迷いの竹林に作られた射撃場では、いつものように魔理沙と霊夢が拳銃の練習をしていた。射撃場とはいえ、廃墟の小屋の壁をぶち抜いて、柵を設けて小屋から約182m先の的の後ろに安土を盛っただけのものだ。そこでおよそ50mのところに何重にも書いた丸を顔につけた案山子を立てそれぞれそれで練習していた。成果は狙いこそ良くなったものの、二人ともまだ中央の3cmの黒印には当たってない。
今は撃つ弾も少なくなり、ブレザーを羽織った永遠亭の兎の鈴仙をひっくるめて暇しているだけだった。
「なぁ霊夢。」
「何よ。」
「どうして竹林の奴らは射撃場の建設を受け入れてくれたんだ?向こうのテリトリーだろ?それに茶菓子もついてると来た。」
「そんなの、今お茶を入れてる兎に聞きなさいよ。」
茶を出しながら鈴仙はその霊夢の言葉をはねのけた。
「私も知らないわよ。ただ、事故起こしてお世話するのはゴメン被るし私も下手なまねをされると困るわ。」
「医者なら医者らしくしてほしいぜ…。」
「お師匠さんにはお師匠さんなりの考え方があるんですよ。」
ぶーと口を尖らせて魔理沙のぼやきを返した。すると彼女に神妙な顔で視線を霊夢が向けていた。
「なに?」
「ねぇ、アンタは銃撃たないの?」
「撃って良いのなら撃つけど…何で?」
「あまり月の玉兎って訓練されてないみたいだけどアンタはどうなのかなってね。」
霊夢は以前月に行った際に都を巡りパフォーマンスをしている最中、玉兎兵のよからぬ噂を耳にしていたため、鈴仙の技量を疑っていた。思えば永夜異変の際もあの医者の側に仕えていただけあって難敵ではあった。
「別にいいわよ。」
鈴仙は快諾し、目を保護するための眼鏡と耳当て(紫から練習の時は必ずつけろと口を酸っぱくして言われたらしい。)を机の上に置かれていたルガーP08を手に取り、手慣れた様子でフルロードのマガジンを叩き込み、薬室に弾を送った。
「お?月の兵の腕の見せ所だな。」
「プレッシャーはかけないで。ブランクも大きいわ。」
鈴仙は構えて水滴がぽとりと落ちるように引き金を引いた。
軽い銃声と共に9mm弾は吸い込まれるように案山子の顔の黒く塗りつぶされた中央に突き刺さる。
続いて二発、三発と叩き込まれていくがいずれも弾は中央の黒い点に当たっているように見えた。
「チェック・チェンバー。マグアウト。」
掛け声と共に鈴仙はルガーの薬室を確認し、弾が入ってないことを確認するとマガジンを引き抜いた。
「どうなってるかしら…」
「見物ね。」
耳当て、眼鏡を外す鈴仙を差し置いて霊夢は先に的を見た。的の黒い点が撃ち抜かれて消えていた。
「これは…やるじゃない。」
「うわぁ…こいつはすげぇや…。」
的に近づいてきた鈴仙に、二人は向き直り、お互いに顔を合わせ、アイコンタクトを取ると霊夢は問いかけた。
「何?的はどうなってたの?」
「アンタ、最近人里で奇妙な杖が流れていているの知ってる?」
「長物の銃のことですか?」
話が早いと二人は心の中でガッツポーズを取った。銃術に長けていてそこまで理解を示していれば協力してくれると感じたためでたる。
霊夢は口を開いた。
「近いうちに本格的にその異変の解決に望むんだけど…手を。」
「組みません。こちらもお師匠さんの手伝いと姫様と忙しいのです。」
鈴仙が提案を突っぱねたちょうどそのとき、空間に裂け目が生まれ、そこから紫が現れる。
「二人とも。紹介したい人がいるから銃を持ってついてきて。」
「わかったぜ。」
はいはいと魔理沙はルガーをスカートの中に仕舞い込み箒片手にスキマのなかに入る。霊夢も懐に14式拳銃を突っ込んで
「鈴仙、考えておいてくれる?」
「考えるほどの余裕と時間があればいくらでも。」
当然、常修行と自分の業務に明け暮れている鈴仙にそんなものは無いに等しいが、その分の皮肉も込めて言った故か、むっと顔をしかめた。そのあと霊夢はスキマに飛び込んだ。
その後鈴仙はスキマが閉じると背中の茂みに人差し指を突きつけ、問いかけた。
「異変…ブン屋の貴方はどう思う?」
「あやや…ばれていましたか。」
人差し指の先の茂みからは木の葉にまみれたYシャツの少女がいた。幻想郷のジャーナリストの烏天狗の射名丸文だった。
「貴方は確かに風のように捕まえるのは難しいわ、でも見つけるのは容易いことよ。」
「月の兎にそこまで言われるとは…」
木の葉を払いながら茂みから出て溜息をつく射名丸にさらに追い討ちをかけるように鈴仙は指先を光らせた。銃で言えば薬室に弾を叩き込んで安全装置を外したところだ。
「意見は?」
「はいはい、今すぐ言いますから脅さないでくださいよ。お茶があると嬉しいのですが。」
「仕方ありませんね。」
鈴仙は手を下ろして肩の力を抜くと射名丸を小屋の中に招き、茶菓子と共に意見を交わした。