降格回避√カイザーの野望   作:ハヤモ

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アビドス高等学校/入学希望者募集

真の敵は無能な味方というが、よもやユメにしてやられるとは思わず焦った。

 

側近のやらかしはワシの責任、教育が悪かったと猛省するしかない。

バイトテロ以下の企業の敵扱いで解雇して訴えたところで、資産の無いユメ並びにアビドスの借金が増えるだけである。

腹いせに連邦法とかモラルを無視して名前や所属を公開して、履歴に傷付けて人生崩壊させてやろうかとも思ったが、馬鹿相手に荒ぶるのも馬鹿らしいのでやめた。

 

まぁええわ、リカバリーの範疇の内はホシノ避け兼、アビドスを掌握する為にクビにはしない、シェマタの権利関係もあるからな。

 

だがそれも1年と保たぬだろう。

 

なにせユメは3年生、留年でもしない限りはアビドス高等学校を卒業してしまう。

すると学校にはホシノだけになり、自然と生徒会長に就任する。 するとどうだ、足枷が無くなり、ワシらカイザーを殴り易いではないか。

 

一応、見えたビジョンでは来年以降も新入生が来て、土地や後輩を守る使命感が合わさり、喧嘩っ早さは鳴りを潜めるのだが。

 

かなり恐怖……感じるんでしたね?

(裁判対策発言)

 

ホシノはゲマトリアの黒服が注目するくらい有数の強さだ、襲撃されたら被害がデカグラマトン。

発掘作業も遅延、バイト戦士を雇ってる意味よ。

 

行政面で争えば、ワシらカイザーが余裕の勝利であろうし脅威では無いが、法律や金が暴力を完璧に抑止してくれる訳じゃないし、時間が無駄になるので、ある程度の自衛は必要となる。

 

そこでユメに説得して貰いつつ、卒業後は、そのままウチに就職してカイザーの盾になって貰う。

ただし、大人嫌いで頑固なホシノが大好きなデカパイだけで納得する保証は無いので、追い討ちも考えておる。

 

 

「デキる大人は2手3手先を読むものだ」

 

 

などと格好つけたが、やる事とは?

 

ずばり、アビドス高校の生徒を増やす事だ!

 

これだけでは、は? ナニ言ってんだオメーとなるので順を追って説明していこう。

 

ここ学園都市キヴォトスにおける学園と生徒、その存在意義とは何か。

 

それは国であり、国民である。

ロボや動物市民の例外はあるが、学園は行政を担い、生徒はその下に集う公務員、兵力、そして一般市民だ。

 

となると生徒の数が多ければ、それだけ学園の力となり、他の自治区からの侵攻を防ぐ牽制力となり、程度の次第では政治闘争力が増して交渉で有利になり、遂には統治者の集う連邦生徒会への議員の輩出や発言力の増大が見込める。

 

同時に管理責任を問われるようにもなるが、その責任者にホシノを据えてしまおうという訳だ。

 

来年、再来年と新入生が来るであろうアビドスだが、その数は2人ずつ、2年後には計4人。 ホシノを入れても5人しかいない。

 

それでもホシノは4人を守ろうと責任感を発揮、余計な真似をしてくれるのだが、もし4人ではなく何十人と入ってきたらどうだろうか?

 

一気に部下を何十人と抱える事で精神的圧力、責任感は増し、皆の将来を守る為に迂闊な行動はできなくなるだろう。

更に……汚い思想にはなるが、人数が増えれば労働力や収入源が増える、すると自治区の整備に追われ、それらを円滑にする為に多忙となり私事どころではなくなる。

 

委員会とした組織の設置や運営、援助金の要請も兼ねて連邦生徒会に人を派遣、議員を輩出したりと忙殺させれば、ホシノの僅かなプライベートは寝るだけになるだろう。

 

 

「やっぱホシノ虐めは……最高だな!」

 

 

しかし発掘で偽りのゴールドラッシュムードのアビドスに生徒が来るのか?

来たところでブームが去ると同時に生徒も消えるのではと最もな疑問を持つ方もいるだろう。

 

案ずるな、心配御無用よ。

 

生徒は学園という国家に属する国民。 国民には生徒手帳という身分証明書が発行され、公共サービスを受けられる他、部屋を借りたりバイトをする時の面接、履歴書で有用になる。

 

逆にコレが無いと生活に支障が出るだろう。

 

なぁ? スケバン、不良の皆様よぉ!?

 

そう! ワシが生徒に選ぶは不良共だ!

学校に馴染めず、日夜他グループと縄張り争いしたり、トリニティのお嬢様を拉致って身代金要求したり、市民を脅迫してカツアゲしてチマい泡銭を稼ぐ悪ガキ共よ!

 

コイツらの殆どは停学、退学扱いを受けている元生徒であるが、当然というか学生証が無効になっている。

籍が残されていても、照会すればソイツは爪弾き者とバレるので、公共サービスを受けるのは難しく、バイトもできず、学もなく、ともすれば危険な傭兵稼業か悪事に走って日銭を稼ぎ、日々を食い繋ぎ生きるしかないという可哀想な奴らだ。

 

風紀の悪化が心配されるが、まぁそれがよりホシノを苦しめるだろうし、不良といっても学校に馴染めないとか素行不良以外にも理由はあるからな。

 

ジェントリフィケーションによる住居圏高級化が進み、元々住んでいた者が追い出されたり、生活費が高騰して住めなくなり、連動して学費が払えないなどが発生、停学処分、身分証明書剥奪、学校からも追い出されるという踏んだり蹴ったりな目に遭った生徒もいる。

 

そんな人達の再出発先、セーフネットとしてアビドスに入れちまおうってんだよ!

 

学生証を発行できれば、取り敢えずの公共サービスやバイトは受けられるようにはなるだろう!

これに飛びつく奴は必ず出てくる!

 

そしてアビドスに生活基盤を築く者が増えれば、バイト戦士共やユメが失せても、直ちに影響は出ない!

 

完全掌握の為に、ホシノが絡まないカイザー職業訓練校でも別途開校してやろうとも考えたが、連邦生徒会がソレを学校と認めるか怪しいからな。

 

拒否られたら万が一の支援を受けられないし、議員も輩出できず、ワシらカイザーが行政に割り込めなくなる。

悪質と判断された場合停止命令や、ヴァルキューレ警察学校の介入、下手するとSRT特殊学園の部隊が突入してくる、それは面白くない。

 

それなら元々ある基盤を乗っ取ろうってなぁ!

 

ホシノを苦しめ、ワシらの利益となる!

不良共も一石二鳥とも三鳥ともなるって訳だ!

 

 

「フハハハ! ユメ! 貴様に仕事だ!」

 

「なにかな? 出来る事なら何でも言ってね!」

 

「生徒会長としての立場と権限を悪用、じゃなかった、存分に使い、直ちに母校の生徒募集をかけろ! カイザー理事長、ワシが監修する!」

 

「? わかったよ! 人が来てくれたら廃校も防げるし、もっと活気が良くなるもんね!」

 

 

ユメぇ……お前はそのまま馬鹿でいろ。

余計な真似はしなくて良い、ただの置物に毛が生えた程度の価値がお似合いよ。

 

などと思っていた時期がワシにもありました。

 

 

 

───────────────────

 

 

 

「な、なんで? なんで急に入学希望者の書類が山のように届くんですか!?」

 

 

 

ホシノは会議室を埋める書類の山に呆然とした。

母校を悪く言いたくないが、ハッキリ言って将来性の無い、砂と借金塗れで衰退した学校に来たい人なんている訳がない。

 

 

「ユメ先輩! カイザーが何かしたんですね?」

 

「? 理事に広く入学希望者を募集して貰ったの! カイザーが支援中って触れてるからかな、沢山の人が来てくれて凄いよね!」

 

「汚い大人の事です、絶対に裏があります!」

 

「ホシノちゃん、人を信じてあげる事も大切だよ?」

 

「先輩は良いんですか? 元のアビドスがどうこうって話もしていたのに余所者ばかり、それも募集してきた人、一瞥した限りですけど悪さをしてきた不良ばかりですよ!」

 

 

書類の何枚かをユメに見せるホシノ。 辿々しい字や誤字脱字がありながら退学処分、中退を意味する経歴が書かれている。

それでもこんな時のユメは、慈愛の聖母のように、莞爾として微笑んだ。

 

 

「この人達のもう1度やり直したい、変わりたいって気持ちまで無下にしちゃいけないよ。 今の私たちには、土地もお金もないけれど、居場所を作ってあげる事はできるから」

 

「でもって……」

 

「それに何か危なくなったら、いつも通りホシノちゃんが助けてくれるでしょ?」

 

「そうやって私頼りはやめて下さいよ! でもまあ、はい……そこまで言うのでしたら、どうなっても知りませんからね」

 

「うん……ありがとう」

 

 

そうして、普通は何処からも断られる人達はアビドスに受け入れられた。

 

危惧していた通り、普段からオラオラしていた者達の流入で風紀の問題が発生していく事となるが。

 

 

「オラオラァ! こんな寂れたアビドスの生徒になってやるんだ、感謝しろよなぁ?」

 

「はぁ? 君達は立場を分かってないね」

 

「なんだぁ……テメェ……」

 

「ピンクチビが! やっちまうぞオラァ!」

 

「ヘイローの保証はできないよ」

 

「ぎゃあああ!」「ひいい!?」「強い!?」

 

 

そこはキヴォトス最強格のホシノ。 2年後のゲヘナ風紀委員長であるヒナが恐れられているように、ホシノもそのような立ち位置となっていく。

そうしてボコされる不良がいる一方で……。

 

 

「わ、私は他に道がないんだ!」

 

「そうだ……普通に屋根のある部屋で、ご飯が食べられる生活が送れるなら……!」

 

「矯正局行きより遥かにマトモだわ」

 

 

後がない生徒、このままじゃ駄目だと感じている生徒は、普通に暮らせる特権を噛み締める為、プライドの瀉血となる自己更生の道を耐え、石に喰らい付いてでも勉学に励む者も少なからずいた。

 

 

「フハハハ! ホシノは不良矯正に忙しくワシらに構う余裕がない、ワシの予想通りだな、そのまま仲良く戯れあってるが良いわ!」

 

 

また、元は真面目であった生徒の中には何かしら手に職がある……ミレニアムから流れてきたのか、技術者と思われる生徒などが混じっていた。

そうした生徒は砂漠の砂嵐対策を講じたり、ビナーの観測、地下に何かあるのか調べられる測量機器を持ち込み、或いは開発して貢献、己の有用性を示して追われないようアピールしていった。

 

己の生存をかけて頑張る姿は、見る者によっては可哀想ではある。

しかし中にはそうなるだけの残当な者もいるので、過度な同情も良くない。 程々な距離感が丁度良い塩梅で、その線引きが異邦人との摩擦を最小限にし、平穏を産んでいくのかも知れなかった。

 

 

「ビナーの出現や行動範囲が予測し易くなったか……思わぬ副産物だが、ワシのビジョンは何処まで通じるか分からんな。 早期にお宝を掘り起こせれば良いが」

 

 

こうした不安と期待の流れが続いていくも。

ビジョン通り来年にはネフティスから十六夜ノノミと、何処からともなく砂狼シロコが来て入学してくる。

再来年には奥空アヤネと黒見セリカが入学、理事の想像通りの運びとなるのである。

 

だが今は今で大変で……。

 

 

「理事さん、黒服っていう人が会いに来てるみたいだよ」

 

「え"?」

 

 

この祭りの日々に、流石の黒服も思うところがあったらしく、アポはとりつつ再度理事長にコンタクトをとってきた。

 

「やべぇ、流石に派手だったか!?」

 

 

失念、後悔、そして考える言い訳。

理事もまた、残当な不幸を味わうのであった。

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