極東現想録ーcycle of crashー   作:(業)

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-Hostile shadow -

 熱海を一望できる山の展望台で黄昏ている眞鍋に起死回生のチャンスが回ってきた。幻想郷と呼ばれる異世界からの訪問者を確保し、港に送る。余裕があれば、姑獲殺しをしとめる。

 しかも今回は下っ端ではなく、どういうわけか本部は中国から特殊部隊をスタンバイさせてくれている。。理由は分からないがそれほどに異世界の住人は重要なのだろう。

 細い煙草を咥えて火をつけるて一服を始める。それから間もなくしてライダー用ヘルメットをかぶり革ジャンを羽織った中国人が流暢な日本語で問いかけた。

「君が日本支部の眞鍋だな。」

「そうだ、あんたが…。」

「それ以上は言うな、ここでは虎と呼んでくれ。」

「ああ、すまない。他の部下は?」

「既にアタミ市内に黒曜石と共に送ってある。もっとも、黒曜石は一つだけだが。」

 なるほど、ここまで手際よくやってくれるのか。眞鍋は紫煙を溜息に込めて吐き出した。

 そのとき、デフォルトのありきたりな着信音を響かせて携帯電話に支部長から連絡が入る。

「眞鍋、状況はどうなってる?」

「はい支部長。只今部隊が到着しました。」

「よし、こちらも二人を確保したのを確認した。いざというときはそれを使ってでも連れてこい。」

「了解しました。」

 これで手駒が増えた。これでうんと確率は上がるはずだ。

 今に見ていろ、姑獲殺し…。

 昼間の太陽は熱く照っていた。

 

 

 

 その頃、同じ竹林の永遠亭の一室では八意永琳が月からの伝聞を読み返していた。内容は霊力、呪術を封じ込める技術が漏洩したことに対しての啓発と警告。先日の天邪鬼討伐の事も関連している可能性も否めなくなったため、永琳は兎をあらゆらところに遣いに送り、情報を可能な限り仕入れた。今下手に動くべきではないことは分かっていたため、斥候を送り情報を可能な限り隠密に行った。その最中に紫からの射撃場の建設の要請がかかった。もし霊力が使えなくなったときを想定しての措置だろう。丁度そのとき普通の人間が扱える銃火器が幻想郷に持ち込まれているのを知った頃であったため、天邪鬼の件も他人事とは思えないため悪くない提案だったため受け入れた。

 結果、博霊の巫女と霧雨の魔法使いが使うようになる、永琳は念のため優曇華を監視役に置いた。銃の練度は低いようだが、往来を繰り返す度に高くなっていったが、銃の扱いの訓練をこれでもかと受けていた玉兎の一人の優曇華には遠く及ばないといっても過言ではない。問題は、漏洩を行った輩により月も博霊の者共から疑いを受ける可能性がある。本気を出せば払いのけることは容易だがその後の事を考えると得策ではない。

 そのとき、和風の寝間着姿の姫様、輝夜が襖を開けて目をこすっていた。

「永琳、おはよう。」

「姫様、調子は如何で…。」

「不穏な空気が流れていてあまり心地よくない目覚めよ。何か知らない?」

 やはり隠し事はできないかと開き直り手元の巻物を輝夜の前に差し出す。

「この伝聞を見ていただけますか?」

「これ?月からの伝聞?」

 輝夜は永琳の握っていた巻物を横からじいっと見つめた。そして問いかけた。

「ここに出てきた奴って月で暴徒鎮圧用に試作されたシステムのことよね。」

「その通りでございます。念のため調べておかないとなりません。もしそれが本当で、あの結界を破られることがあれば…」

 再び永琳は思考を巡らせる。その傍らで輝夜は頬を緩ませて口元を隠しながら言った。

「永琳、貴女竹林の外の事も気にするようになったのね。」

「私は月の技術の漏洩を目論んだ者の好き勝手にされるのが気にくわないだけです。もしその方が悪行を行えば私たちが不利になる可能性も否めないので。」

「今後のことを考えての対処を施すつもりね。あの訓練所を受け入れたのもその一環?」

「左様でございます。ここなら人目に付きませんし侵入者はここまで入ってこられない。ロケーションとしてもうってつけだったので。」

 なるほどねと他人事のように輝夜は頷いた。

 そのとき、廊下をどたどたとてゐが駆け抜けて仲間の兎と共に永琳の部屋に入ってくる。

「鈴仙から伝言と資料が来たよ!」

「内容は?」

 とりあえずこれをとてゐは複数の写真を突きつけた。写真にはこれまで集めていた情報が濃縮されていた。外の世界から流れてきた厳つい箱に入っていた原始的な火薬式の銃と弾薬、装甲のような黒い衣を身にまとった男たち。そして統率を担っている華人を写したもの。ブン屋の天狗から頂いたものらしいが、これは普段みるゴシップ記事より有力だ。しかし、本来天邪鬼が来るものだと思っていたため、意外と言えば意外だ。外で仲間を作ったか…。

「優曇華は?」

「華人について詳しそうな人が紅魔館にいるからブン屋と一緒にそこ行くってさ。」

「華人…あぁ、あの門番ね。分かったわ。」

 永琳は窓から竹林を覗いて緑茶片手に再び思考に耽っていった。

 

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