トレーラーの中はそれなりに荒れていて麻薬や木屑にまみれた銃が多くあった。それに半身を埋めるようにパチュリーに小悪魔、そして浦部がいた。
「ほら、迎えに来たわ。」
「レミィ。貴方が助けに来るとは思わなかったわ。手を貸してくれない?」
パチュリーがレミリアの手を借りトラックから出て行く。そのときに小悪魔はふと一つの塊を手に取る。RPG-7の模造品69式擲弾筒の弾頭だ。彼女もそれについての理解があったのだろうか、三本ほど弾頭を持ち発射筒を肩から提げてレミリアの手を借りトラックから出て行く。
「アンタは自力で上がれるわよね?」
「言うまでもありません。上がれます。」
浦部はふといやな予感を感じていた。愛国者は同じような失態を犯すのだろうか。もしかしたらそもそも無かったことにするのだろうか。トラックから這い上がり、アスファルトに足を降ろす。エンジン部分にて何かが光っていた。それが何かは言葉にする前から分かっていた。
「お嬢様方!早く車に乗ってください!このトラックは爆発します!」
「何ですって!?」
レミリア達はいち早くクイックデリバリーの中に駆け込みその後に浦部が続いて入る。碓氷も聞いていたのだろうか後部の扉を閉めるのを待たずにクイックデリバリーを走らせた。するとトラックは大きな音と爆炎を上げて燃え始めた。
「間一髪ね。」
パチュリーはやれやれと胸をなで下ろした。
「無事で何よりだわ。パチェ。」
「その言葉、レミィにそのまま返すわ。咲夜は?」
するとレミリアは瞳の奥をを曇らせた。感傷的になっていては領主としての威厳が損なわれるからあまり表情は変えなかったが、付き合いの長いパチュリーはすぐにまだ助け出せてないことを悟った。
「そういえば、この人たちは誰なんです?」
マイペースな小悪魔は浦部達に問いかける。彼らは無線やGPS等の通信機器を切って答えた。
「浦部が俺の名前だ。それで向こうでこの車を運転しているのがオタクの碓氷だ。」
「オタクですって!?やっぱ…」
オタクアレルギーなのか反射的に口を開いたパチュリーの声を遮るように銃弾が飛び込んでくる。後ろからは黒い高級車とSUV。愛国者に感づかれていたようだ。
「畜生!バレていたか!碓氷!振り切れるか!?」
「無茶言わないでくれよ!スポーツカーじゃないんだぜ!兄貴!」
何か無いかと浦部は見回すと途端に小悪魔の手にしていた69式擲弾筒に目をやる。
「おい小悪魔!そいつは!」
「役に立つかと思って持って参りました。使いますか?」
危ない綱渡りにはなるが、どちらにせよやるしかない。
浦部は縦に首を振り69式擲弾筒一式を受け取り保護材を抜き取り擲弾筒に差し込む。
「もう我慢ならないわ。応戦して良いかしら?」
「むしろしてくださいお嬢様!そして後で罵って下さい!」
「碓氷!そんなオーダー後にしろ!」
やれやれとレミリアは後部の扉を開くや否や92fの引き金を引く。せき込むような発砲音も車体とライフル弾の交える金属音の嵐の中に埋もれ、その弾は的確に愛国者の運転手に飛んでいく。しかし弾はガラスを撃ち破らず、ひびを残して弾き返される。
「何で弾き返されるのよ!」
「防弾ガラスです!そのバッグの中からM29リボルバーを出して下さい!」
その間パチュリーは勇ましく二丁拳銃で車体から身を乗り出している愛国者に対して45ACP弾を浴びせる。それが効いたか負傷し道路に落ちたり車内に戻っていく。しかし弾数が少ないためあっという間に弾切れになり薬室が開かれる。
「やば…。弾は…無いか。」
「パチュリー!下がってろ!」
擲弾を装填した69式擲弾筒を持って助手席から身を乗り出し、照門(リアサイト)と照星(フロントサイト)をSUVに重ねる。そもそも第三世界で有名なロケットランチャー(本来はグレネードランチャーに分類されるのだが便宜上ロケットランチャーとして扱う。)RPG-7にしても69式擲弾筒にしてもクルップ式と呼ばれる発射方式で発射時の反動を打ち消すために後方にガス圧による破片(カウンターマス)を撃ち出すためである。もしそれでレミリア達を傷つけるわけにもいかないがためにこうして身を乗り出して撃ち出したのである。
弾頭はエンジンに直撃し、SUVは炎に包まれ、豪快に部品と火花を散らして横転した。
「それなりに役立つわね。」
感慨深く呟くと同時にレミリアはリボルバーを手に追っ手の運転手に照門と照星を合わせて、引き金を引く。
火薬量がとりわけ多い44マグナム弾が銃撃で劣化した防弾ガラスを突き破り、その内側を紅に染め上げた。その車の行く末を見守ることなく浦部に向き直り叫んだ。
「咲夜は今どこ!?」
浦部は武器をVectorに持ち替えてせき込むような射撃音で応戦していた。リロードのときに嘘を言わずに事実を淡々と伝えた。
「既に船の中ですよ!先手を打たれてました!」
「嘘!?」
これには流石のお嬢様も驚くか。隣でパチュリーも顔を青ざめていた。
残る一台の高級車からは未だライフル弾が飛んできて車体に穴を開けていく。こなくそと浦部は引き金を引いた。独特のシステムが組み込まれたVectorは反動を打消し、高い命中率で追っ手の車に飛んで行った。
「どうにもならないのですか!?」
ヒステリックに小悪魔は叫んだ。それに返せる言葉は全くなかった。代わりに浦部は目障りな追っ手と交戦することで怒りをぶつけ、紛らわすことしかできなかった。
碓氷はふと音信不通の友人を思い出した。他国の国家権力の手先に猫の手を借りるのは御免被りたいが、それでもお釣りが十分来るぐらいの情報は与えてやっている。そして何より、レミリアやパチュリーの悲し涙は見たくない。むしろ見たいのは嬉し涙そのものだ。
「もしかしたら…頼む、マーク。」
碓氷は藁に縋るような思いでプライベート用のスマートフォンに電話を繋ぎ、インカムに耳を傾けた。
テコ入れ済み(20215・5・23)