無惨地獄革命記   作:みそそ

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火花

実弥の日輪刀が、煉獄の守りを強引にこじ開けようと火花を散らす。暴風のような斬撃の応酬の中で、実弥は顔を歪めて叫んだ。

「わけの分からねェことを抜かすなッ! 業も罪も全部忘れて赤子に戻れる……そこになぜ安心を見出せねェんだ!」

実弥にとって、それは地獄という絶望の中で掴み取った唯一の結論だった。自分を消してしまえば、痛みも後悔もなくなる。それこそが究極の救済のはずだ。

だが、煉獄の炎の刃はその風を真っ向から受け止め、押し返した。

「不死川! 世界の理に適応できぬ強すぎる魂を持つ者は、何度浄化されようと、またこの地獄に送り返される宿命なのだ! 俺がいた天国もまた、魂を腐らせる別の地獄だった!」

二人の刀が噛み合い、凄まじい力が拮抗する。至近距離で、煉獄の金の瞳が実弥を射抜いた。

「無惨は言った! 地獄でも天国でもない、新しい理を築くと! 俺は、その不確かな可能性に賭けたい!」

「……あァ!? 鬼舞辻だと!?」

実弥は信じられないものを見る目で煉獄を睨みつけた。

「テメェ、正気かよ! あの野郎の言うことなんざ、全部自分のための屁理屈だろうが! そんな結果も分からねェ、不確かなもんに……この世界の循環をブチ壊してまで賭けるってのか! 理解できねェ、到底理解できねェよッ!」

激昂した実弥の刀が、重厚な音を立てて煉獄の肩口を掠める。

実弥にとって、無惨の提示する「新しい風」は、秩序を破壊するただのカオスに過ぎない。しかし、煉獄は傷を負いながらも、その口元に微かな笑みを浮かべた。

「理解できなくていい! だが不死川、俺の心は……今、かつてないほどに燃えているんだ!」

 

煉獄と実弥の刃が交差し、地獄の空気を激しく震わせている。その傍らで、猗窩座もまた、実弥が連れてきた獄卒の群れをなぎ倒していた。

 

だが、その狂乱の渦中にあって、無惨だけは完全に異質だった。

彼は戦いの一切に加わらず、ただ虚空を見つめている。いや、彼が見ているのは目の前の光景ではない。網膜の裏側で、地獄という巨大なシステムの階層構造を、かつて現世で読み漁った膨大な文献の知識と照らし合わせ、解析していた。

「……矮小だな」

無惨は鼻で笑った。

魂がどうあるべきか。浄化が救いか否か。そんなものは、支配される側の感傷に過ぎない。

彼にとって、実弥はただの「足止め」であり、煉獄や猗窩座は「時間を稼ぐための駒」でしかなかった。

「お前たちがそんな下らない議論に興じている間に、私はもう見つけたぞ」

無惨の指先が、空間の何もない一点を突いた。

そこは、地獄の熱気と現世の理が交差する「縫い目」――すなわち、この地獄を統括する獄長の居室へと直結する、最短の経路だ。

かつての無惨なら、苛立ちのままに実弥を蹴散らしていたかもしれない。だが今の彼には、死の恐怖に追われていた頃の短気さはない。

 

「戦い続けろ。お前たちが暴れれば暴れるほど、地獄の負荷は高まり、獄長の隠れ家は露呈する」

 無惨の瞳が、青い火花を散らし、空間を歪ませ始めた。

 

実弥が驚愕に目を見開くのを横目に、無惨は闇の中へと足を踏み出す。

無惨の姿が陽炎のように揺れ、次の瞬間には、地獄の最奥へと繋がる亀裂の中へと消えていった。

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