ここ学園都市キヴォトスでは、カイザーコーポレーションしか会社が無い……なんて事は無い。
商店街に居並ぶ個人経営の本屋や食堂、クレープ屋さんやラーメン屋などキッチンカーや屋台で販売している人達、銃社会ならではな銃火器の販売や整備請負、或いは何かしらの小売店などを挙げればキリがない。
諸君の知るものであれば……モモフレンズというキャラクターブランドを扱う企業や、廉価食品を販売するニャオフーズといった生活を支える会社に覚えがあるのでないだろうか?
後はネットのセキュリティソフトウェア部門、最新デジタル機器などの技術はミレニアムサイエンススクールが開発、特許を持ち、インフラや経営を支えている。
その辺は学生でありながら大人以上の影響力を持つと言えよう。
そうしたライバルが犇く様々な業界に参入、総合的に最も大きいのがウチらカイザーだ。
と、自負はあるものの。 限られた客人口、パイの奪い合いで全てウチのモンだとはいかないのが世の常、商売の世界。
特にライバルは『セイントネフティス』か。
我々と同じように様々な分野に手を出している資本主義的分業をする財閥、コンツェルンという奴だ。
元はアビドスに本社を構え、砂嵐により撤退するも、他所に移転して大閥としての威厳を維持している生意気企業だ。
アビドスにいた時は現地での鉄道経営が転んでしまい大赤字、雇用の喪失も合わさり、アビドスの衰退を早めてしまった戦犯企業の癖にな?
てか、気象の厳しさなどで地形が常に変動するような砂漠に鉄道を敷設するというのも中々ヤバい事をしているかに思える。
見通しが甘いわぁ! と笑いたいところだが、昔は今ほど砂の侵食が酷くなかったからねしょうがないね、オアシスも当時は枯れきってなかったであろうし、己の不幸を呪うが良いわ。
まっ、理由がなんであれ、ネフティスが消えたお陰で、ワシらが介入し易く助かるが。
そんな戦犯ネフティスがいた頃の残滓として、放置されたレールや車両が砂漠に埋もれ、或いは転がっている。
中には整備すればまだ使える路線もあるが、寂れたアビドスに乗り降りする利用客がいないし需要が無い……なんて事は無い。
発掘調査隊用、PMCの人員、物資輸送用の貨物路線として使える。
なのでネフティスに連絡、権利関係を確認。
『お電話ありがとうございます。 セイントネフティスサポートセンターです』
「ワシ、カイザー理事だ。 アビドスにある大陸鉄道の権利関係を確認したい」
『担当の者に代わります。 暫くお待ち下さい……お電話代わりました───あのですね、土地はカイザーが購入されたとの事ですが、残置物は一応ワタクシ共のモノでして……』
……は? ナニほざいてんだオメー。
ビジネスしている以上、金を毟れるなら毟る精神は分かるが、相手が誰か分かっとる?
あとな法律の延長線上にある権利関係の話をして、そこに持っていこうとするとは、お主もワルよのぉ?(NOT褒め言葉)
なのでウチが購入した砂漠に不法投棄されていた御宅らのレールや車両の撤去費用どうしてくれるんじゃボケと捲し立てますわ。
「その辺も承知の上で土地の権利を放棄して、で、いざワシら他社、カイザーが掃除したり再利用するとなって、いやそれはってナニ様かね、それなら最初から手放すなよ、アビドスを捨てて他所に逃げた企業様が今になってアレコレ口出しとか舐めとるんかワレェ!?」
『決してそのような事はありません。 しかし先にお電話したのは其方で───』
「後で連邦法がどうのと弁護人やメディアを間に挟んで、公開叱咤の如くネチネチ言われるのが嫌だからワシ電話したの! 言葉の意味分かっとるか? アンダスタンド!?」
『すみません、協議の上で再び連絡を』
「まだほざく余裕があるらしいな。 そうか、キヴォトスの学生式の挨拶じゃなきゃ理解せぬか。 ならばPMCを送って派手に……」
『分かりました!? ご自由にどうぞ!?』
「それが聞きたかった……貴様の英断をもぅと早くに聞きたかったぞ。 まぁお互い、個人が企業の意志かのように振る舞ったのは忘れよう。 ライバル企業同士とはいえ、今後も良好な関係を築きたいものだな?」
『は、はいぃぃ……』
キヴォトス式にオラァと捲し立てたところ、快く了承してくれました。
この手に限る。 やはり暴力が全てを解決する!
ついでに撤去や利用にあたり、粗大ゴミの位置を把握したいので路線図も寄越せと勢いで言えば寄越してくれた。
「ワシがPMCを動かせるカイザー理事の肩書きがなかったら、恐らく向こうは下に見てきたろうな……油断も隙もないわい」
やっぱ持つべきは……権力やなって。
「取り敢えず鉄道もある程度把握してきたな。 ユメ、貴様の方はどうだ?」
「うん! ハイランダーの人がアビドス関係の書類を探してくれるって!」
「見つからないとか、遅くなるとか言ってきたらワシに言え。 カイザーPMCが探すのを手伝うからと向こうに言ってやる」
「わかったよ!」
ユメよ、笑顔だが意味分かってないな?
いや良いけどな、その方が話が楽だし。
「しかし寂れたアビドスとはいえ、愚連隊のような奴もいるだろうに。 暴力を当然とするキヴォトスでよく3年生まで進級できたな貴様……」
「酷い!? 私だって頑張ってるんだよ!?」
「そうだな、取り敢えずハイランダーの件は」
「他でも頑張るもん!」
……まっ十中八九、運とホシノに助けられてきたんだろうが。
それこそ遭難しても助かった件含めて、な。
今度はその幸運、ワシの為に使って貰うぞ?
「さて、鉄道権利はモノにした。 あとは整備に延線と手を加え、輸送に使うとして……」
それだけじゃ勿体なくない?
ビナーがいて砂嵐が舞う砂漠に線路を伸ばす気はないし、輸送はあくまでもアビドスの外から物資や人員を引き込むのに使用する程度に留める気だったが。
「……穴掘りのバイトでも募集するか」
長い目で見て、労働力兼お客様を呼ぶ事に。
カイザーの社員より安く済むし、単純作業に従事させれば学が無い者、愚連隊のような暇ぶっこえて金に困って犯罪に走る者でも構わない。
無人の市街地の砂を退かしてインフラ整備、復興させて、そこらの空き家に入れて住み込みにすれば、出稼ぎの者も困らないだろう。
そこに水や食糧を販売する店をカイザー系列で出店させれば、給金もある程度回収できるという寸法よ。
あとはそうだな、家賃もだが、重機や道具のリース代、穴掘り協会とか適当なのを作って、もしもの時の保障、怪我、病気に備えた充実保障として給金から引いておくか。
そんで求人票には、それらを別にした、見かけだけの給料をデカデカと書いて、騙される魚を釣りまくって楽しむとしよう。
アビドスで発掘されるは、なにもオーパーツだけとは限らないのも利用する。
本校だとかガチの遺跡を観光資源として再利用できないか検討し、人気になりそうならばアビドスまんじゅうだのカステラだの、マスコットやペナント、木刀とか適当に名付けたグッズを売り捌いてやる。
カイザー全体からすれば端金だが、ワシのポッケにナイナイするなら有効だ。
……ホシノやビナー、ゲマトリアと三面方向以上に敵がいると今後ナニが起きるか分からんからな。
「穴掘り? 私も前にね、ホシノちゃんと宝探しでやった事あるんだ〜!」
そんなワシの細やかな野望に気付かず、純粋無垢な笑顔で語るユメは本当バカだった。
「そうかそうか、なら貴様をバイトリーダーにして、現場に送るわ。 暑いだろうが下々を纏めて仲良く穴を掘ってろ。 借金返済の為だ、ちゃんと働けよ」
「わかった! 頑張るね!」
はぁ〜つっかえ!
まぁ良い、ワシの側にずっといると馬鹿が移りそうだからな、ほどよく厄介払いだ。
「さて、自ら書類仕事を増やしたな……」
これもワシの為、降格回避の為だ。
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「アビドスで穴掘りのバイト〜?」
「結構時給良いけど、カイザーだろ?」
「砂漠で埋蔵金探し? 大企業様が?」
「送迎列車にバス、住居提供の住み込みだ!」
「衣食住保障付き! 当面は飢えなくて済む!」
「アレだろ、金も権力もあると、今度は夢を追いたくなるんじゃね?」
「何でも良い、金の為、生活の為だ!」
理事がバイトを募集したところ、想定以上のバイト戦士が集結。
生徒、市民と立場を問わず、送迎バスとアビドス内を移動する列車を乗り継ぎ、続々と砂漠へ行進した。
道具のレンタル代、家賃や保険を理由に、給金が引かれると知った時は不満も出たが……それでも十分な金が、それも日当で支払われた為にストライキやデモ、サボタージュ等は発生する事は無かった。
ビナー襲来イベントに際しては、神秘を持つ生徒達が応戦、即応する事で対処。
オートマタなカイザーPMCでは出せない結果には、現場主任達も思わずニッコリだ。
「ふむ。 ビナーと交戦、撃退した者には、ワシのポケットマネーから特別手当を出してやる」
そんか理事の言葉で、更に士気は上昇。
その話はアビドスの外にも伝播。 金の為、或いはビナーという謎多き白鯨ならぬ白蛇の存在や砂の下の遺跡を観測しようと、野次馬根性の者や研究者、都市伝説好きや遺跡好きまでやってくると、アビドスの人口密度は上昇していく。
すると、現場出店のカイザー系列の店は繁盛するもキャパオーバー。
更なる人員や店の要請が出るようになると、今度はカイザー以外の個人経営店などがビジネスチャンスだと出店を始めるようになる。
この騒ぎに乗じてホテルが開業したりなど、人が集まる事で土地に価値が生まれ、自然と復興していく流れができていく。
元々空き家だらけの土地なので、そんなに苦労はなく、寮をわざわざ建設する事もあまりなく、集合住宅での生活にストレスを感じる者は見た目より少なく済んだ。
工事現場も市街地から離れているので、騒音もそんなに気にはならないのも大きい。
雇用による人が人を呼び、価値を呼び込み、更に増えていく。
需要を察知し、生活用品のみならず娯楽を扱う店舗も増え、中小企業がアビドスに参入。
交通機関もこれに応え、より効率の良い人員や物資運搬の為に砂塗れだった道路を再整備、場所によっては延伸までされた。
「え、マジ? 想定以上の反響じゃん、ナニそれ知らん怖いんですがソレは」
事態の中心人物である理事はビビっていたものの、気を取り直し医療機関やハイランダー鉄道学園を誘致……すると直ぐに呼応、取り敢えずの出張所が設置された。
これに関し、アビドス高等学校1年生、小鳥遊ホシノさんはこう語る……。
「金か! やっぱり復興は金なのか!? でも感謝なんてしませんよ、余所者だらけで、どうせ一過性に過ぎないんです。 とにかくユメ先輩、帰ってきてください、もう十分でしょう!?」
急速な人口増加と復興の様子に、理事長共々錯乱、謎の供述もしていたが……たぶん衰退していた状況が好転、ひと時の夢であっても、感極まり興奮したものと思われる。
「あー……ヤバ。 ちょっと派手になり過ぎたか? これ地下生活者とかゲマトリア刺激してない? 大丈夫? いやウチらカイザーグループ内も心配だが……取り敢えず降格は先送りに出来たよな、そうだよな!?」
「ありがとう理事さん! アビドスにこんなに人が来るなんて、きっとオアシスの星祭り以来かも!」
「一過性だぞ、どうせ……だがどこまで続くか分からん、さっさとブツを見つけて、それを手柄に撤退だ……!」
カイザー理事の不幸?は続く……。
後書き
埋蔵金の話は原作アビドス以外だと、ミレニアムのゲーム開発部の漫画にもありましたね。