最初は敵として出てくるタイプの魔法少女 作:てんぷらのちぎり
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「あぁ~、楽しかった!」
途中からは結奈ちゃんも楽しそうにしてくれて、とっても満足している。
今は、そんな帰り道。結奈ちゃんとは道が違うから、既に別れている。
「最初はどうなるかと思ったけれど、結奈ちゃんもちゃんと楽しんでくれてたみたいだし!」
個人的には百点満点を上げても良いでしょう!
それに、これをきっかけにどんどん仲良くなっていきたいな。
結奈ちゃん。お父さんとの関係が良くないのか、時々傷を作って学校に来るんだよね。
本人は何もなさそうに振舞っているけれど。
きっと、あれは……。
だからと言って、本人は家族の話をするのは嫌がるから、触れないようにしているわけで。
本当は、手を取って助けてあげたい。
でも、本人はそれを望んでなさそうだから……うぅ~、もどかしいよ~。
「黒鎌の魔女ちゃんと、よく似てるんだよなぁ」
あの子も、きっとあんな悪いことはしたくないんだと思う。
けれど、しなきゃいけない理由があって、させられてる。
『私とパパの事を何も知らないくせに――っ!』
耳の奥には、まだあの絶叫が残っている。
あの子も、結奈ちゃんも、家族で困っている。
そして、本人はそれを辛いことだと思っていない。多分。
外からどうにかする、のはあまりにも独善的だってのは私にもわかる。
どうにか本人が助けを求めてくれないかなぁ。
そんな思いで、今日は連れ出してみたけれど。
「結奈ちゃん。家に帰って何をしてるんだろう」
おうちに遊びに行ってもいいかな? って聞いたことはある。
その時は、少し気まずそうにして断られた。
間違いなく、これ以上は言わない方がいいな。
言いすぎると、関係性を遮断してくるなって、確信があった。
……結奈ちゃんは、私がどうしてあんなに絡みに行くのか、不思議に思ってるのかな。
多分、そう。内気な方だし、自分から色んな人に話しかけに行く子でもないから。
なんで私なんかに、だなんて思ってそうな感じもする。
自信の無さがにじみ出てるんだよね。
「そんなことないのに」
中学校の入学式の日。
小学校からの友達と一緒に登校してた時に、その光景を見た。
『どうしたの?』
迷子になっている女の子に、そっと優しく話しかけている、結奈ちゃんの姿を。
入学式に間に合わなくなるかもしれないのに、彼女は迷う事なく、人助けに走っていた。
私は――友達に合わせて、見て見ぬふりをした。
そう、本当に美しい心の持ち主はあの子なの。
私は、憧れたんだよ。
結奈ちゃんみたいに、誰かに寄り添えるようになりたいって。
思えるように、なったんだ。
「仲良くなりたいなぁ」
クラスが一緒になったのは、本当に運命だと思ってる。
これを機に仲良くなれたらって思ったんだけれど……非常にガードが堅い子だった。
何というか、周囲を良く観察する感じ?
常に気を張っているというか、何というか。
簡単には踏み入れさせてもらえないなって感じだった。
だから、最初は挨拶から始めた。
とにかく声をかけて、声をかけて、声をかけて。
他の人にも声をかけて、結奈ちゃんだけが特別じゃないってアピールもした。
「もうちょっとだと思うんだよなぁ」
今日の感じ、心を開いてくれている感じはする。
この調子で色々と遊びに誘って、自然と受け入れてくれれば。
「そうすれば、きっと家族の事も教えてくれるよね」
結奈ちゃんにとって、家族は聖域なんだと思う。
他の誰にも踏み込ませられない、大事な場所。
だから、そこに踏み込めるようになるためには、家族と同じぐらい大事な人にならなくちゃ。
「そのために、頑張るぞ。おーっ!」
なんてやってたら、家についていた。
さっさと扉を開けて、中に入る。
「ただいまー」
「……お帰り、遅かったな」
「あれ、お兄ちゃんがいるなんて珍しいね」
普段は研究所仕事で夜遅くまでいなかったり、帰ってこないことの方が多いのに。
リビングのソファーに、ポツリと座ってた。
「ああ、ちょっとな。少し休みを貰ったんだ」
「ふうん。確かに、ちょっと顔色悪いね。大丈夫?」
言われてみれば、確かに元気なさそう。
お仕事で何か失敗しちゃったのかな?
それとも、良くない知らせでも貰っちゃったのかな。
「その休みって、マギデバイスに関係してる?」
「――いや、関係ないさ。安心してくれ」
「なら、いいけど」
マギデバイス、つまり黒鎌の魔女関連じゃないなら、私が無理に聞くのも悪い話だよね。
でも、ううん、元気ないお兄ちゃんを見続けるのもなぁ~。
というわけで、隣に座って寄りかかる。
「……なんだ」
「いやあ? 元気ないお兄ちゃんのために、かわいいかわいい妹が一肌脱いであげようかなって」
こうやって人とくっついてると、幸せな気持ちになれるんだって!
好きな人と抱き合ったり、くっついたり!
お兄ちゃんは私の事大好きなはずだから、きっと幸せな気持ちになれるはず!
だなんて思ってたら、大きなため息を吐かれた。しかも呆れたって感じの奴。
「ちょっと!」
「ははっ、いや、ありがとうな」
顔を上げたら、お兄ちゃんがこちらを見てきていた。
その眼は疲れ切っていて、心配になる。
しょうがないからぎゅーって抱きしめてあげる。ぎゅー!
「おいおい、今日は随分と優しいんだな」
「小春ちゃんはいつだって優しいんですー!」
「それに上機嫌だ。何かいいことがあったのか?」
お、気が付いちゃいました?
なら語らないのは嘘というものでしょう。
ふふん。
「今日ね、今日ね。ずっと仲良くなりたいって思ってた子と、ようやく二人で遊びに行けたの!」
「おお、そうなのか。よかったな」
「でしょでしょ。それに、その子も楽しそうにしてくれて、笑ってくれたんだ!」
今日は本当にいい日だった。
あ、でもこの説明だと男の子と勘違いされるかも。
念のため言っておいた方がいいよね。
「……因みに、女の子だよ」
「安心しろ。お前に男ができるとは思ってない」
「ちょっと! お兄ちゃん、それは暴言だよ!」
はははと誤魔化すように笑う。
良かった。お兄ちゃんに元気が戻ってきた。
明るい方がいいに決まっているもんね。
「――なぁ、小春」
「なあに、お兄ちゃん」
「もし、お前の友達が悪いことをしてたら、どうする」
なるほど?
ははーん。わかったぞ。
お兄ちゃん、友達が悪いことしてたんだなぁ。
それで落ち込んでたんだ。
私に相談するだなんてわかってるじゃん!
「当然、止めるよ!」
「向こうには向こうの事情があるとしてもか?」
「それは……それ! 悪いことをしてるなら、まず止める! で、原因があるなら、それも何とか解決する!」
友達なんだから、そのぐらいはしてあげないと!
クラスに万引きしてる子がいるって噂があるけれど、万引きなんて私の友達には絶対にさせないもん。
もしも私に隠れてやってるなら、絶対に怒る。
そして、二度とやらないように説得する!
それが、私の目指した道だから。
「……だよな。お前なら、そう答えるよな」
お兄ちゃんはどこか疲れ切った様子で、呟いた。
どこか違和感を覚える。
お兄ちゃんは、私の行動を参考にしたくて聞いたんじゃないの?
なんだか、それとは違う感じがした。
「――よし、覚悟はできた。ありがとうな、小春」
「なあに、小春ちゃんに感謝するならアイス二つで手を打ってあげよう」
「お前、虫歯になるぞ」
「歯は毎日完璧に磨いてます!」
「太るぞ」
「さいてー! ちゃんと運動してるから!」
なんてデリカシーの無いお兄ちゃんを持ってしまったのでしょう!
でも、今はお兄ちゃんは笑ってるし、目に光が戻ってる。
覚悟、決まったのかな。
「とりあえず、明日からはまた頑張らないとな」
「そうだね。ここ数日は黒鎌の魔女も動いてないみたいだし」
「ああ。絵画の解読に時間を費やしているんだろう。――こちらも、事前のコピーから解析を試みているが、どちらが先に解析できるかは五分五分って所だろうな」
つまり、先手を打てるかもしれない唯一のチャンスってこと。
「しっかりものにしてよね、お兄ちゃん」
「任せろ。そのぐらいしか、俺達にはできないからな」
お兄ちゃんたちがしっかりやったら、次は私の番。
今度こそ、彼女を止める。
戦って、打ち勝ってみせる。
そうして、話をするんだ。
あなたはどうしてそこまで追い詰められているのって。