その朝、不審車両として浦部の乗っていたトラックには二人の高速機動隊員が来ていた。この道のベテランの遠藤と新人の五十嵐だ。通報内容は荷台から不気味な音が聞こえるとのこと。周囲を調べてもこのトラックや持ち主についての情報はない。遠藤は捜査対象のトラックに行き、その周辺にいた五十嵐を引き留める。トラックの運転手の姿が無かったからだ。
「サービスエリアには運転手はいない。仕方ないが、中を調べるか。五十嵐、頼む。」
「はい。」
荷台の扉のロックが外れていて容易に開いた。トラックの中は血で染められていて一人の男が倒れている人を介抱するような形で寝ているように見えた。
「拉致?」
「血を寄越せ!」
疑うが先か介抱していたように見えた男が飛び出してきた。
血相はひどく悪く、腕には噛まれた跡、発達した八重歯が目立っていた。それはまさしく吸血鬼。
「うわあああ!」
しかし男は日の本に出るや否や服を残して跡形もなく灰となって消え去った。太陽に当たったからだ。おかげで服のみがふぁさぁっと地面に優しく降りるだけとなった。
「おい五十嵐!大丈夫か!?」
完全に腰を抜かし、先輩にも返事が出来ないほどに顎を震わせた新人機動隊員には恐怖が刻み込まれていた。
その後、トラックからは数多の密造銃が発見されてからは公安も介入しこのことは速報ニュースになったことを知る由も無かった。
浦部とレミリアはタクシーで自宅の前の道の入り口に降りる。浦部が先に降りて日傘をさし、包帯で巻いた右手ではなく左手で日傘を持ちレミリアをその傘の庇護の元に入れる。
「なかなかいい気配りじゃない。惚れ惚れしそう。」
歩き始めた浦部について行きにやにやしながらレミリアは日傘を持つ浦部に言う。これまでの執事としても通用する振る舞い方だ。忠誠心を除けば領主のレミリアでも一声かけるだろう。
「念のために一言言わせていただいてもよろしいでしょうか?」
「いいわよ?」
「私の仕事は運び屋であって執事ではございませんので。」
「わかっているわ。うちのメイド長には及ぶつもりすら無いってことぐらい。」
誉めているのか貶されているのかは分からないが浦部としてはそれが一番ありがたかった。過大評価も過小評価もしないという点に於いてはクライアントとしての目がとても高いレベルを持っていることになる。それは多少のミスを犯したときの保険になる。だがそこに甘んじるつもりはない。あくまで何が起こるかわからない職が故の救済がいるのだ。
「こちらが私の家になります。」
「紅魔館に比べると狭いわね…でも安全は保障してくれるのでしょう?」
紅魔館というものがどの程度の大きさかは知らないが高級住宅の家でさえ小さいなと貶せるレベルだ。余程の階級の持ち主なのだろう。そう合理つけて浦部は力強く返す。
「作用でございます。」
浦部はそう答えながらインターホンを鳴らした。荷物の安全は守る。運び屋としてのモットーをそのまま流用すればどうってことはない。問題は意思を持っていることだ。それがあっては勝手に何処かへ行ってしまったり、下手したら喉を文字通り噛み千切られかねい。
すると碓氷が得意げな顔で出迎える。こんな顔をすること自体年に二、三回あるが今回のは変顔かと疑うレベルに昇華していた。
「兄貴、お客様が来てるよ。例のあの方ですよ。」
「ああ、今行く。お嬢様、こちらへ。」
「お嬢様?」
首を傾げながら浦部に横にのけられる。するとレミリアが何食わぬ顔で自分の家に上がってくる。碓氷を疑わしい目で見ては浦部に視線で"こいつ信用できるの?"と訴えかける。
「彼は仲間でありながら弟分です。彼は商いを営んでおりまして、アップルパイに始まり裏情報や武器まで扱ってます。」
信用できるならまあいいわと言わんばかりに肩をなでおろすとでもどこかレミリアとしては信用できないためか少し疑わしい目で見た。
その一連の流れに碓氷は目を剥いて驚いた。あたかも正夢を見たときの少年のような驚きがそこにあった。
「今のって…しかもお嬢様!?兄貴が呼んでるのか!?」
「話は後だ。お茶の準備を。」
リビングへと消えていく兄貴分の背中を取り乱していた碓氷はわざとらしく顔をきりりと引き締め敬礼して答えた。
「
そうして碓氷は敬礼を解くと鼻の下を伸ばして俯きながら嘯いた。
「うわーもしかしてリアルになっちゃう?まさか二人も東方projectのキャラが実在してたとは…すげぇマジで…となると…幻想郷もあったりして…ぐふふ…たのしみになってきたぜ。」
その後碓氷が興奮して本作のデリケートゾーンをつつくレベルでぶつぶつ言ってたのは言うまでもない。
テコ入れ済み(2015・5・23)