極東現想録ーcycle of crashー   作:(業)

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-sneaking-

 

 舞台は外の世界へ戻る。千葉の山奥にある目的地の倉庫は近代的なもので鉄筋コンクリートで作られてはいたものの、所々の塗装の剥げが垣間見えた。それもそのはず。この倉庫はバブル後に売られて買い手がつかない状態になっていた。しかし、山奥でありながら中々の広さを持つことで愛国者が目を付けて莫大な資金で買い取ったという。

 警備は中々のものだ。構成員は必ずと言っていいほどトカレフやガバメントといった軽装備の密輸品を装備して、監視カメラや犬まで動員されている。過疎地帯故に怪しむ人は付近には住んですらいない。見せたくない物を隠すにはもってこいなのである。

 その倉庫から800m程離れた展望台に浦部達のトラックが停車していた。

「どうだ?ここから降りるかい?」

「ああ、怪しまれないからな。もしトラックが出たら尾行してくれ。」

 そう言って浦部は淡々と装備を点検していく。今回の火器はvectorの民間版を碓氷がフルオートに改造し、サプレッサーとバーティカルフォアグリップ、Eotech社製のホログラフィックサイトを付けた代物だ。それと腰に下げた厚みのある大振りの刃物はボウイナイフである。

 「私はなにをすればいいのかしら?」

「その時に碓氷を手伝ってくれませんか?」

「すっげぇ豹変っぷりだな。」

 黒いニット帽を被り顔にドーランと呼ばれる顔料を塗りながら浦部は答えた。ドーランは一般的には京都の舞妓が塗っているあの白い化粧の類である。軍隊では白いものもある可能性はなきにしもあらずだが今回浦部は黒を選び闇夜に紛れるようにする為に塗っていた。

「敬意を以て振る舞わないと、色々言われるんでね。」

 そこにレミリアが補足するように付け加える。

「そうよ。郷に入りては郷に従えって言うじゃない。私も従ってるわ。」

 仕上げにアクションカムと呼ばれる小型カメラをニット帽の上から巻いたヘッドバンドに常備されている固定具につける。

 そのときに、碓氷は紫からの伝言を浦部に伝えた。内容は能力を無効化される原因の究明。そんなモノ知るかと呟いたところ黒曜石の装飾品のはずと答えた。レミリアもこの言葉に反応した

「それでは、行ってきます。」

「気を付けて。」

レミリアの声に微笑むと碓氷が顔を出して忠告でも言いたげな目をした。こうして残るのは浦部のサポートや指揮、レミリアの面倒見を務めるためである。

「兄貴」

「何だ?」

Remember(忘れるな。),No Japanese(日本語は禁止だ。).」

Understood(了解した。).」

 浦部は闇の森の中へと姿を消した。

 

 

 愛国者がどよめく倉庫の中、魔女のパチュリーノーレッジは睡眠薬の効果が切れて疎らながらも意識を取り戻した。とはいえ、配下の小悪魔や一緒にきた仲間達の所在、そして自分の居場所さえ把握できていない。ただ一つ理解できるのは、今は何かしらの行動は必要だが実行に移すべきではない状況で、自分が木箱のコンテナの中に閉じこめられている。その二つのみだ。

「落ち着くのよ…落ち着くのよ…」

 少々気には障るが夢の中で伝えてくれたあのスキマ妖怪の言うことを信じるほかないことに内頬杖を噛みながら承諾したことを思い出した。確か助けを送ってくれたんだっけ。全身真っ黒で奇妙な形の杖を持った男性らしい。奇妙な形の杖で思い出した。前に外から持ってきた武器についての資料の中に銃と呼ばれるものがあった。それは弾を打ち出してその運動エネルギーで対象を破壊する物理兵器である。そのおかげで非力な凡人でも扱いに長けていれば銃を手に取るや否や弾が尽きるまでは即死魔法に似通ったものを使えるという。もし自分も扱いを知っていたなら…いや、そんな想像は野暮だろう。

 信じる信じないどちらにせよ大人しく待つことしかできない。魔法もこの箱に入って以来どういうわけかつかえないでいる。かといって力業で押し切ることも虚弱なパチュリーにとっては難題そのものだ。

 ふと足音が聞こえる、なぜ金属の床で歩いたような足音なのかは分からない。でも愛国者の人間の足音なのだろうと判断した。

 でももしあの男ならと期待してその場合に備えよう。コンコンコンコンと叩かれたら木箱を短く四回叩いた後に二拍間を空けてまた一回、また二拍おいてからそのあとに二回叩いて一拍間をおいて二回叩く、また二拍空けて二回叩いて一拍、叩いて一拍待ってからまた叩く。それを繰り返すだけで助けてくれるらしい。モールス信号だが、幻想郷にて知りえたものだ。外の世界で通用するか…。

 少し揺れた後に遠くであらぶる稼働音を聞いた後にあの音が四回聞こえてきた。こちらもコンコンと返す。

 リズムを叩き終えたらパチュリーの木箱の蓋がめしめしと音を立てて開かれる。

「あんたがパチュリーノーレッジか。」

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