや、裏切ったのは……"キツネ"だ。

 

 

「任務を失敗した、その弊害か」

 

 

ユキノの、珍しく弱々しい言葉。

皆は顔を俯いた。

 

FOXが任務をしくじったから。

そう思う者もまた、少なくない。

 

犬も歩けば棒に当たる。 猿も木から落ちる……SRTの最優秀部隊であれ失敗はある。

失敗は成功のもと……だけど失敗を取り返せない事は多い。

 

その延長線に世界が、人生が構築される。

法案もその1つであり、今後、それが履行された世界で自分含めた全員が生きる事となる。

 

その法で、もしかしたら誰かが救われるかも知れない。 逆に苦しむかも知れない。

なんにせよ、間接的にキヴォトスに傷跡を残してしまった負い目は、直ぐには癒えそうにない。

 

故に、汚名を注げるならば……。

自制が緩み、そう考えてしまうのは、まだ彼女達が子供……生徒だからだろう。

 

───罪の意識から動く狐の話がある。

だがその狐が最後どうなるのか……犯した罪は決して消える事はない。

いくら償おうとしても、その報いはきっと受ける事になる。

 

本来、贖罪の意識を抱えた任務とは、来年以降に行われるが。

カイザーPMC理事の所為で、どうにも早くに訪れてしまったようだ。

 

 

「正式に捜査権が無くなった訳ではない」

 

 

ユキノは1人、アビドスに戻る。

部下を巻き込む訳にはいかない。

 

責任は隊長である私にある。

万が一の責任追及は、私だけで良い。

 

それに戦闘が任務ではない。

 

ただ……ただ聞きたいのだ。

騒ぎの渦中、その中心にいた本人に。

 

汚い大人は嫌いだ。

だが迷いを断つ、そのトリガーになり得る。

 

カイザーPMC理事は断罪の対象か否か。

 

贖罪の意識もあってか、それとも。

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