誤りや整合性の有無が怪しい場面もあり。
「次は、アビドスのオーパーツか」
ワシ、複数の発掘現場から寄越される書類と睨めっこ、財政がどうの補給がどうのと確認していく。
細かい所は部下や部署がやるし、その為の予算は本部から潤沢に出ている。
書面に残らない多少の不備の補填や揉み消しをしたい時はワシの所のPMCや、カイザーローンから資金を回したり、ポケットマネーで始末できる。
そんな余裕がある中、砂に埋もれたアビドスの本校を掘り返したりとオーパーツ探しをしているものの……ビジョンで見た感じだと見つかるのは約2年後の予定。
具体的に見つかる場所までは思い浮かばなかった……広大な砂漠のどこか、それが分かれば時間と予算を抑えられたものを。
そもそも探しているオーパーツ…… ウトナピシュティムの本船とかいう、古代人の開発した巨大演算装置を砂の下から掘り出したところで、我々に扱える物かは不明だ。
というかソレ、アビドスや科学を信奉しているミレニアムの生徒達にパクられるビジョンが浮かんどるんだけど。
ワシの時間と予算、発掘の苦労がパァに……やはり許せん、許せんぞ小鳥遊ホシノ!
その意味でもホシノを苦しめ、行動を縛る鍵となるユメを掌握する必要があったのだよ(ガバ理論)。
フハハハ! これで邪魔する者は消えた!
黒服が契約云々でホルス寄越しなさいと言って来ても、そこまでするのは契約外だから、何か見返り寄越せとふっかけて、のらりくらりとはぐらかす。
だが、のらくらとされるのはワシ側もだったと直ぐ気付かされた。 邪魔する者はおらずとも「モノ」がいた事を失念していたのだ。
ワシ、アビドス砂漠にある複数の発掘現場から交戦報告書を送られてきてるのよね、なんかバカデカい白蛇と鯨を合体させたような戦闘ロボットが作業妨害してくるとかで。
……アイツだ。
ゲ◯竜というか白蛇、ビナーだ。
口から熱線、胴体からミサイルを飛ばし、開発経緯や目的が不明の、生物のように自立してアビドスに棲まう謎多き兵器である。
アレも古代兵器の1種らしいが詳細不明だ。
「ああ、デカグラマトンの3番目の預言者となるモノよ。 ナニ故に暴れるのか」
つい呟くも、別段驚きはない。
それによる妨害と被害、対策に追われるのみ。
そんなお蛇魔なビナーの確認は数十年前と古く、アビドス砂漠周辺を拠点としている事は分かっている。
その砂漠で発掘作業をする都合、度々襲撃され、警備のカイザーPMCと交戦、その度にかなりの被害を出すばかりで解決の目処は立っていない。
なにぶん特性が厄介極まる。 砂の中を高速で移動し、口から岩を溶かす熱線を吐くわ、胴体からミサイルを飛ばすわ、火力、防御、機動力と高水準、砂の中を移動するのもあって既存の兵器での対処が困難で、大隊を編成して対策を検討するも、討伐は未だ成功していない。
アレはアレで手に入ればワシの手柄に……いや手懐けられるとは思っていないが、動力源や補給はどうしているんだ……。
理解を通じた結合、違いを痛感する静観の理解者という異名を持つが、開発経緯や目的は一切不明で謎だらけ。
少し先の未来にて超高性能AIデカグラマトンに呼応、第3のセフィラ(3番目の預言者)、部下みたいな存在となるので、自我、知性はあるものと仮定するにしても……。
「ユメ。 ビナーについて知っている事は?」
突破口はないか、ここは地元民を頼ろう。
ワシの側で"宿題"をしている企業戦士服、黒スーツを着たユメに尋ねる。
バイトみたいなモンとはいえ、社内やワシの側をうろうろする以上、相応の格好をさせとるが……スーツは豊満な胸で虐待されて可哀想、ボタンがいつ弾ける事か。
さても、本人はいつも通り危機感の無い表情で、間延びして聞き返して来た。 相手がワシじゃなかったら態度を指摘してセクハラしとるわい。
「びなー?」
「……砂漠にいるデカい蛇型ロボットだ」
「うーん、いるのを知っているくらいだよ」
「そうかそうか、お前はそういう奴だったよ」
さすがはユメだ、貴様はお飾りがお似合いよ。
「で、でも他の事なら役立てるかも!」
「期待はせんよ」
「ひぃん……」
涙目になるユメ。 メンタルもクソ雑魚ナメクジ……に毛が生えた程度だが、簡単に涙目になり項垂れるから、虐め甲斐がある。
だがそれ以上に、コイツを盾にしてホシノのような強情な奴らの頭を踏ん付ける事こそ真の価値が……。
「いや待てよ」
「ふぇ?」
ワシ思う。 故にワシ有り。
そういやビジョンにあったなと。 アビドスとゲヘナの雷帝との共同作品、列車砲な巨大砲台が。
「シェマタ、か」
「……!」
シェマタ。 かつてのアビドス生徒会長、鉄拳政治のシェマタの名を冠したオーバーテクノロジーの大砲。
生徒会の谷だかなんだか、忘れ去られた奥地に放置されている超兵器だ。 太陽と同等のプラズマを発射できるというトンデモ兵器らしい。
まぁ実際は未完成、使用できるかは怪しいが、なにせキヴォトス全土を脅威に晒した雷帝との共同作品だ、鉄屑という訳でもあるまい。
その土地や兵器の権利とやらは、現在のアビドス生徒会長のユメにある筈。
細かいトコの書類は、何故かハイランダー鉄道学園の倉庫に放置され、これまた2年後に発見され、大人やホシノを巻き込む騒ぎになるのだが……カイザーとしては先んじて手に入れて損はない。
が、いや待てよ、と全ワシが止めにきた。
かの未完成品にはユメが関わっているというのを餌に、地下生活者とかいう名前からして引きニートな元ゲマトリアがホシノを釣って反転させ、ホシノ本人と周囲、そしてキヴォトスを危機に陥れるのよな。
あとハイランダーの幹部、スオウが謎に立ち塞がり、大砲使ってアビドスを吹き飛ばすとか脅したりする。
彼女に限らず、ホシノや大人らの都合の良い動きは、地下生活者の意識誘導の産物なのだろうが……この恐ろしい能力を出し抜く為に、敢えて撒き餌として泳がせておくのも手か。
しかし完全放置プレイも怖い。 といって変に動いて地下生活者に睨まれて、チーターはBANする感覚で事故に見せかけた処分をされても怖い。
そうでなくても、今のゲヘナの情勢は不明だ。 雷帝の残滓がまだ跋扈しているようなら、それらに攻撃される恐れも考えられる。
……色々と詰んどるなぁ。
「それでもだな……いつも通り偶然を装って接近する方法を模索しよう。 "埋蔵金"のありかはワシ知らんから2年後を待つしかないとしても、出来る事はある筈だからな」
「理事さん?」
「……現地の近くまで線路が敷かれていたような光景が見える見える……アビドスの大陸横断鉄道の1線か。 であれば、かつて本社を置いていたセイントネフティスが敷設したものか。 そこと仲の良いハイランダーと仲良くなっておくのも手だな、そして路線図の詳細を得たり、現地調査と言い訳して、現地に接近、確保する……」
「ええと、私に何かできないかな?」
「あるぞ。 ハイランダー鉄道学園に連絡して、向こうの倉庫に放置されとるであろうアビドスの書類、権利書を回収するんだ。 貴様の世代が言うぶんには有効だろう。 そうやって貴様にも後々の後輩が苦労しないように出来る事はある筈だ」
「よく分からないけど、分かったよ!」
無条件の親愛を示すユメは、特に疑問に思うでもなく、ほわほわとワシの顎のままに漂った。
邪魔さえしなければ良い。 鶏肋程度には役立つとも思う。 少なくともホシノ避けになる。
「列車砲が見つかったら、来年辺りからゲヘナの万魔殿と風紀委員会に連絡を入れてやるか。 雷帝の遺産となれば、無視できない筈だ」
こうしてゲヘナとも接点ができるのは、良い事なのかも知れない。 向こうの心境は知らんけど。
なんか今の1年の悪魔連中、雷帝に酷い目に遭わせられたのか、雷帝が卒業する来年以降、雷帝の遺産、残滓を破壊するようになるんだよな。
随分と勿体無い事をするが、それで敵対を防げるなら良い事だろう。 そういうことにしておく。
こうしてワシなりに動ける時に動いた。
ホシノやビナーの襲撃にビクビクしながら、オーパーツを探しつつ、雷帝の遺産も可能なら確保しなきゃならん。
それらを餌にしてワシの安全圏を拡大、降格を防ぐセーフネットワークを構築せねば。
色々やらなきゃならんのが辛いところだが。
「いやしかし、アビドスって割と魔境よな?」
それはそう。