正直、ここまで遅れるとは思いませんでした。
言い訳は、しません。
今作ですが、物語的には進んでません。どうでも良い駄文な会話ですので、優しい心でお願いします。
追記:コメントにて一部を修正しました。
この状況は何なんだろうか。
夜鈴は寝起き早々何故か木更から平手打ちを貰い、現在はソファーに座らされている。その向かい側のソファーには、向かい合うように木更が胸の前で腕を組み、額に浮かぶ青筋が木更が怒っていることを物語っている。その右隣に座る蓮太郎は呆れたようにため息をついていた。
優雨と延珠は裏で何かしら話し合っているようだ。
(まぁ……延珠なら大丈夫だろう。問題は……)
目の前にいる二人(特に木更)だろう。さて、どうしようか。現在、二人は朝のオレの何かを凄く怒っているらしい。それがよく分からないのだから、解決のしようもない。
「……状況の説明を求める」
夜鈴はこの場の静かな空気に耐えかねて話を切り出すと、木更の刺々しく鋭い怒気が含まれた声が返ってくる。
「それはこっちの台詞なんですがね、夜鈴さん?」
「一体、何を怒ってる……?」
「惚けたってそうはいかないわ。私たちは、現場を目撃しているんだから」
「見たって言われても……な?」
この女……木更が何故ここまで怒っているのか全くわからない。このままでは埒が明かないので木更の事をよく知っているであろう蓮太郎に目を向け助けを求める。
「俺に振ってもしょうがないだろ」
と、返されてしまう。そして、オレは訳のわからない感じで小一時間ほど木更の説教を受けることになった。
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「ふぅー。あぁスッキリした!」
「それはどうも」
木更は小一時間ほど夜鈴を説教して、大きく腕を伸ばしながら、いかにもスッキリした様な恍惚とした表情をしていた。余程ストレスが溜まっていたらしい。
「木更さん。コーヒーで良かったか?」
そこにコーヒーを淹れた蓮太郎が戻ってくる。木更の隣に座り、コーヒーの入ったカップを渡した。
「ありがとう、里見くん」
「ほら、お前の分だ」
蓮太郎が夜鈴にもう一つのカップを差し出してくる。それを夜鈴は受け取る。
「すまんな」
夜鈴は蓮太郎からカップを受け取ると、コーヒーを一口啜る。
「…………」
「どうした?」
「向こうに居た時に飲んでいたやつとはまた違った味だな。美味い」
「そうか? 安モノのインスタントコーヒーだぞ?」
夜鈴が蓮太郎と話していると、木更が思い出したように口を開いてくる。
「それはいいとして。貴女、自分の部隊に帰らなくていいの?」
「……ああ、そうだった。実は少し、問題があってな……」
「問題って?」
夜鈴は木更と蓮太郎にミッションの途中アラガミに不意を突かれて気絶してしまい、気がついたら森に倒れていた事と自分はこの世界の人間ではないことを話した。
それに対して、二人のは困惑した表情をして首を傾げた。
「とてもじゃないけど、信じられない話ね」
「だろうな」
二人の反応は概ね夜鈴の予想してた通りだった。自分でも今置かれている状況に納得している訳ではないが、どう考えてもこの結果になってしまうのであった。
不意に夜鈴は時計を見る。時刻は、一一時四五分を指していた。
「腹が減ったな」
「え? あーそうね……。うーん、里見くん何かない?」
「残念だけど木更さん。コーヒーぐらいしか無い……」
「え……そ、そんな……」
蓮太郎はガクッと首を下に落とす。それを聞いた木更も同じように首を下に落とし絶望的とでもいうような表情をしていた。
「例のコンビニで買ってくれば、良いんじゃないのか?」
「金がねーんだよ」
蓮太郎が悔しそうな声音で言う。その言葉で夜鈴はそんな事ならと、ポケットから茶色の封筒を出して、木更と蓮太郎の目の前に置く。
「これは……なに?」
「昨日のガストレア撃破報酬だ。これで、オレ達を雇ってくれ」
「「…………は?」」
蓮太郎と木更の声が重なる。二人はこれを予想してなかったようだ。
「唐突ね……」
「状況から考えるに、それが最善策だと感じた。こちらには優雨の事もあるから、出来れば居候させてほしい。…………駄目か?」
木更は胸の前で腕を組んで考え込む。数秒経ったあたりで、真っ直ぐ夜鈴を見据える。
「そのお金は貰って良いのよね?」
「木更さん!?」
「雇ってくれるのであれば、ご自由に」
「契約成立ね」
木更は夜鈴の前に右手を出す。夜鈴はそれに答えて、右手を出し握手をした。
「良いのかよ、木更さん?」
「ほっとけないでしょう? それに優雨ちゃんの事もあるし、単純に戦力も欲しかったし。貴女、ガストレアの迎撃に出しても構わないんでしょ?」
「もとより、そのつもりだ」
蓮太郎は渋々といった感じに木更に同意した。
そして、話の区切りを見計らってか、延珠が顔を出してくる。
「話し合いは、終わったのか?」
延珠に答えたのは、蓮太郎だった。
「ああ。二人とも、暫くここに居ることになった」
「それはまことか!?」
目をキラキラさせている延珠に対して、蓮太郎は軽く微笑みながら延珠の頭を撫でる。
「俺がお前に嘘言ってどうなるんだよ」
「やったー!! な、優雨! 聞いたか? これからもここに泊まれるらしいぞ!」
延珠の後についてきた優雨が夜鈴に目を向けて「いいんですか?」と聞き、夜鈴はそれに首肯して答えた。
木更が時計を見て言う。
「あら、もうこんな時間……。ね、お金も手に入ったことだし、何か食べに行かない?」
時計の針は12:00を指していた。一般人なら、そろそろ昼食にする者も居ることだろう。
満場一致で昼食を摂ることになった。
だが、夜鈴は木更に一つ提案をした。
「すまん、少しばかり貰えないか? 優雨の服をどうにかしたい」
優雨は昨日までのボロ布一枚から、夜鈴の上着一枚へとしか変わっていない。ボロ布よりはマシだが、このまま外へ出るには抵抗があるだろう(前回、路上で裸にされたが……。人は居なかったので、ご心配なく)。
「ああ……そうね。ごめんなさい。近くのお店で買ってくるから、ここで待ってて。延珠ちゃん、付いてきてくれる?」
木更に対して延珠は自分の胸を叩きながら、自信満々に宣言する。
「任せるのだ、木更! 優雨のスリーサイズは、既に覚えておる!」
延珠の言葉に優雨は顔を真っ赤に染めていた。
昨日、脱がすのと同時に調べたのだろう。夜鈴は器用な事が出来る子だと思った。
「はわわわ……。延珠さん!」
慌てて止めようとする優雨だが、時既に遅し。木更と延珠は事務所から出てしまった。
「……はうぅ…………」
恥ずかしさの所為なのか、優雨は両手を胸の前でもじもじさせながら、顔をそこに隠すように俯かせていた。
それを見た蓮太郎は、「なんか……すまん」とだけしか言えなかった。