2029年3月。
時刻は20時過ぎ。
「ツクヨミにアタシが・・・キタァァァァァァ!!!!!」
仮想世界『ツクヨミ』にまた新たなるユーザーが誕生した。
拳を突き上げ泣き叫ぶ女の子。
彼女の名は・・・龍宮 紅莉(たつみや あかり)。
「うっ・・・うぅっ・・・なんとかママに頼み込んで高校合格祝いにスマコン買ってもらえて・・・ようやく・・・よぉぉぉやく!!アタシはこの世界にやって来れたぁぁぁ・・・・・」
「はぁ・・・あんた・・・何泣いてんの?」
「きぃぃぃっ!!!!舞琴にはわからないでしょうね!!このアタシがスマコンを持っていないのを良い事にずっと周りからは自慢話ばかり聞かせられていて発狂しそうなぐらいイライラを募らせていたア・タ・シの気持ちがぁぁぁぁぁっ!!!!!」
「わかった!わかったからそんな顔で近寄って来ないでってば!!それに唾も飛んで来てるからやめろぉぉぉ!!」
紅莉に両肩を掴まれて激しく揺さぶられている女の子。
この子は・・・鳴滝 舞琴(なるたき まこと)。
紅莉とは近所付き合いの幼馴染である。
そんなやり取りをしている2人の間に大きな欠伸をしながら1人の女の子がやって来た。
「・・・・・何してるの?」
「見てわかんないかなぁ~?馬鹿の相手してんのよ!!」
「今日はツクヨミを案内する・・・・・約束」
「はいはい・・・千聖様の言う通りにさせて頂きますよ~」
「ちーちゃん♪今日はよろしくね!!」
「・・・うん、それではようこそ・・・ツクヨミへ」
この子は・・・本庄 千聖(ほんじょう ちさと)。
仲の良いクラスメイトの1人である。
千聖に手を引かれて光が差す方へと駆けて行くと目の前に広がるのは、和風建築が建ち並ぶ幻想的な繁華街。
3人は仲良く手を繋ぐと人混みの中へと溶け込んでいった。
3人は街中を談笑しながらツクヨミを堪能していたが、紅莉が急に立ち止まったのである。
「・・・・・う~ん」
「どした?私の事をさっきからチラチラと・・・・・」
「もしかしてなんだけど・・・・・たぬき・・・?」
「アライグマっ!!どっからどう見てもアライグマでしょ!?」
「たぬきもアライグマもどっちも一緒じゃんっ!!」
「尻尾にシマ模様があるし、そして目の間に黒い筋があるでしょ!!」
「必死過ぎて・・・やべぇ~よ」
「ぜんっぜん!!やばくねぇ~よ!!」
髪は白色のウルフカット、瞳は黄色。
黒と銀を合わせたタキシード衣装にアライグマの耳と尻尾が付いている。
目の間にちょっと黒い筋が目つきが悪い。
リアルでも目つきが悪いから仕方ない。
何故か腰辺りに警棒が備え付けられているが、ファッションであろう・・・たぶん。
「じゃあさ!ちーちゃんの容姿のモチーフにしたものってなんなの?」
「・・・・・カメレオン」
「でもでも、その割にはカメレオン要素が見当たらないんだけど・・・・・」
「・・・このゴーグルを付けると・・・・・」
「うぉっ!?消えた!!」
「・・・・・止まっている間だけステルス機能が発動する」
「それってもしかして・・・かくれんぼ最強じゃん!?」
「驚くところはそこじゃないでしょ」
髪は水色の目隠れソフトレイヤーヘアー、瞳は藍色。
深緑をメインとしたフード付きの衣装。
上着にはポケットも付いており、癖なのか千聖は両手を突っ込んでいた。
お尻には可愛らしい尻尾が付いている。
首には水色のヘッドフォンをかけていた。
「それよか紅莉のアバターこそモチーフがわかんないんだけど・・・動物とかではなさそうね」
「アタシって言えば・・・コレだっ!!って感じにしたんだけど・・・・・やっぱりわかんない?」
「もしかして・・・・・ドラゴン?」
「大・正・解っ!!ちーちゃんには1000ふじゅ~を贈呈致します!!」
「マジかっ!?私も適当に答えておけばよかったか・・・・・」
「尻尾がでっかくてさぁ~・・・尻尾の変わりにこんなの付けちゃいましたぁ~♪」
「おぉ~立派な翼じゃん!!もしかして・・・空とか飛べたりするのかな?」
「そう言う説明はなかったけど、気合と根性でどうにか・・・・・」
「・・・・・無理無理」
髪は黒色をメインに毛先に赤色のメッシュが入ったショートヘアー、瞳はオレンジ色
赤色をメインとした金色の龍が刺繍されたカンフードレスっぽい衣装。
背中部分は大胆にも開いており、そこから翼を出したり、消したり出来る。
腰元には瓢箪があるがお酒が入っている訳ではない。
ツクヨミ内を一通り案内し終わった3人は近くにあった茶屋で休憩をする事にした。
「それよりも念願だったツクヨミの感想は?」
「マジで神っ!!この世界を作ってくれた月見ヤチヨに感謝ぁぁぁっ!!!!!」
「・・・・・同意」
「後はさぁ~・・・この食べ物を美味しく・・・んぐっ!・・・食べられたら・・・んっ!・・・いいんだけどね!!」
「まだ味覚・嗅覚・触覚は再現出来ていないみたいだから未来に期待だな」
「そうなってしまうとツクヨミが第2の世界ってなっちゃうみたいな?」
「・・・・・その考えはあり得る」
「ツクヨミなら歳もとらないからずっと生きていられるんじゃないの!?」
「リアルの私達が先にぽっくり死んでるに決まってるでしょ」
「あははぁ~そりゃあそうか!」
などと賑わっていたが舞琴が胸ポケットから懐中時計を取り出した。
「さてと・・・もうそろそろ寝ないとかぁ~」
「なに?明日用事でもあるとか?」
「おいおい・・・もう深夜の2時だっての・・・睡魔も限界だって・・・・・」
「マジかっ!?興奮してて全然気付かなかった!!」
「・・・・・楽しかった」
「これからは学校も卒業して離れ離れになるけど、ツクヨミでいつでもみんなと会えるから大丈夫だな」
「またツクヨミで!!だね?」
「・・・・・うん」
「んじゃっ!!お先~♪」
「・・・・・またね、あっちゃん」
2人がログアウトした後に紅莉も目を開ける。
そこには山積みになった段ボール箱が周りを囲んでいた。
現実逃避をするように大の字に寝そべる。
「高校生活・・・初の1人暮らし・・・山積みの荷物・・・荷解きめんどくさぁぁぁい!!!!!」
真夜中に叫んで壁ドンをされてしまったのは初めての経験であった。