小屋の中で絶望にくれた少女は溜息をはいた。もう逃げ場はない。周りは皆敵。
そのとき、奇妙なことに目の前の虚空に紐のついた黒曜石の原石が突然ぽとりと落ちてくる。入ってくるときに少女のいる家には無かったものだ。
もしかしたらと藁にも縋る思いでその石を握り、首からかける。そして握るととにかく遠くへ逃げられますように、そう願った途端、彼女のいる場所は閑散とした家から突然わけのわからないところに降りたった。周りには夜だというのに星より強く輝くものでカラフルに装飾されていて昼と同じくらい明るく地面を照らし、大きな道には絶え間なく鋼鉄の箱が走り抜ける。
遠くには一際目立つ白い巨塔が建造物の合間から垣間見える。彼女は逃げ切れたのだ。そしてそこが所謂外の世界の大都市、東京に辿り着いたのだ。
手に握ったこの黒曜石が今もたらしたモノを理解するといろいろな策が頭から噴水のように沸き上がる。これであの世界の住人に復讐ができる。そうだ、どうせなら事は大きく…この世界も巻き込むか。
彼女の頬は不気味に緩み、高々に笑い。黒曜石の力で元の世界に戻った。
態勢を立て直し、相手を完膚なきまでに叩くために。二つの世界を巻き込んだ野望を果たすために。
ーoriginー
己の技術と知恵により発展し不夜城同然となったコンクリートジャングル、東京。今日も今日とて数え切れない程の人が行き交うその地の人の数が疎らになった真夜中の新橋駅前のSL広場。冬の風がまだ吹くそこに異国情緒漂う一行がいた。いや、異国でも珍しい格好をしている。所謂わざとらしく個性を強調したアニメのキャラクターのコスプレ、そんな服装だ。しかし過度な露出はなく、むしろ上品な貴族のような雰囲気を醸している。
「ここが、『外の世界』ね。」
「こんなに発展してたんですね…」
「河童の技術は百年先を行ってるみたいだけどこの世界は200年先を行ってるわね。ま、月には劣るでしょうけど、これはこれで…アリね。」
蝙蝠の翼を持つ少女は感慨深く呟き、渋谷の辺りを見回す。どこにもガラス張りの高いビルが立ち並んでいる。私達にとっては普通の代物ではあるが彼女の世界には有り得ない代物だった。
すると銀髪の従者はそっと蝙蝠翼の少女に問いかけた。彼女なりに抜け目の無いように宿舎を探して依頼していたのだが肝心の宿が見つからず懐の地図と睨めっこをしている。
「お嬢様、まずは仮の宿泊施設を探さければいけませんが…どこにあるのでしょう?」
「そうね、宿は取ってあるとは言えども…」
溜息混じりに蝙蝠翼の少女が呟いて辺りを見回しても彼女たちの知るホテルは見当たらない。
「どこにあるものか…」
「地図はあるの?」
すると月の飾りの付いた帽子をかぶるロングの少女が従者の広げている地図を横から見る。その後ろから小さな蝙蝠翼を猫耳よろしくに生やした紅の髪の少女が覗く。
「ううむ…ここの人に聞いてみるのが一番ね。」
「そうですね、個人的な意見を言わせていただきますとそれが最善かと、郷に入りては郷に従えって言いますし。」
紅髪の少女は静かに頷いて返す。蝙蝠の翼の少女はあからさますぎる程に偶然通りかかった彫りの深い夜勤帰りの青年に問いかける。
「ちょっとあなた。この宿までの道知らない?」
「はい。知ってます。」
かなりのランクの高い美少女達に狼狽えることなく青年は頷いて快諾し、従者は青年に地図を見せた。地図はパンフレット程の大きさに折り曲げられていて現在地と思わしきところを指さして従者に幾度か質問すること一分ほど。
「そのホテルのでしたらすぐそこです。案内しましょうか?」
青年の問いかけに従者が割ってはいる。何かを疑ったのかのようにも見えたがこれ以上の手間は掛けさせたくないのだろう。
「いえ、結構です。道筋だけ教えていただけたら幸いですので。」
そう言って青年の教えてくれたとおりに一行はホテルを目指して行った。
朝の早い警視庁公安部の職員の藤本はオフィスのデスクで事件ファイルを読み耽っていた。見た目はビジネスマンのスマートさとに海外の沿岸警備隊の屈強さを足して二で割ったような引き締まった筋肉を紺のスーツが包み込んでいて顔は細く鋭い双眸に近いモノと天然パーマであり、後は他のサラリーマンと遜色ない。そんな彼が目を付けていたのはとある海外マフィアの日本進出だ。名は「
しかし当然元々の縄張りを侵されて地元の暴力団や金融屋が黙っていることもなく、それ由来の抗争や騒ぎが起こる。日本も例外ではない。それを地元暴力団に潜入している公安部の潜入捜査員から知ったのだ。
そして昨夜、その捜査員がとある一行に会ったのだ。あの異国の少女達だ。捜査員その後をつけていくと見失い消えていたという。見失ったそのときには一台の白塗りバンが夜に消えていくのが見えたようだ。
その後藤本はバンのナンバーを確かめて所有者を調べると盗難車であることがわかった。バンというものは拉致誘拐にはうってつけの乗り物だ。むしろ盗まれたバンの末路はそういうものだろう。
そこまで調べたところで朝が訪れたのだ。藤本の頭もうつらうつらとなっていた。そこへ一人のポニーテールを提げた女性職員が呼びにかかる。
「藤本さん、どうしても会いたいとという方が。」
「夜勤明けだ…後にしてもらっていいかい?」
藤本は嗄れた声で返した。あたかも酒に呑まれたサラリーマンの形相であった。女性職員はむすっと頬を膨らませて脅すように吐き捨てた。
「藤本さんの追っている"愛国者"についてですが。」
「本当か。すぐ行く。」
「応接間にて待機してますので遅れないように。」
情報提供者が唐突に来るのは珍しく、疑うことはやむを得ない。しかし確実に何らかの情報は得られるのだ。すると藤本は跳ね起きてコーヒーを呷ると気合いを入れて立ち上がる。書類をまとめるとオフィスを後にした。
応接間にいたのは金髪の貴婦人だった。服は紫のドレスが故に露出こそ少ないものの、何処かに妖艶でグラマラスな雰囲気を持っているため、何処かの貴族出身かと思われる。
藤本はふと胸にぐっとくるときめきを堪えながら営業スタイルの口調を維持しながら口を開いた。
「お待たせしてすみません。名前は…」
「匿名でも構わないと聞いて今は匿名でお願いしていましたが。」
貴婦人は冷たく返し、手元の茶を口に運んだ。その所作を見ても教育の行き届いているのが火を見るよりも明らかに映し出される。もし作法の批評家がいたならば礼儀わきまえずに親は誰だと口走り、尊敬していただろう。
たまらず藤本は頭を下げて謝罪する。
「そうでしたか、自分が知らなくてすみませんでした。」
「別に構わないわ。さて、愛国者についての話を始めましょう。」
貴婦人はカップを静かに置いて語り始め、封筒から三つの写真を出し話を始めた。
はい、いかがでしたでしょうか。(初回と技量不足で東方成分は少なめです)
ぶっちゃけ受験戦争まっただ中、さらに相方との合同作品を書いている中で生まれた作品ですので、今後更新自体は不安定になりがちになるかもしれません。いいから受験勉強しろとの声が上がるかもしれませんので大人しく受験勉強にいそしみます。
なお、合同作品についてはこちらと掛け持ちで書いていきますのでご安心を。
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一応本作のストックはありますが休憩がてらに念入りに推敲をしていますので遅くとも3月末までには復帰します。
それでは、有難うございました。次回作をお待ちください
テコ入れ済み(2015・5・23)