君に見つけて貰うまでの物語   作:新世界

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歌姫の見送り

「~~~~~~♪」

 

 高らかに歌う。

 楽しく、笑顔を振り撒いて。

 明日の希望を、輝かしい未来を、新しい世界を夢見て。

 明るく楽しくメロディが、私の声を彩る。

 

「~~~♪ ~~~~~~♪」

 

 向こうで皆はどう思っているだろうか?

 喜んでくれているだろうか?

 希望を持ってくれているだろうか?

 明るい笑顔を浮かべてくれているだろうか?

 

「~~~~~~♪ ~~~~~~♪」

 

 嘘ばかりの歌詞、虚構に満ちたメロディ。

 未来の希望を謳っているのに、語る言葉の先は空っぽ。

 新しい世界が来るなんて嘘っぱちだ。

 ただただ民衆の心を騙す為の(うた)

 

「~~~♪ ~~~♪」

 

 それでも私は歌う。

 絶望を振り撒いて終わる世界であって欲しくなくて。

 ほんの僅かな可能性を、一縷の希望を、それがまるで必ずくる未来のように嘯いて、高らかに歌おう。

 せめて旅立つ彼らの旅路に、祝福あれと。

 

「~~~~~~♪」

 

 私が夢見たあの星のように、呆れ返る程平和であれと。

 次元を越えて旅立つ皆に、大きく手を降った。

 それが死出の旅になるかもしれなくても、明るい未来が訪れるようにと流星に願う。

 もう二度と会う事はないとしても、私の歌が救いになれば良いと。

 

「…………」

 

 いつの間にかメロディは止まり、私はゆっくりとマイクを握る手を下ろした。

 新曲を、旅立つ皆の為の曲を歌い終えて、達成感と……胸をチクリと刺す痛みに顔を歪めた。

 これで、私の歌姫としての役目は終わり……。

 この星に残る僅かな人々はこれから……滅びの運命を辿る星でその時が来るまで生きていく。

 

「……ふふっ」

 

 ……これだけ人が減った状態で、そう長く保つと思えないけど。

 流石にひねくれ過ぎだろうか?

 まぁ、いいか。

 新世界の希望の歌姫としての私の役目は、終わったのだから。

 

「さて、明日から何しようかな」

 

 歌姫としてのイメージを壊さないように窮屈な日々を過ごしてきたんだ。

 暫くは全部忘れて好きに過ごそうと思う。

 ……そうだなぁ。

 何か、甘いものでも食べたいな。

 

「……彼みたいに、ケーキでも食べようか」

 

 人は減ったけれど、まだまだ物資は残っている。

 ケーキの一つや二つ食べたところで変わらないだろう。

 さて……ケーキ屋さんはどこだったかな……。

 いや、自分で焼くのも悪くないか。

 

「ふわぁ……」

 

 大きな欠伸をひとつして、大きく背伸びをする。

 引っ張られて伸びる背筋が心地よい。

 解放感……長く続いた偽りの歌姫の看板を肩から下ろして、ひどく清々しい思いだった。

 特徴的な宇宙船団が消えていった宙を見上げて、目を細めた。

 

「……呆れ返る程に、良い天気……」

 

 見渡す限りの青い空。

 燦々と降り注ぐ柔らかく暖かい日差し。

 肩から力が抜けたからだろうか?

 突然の眠気に逆らわず、その場にパタリと倒れこんだ。

 

「お昼寝しちゃおっか……」

 

 綺麗に切り揃えられたふかふかの芝生の上で、空を見上げた。

 すぅと鼻から空気を吸い込めば、草と土の匂いがした。

 脱力感のまま目を閉じれば、そのまま意識は遠くなっていく。

 ……ああ……なんだか、よく眠れそう……。

 

「くぁ……」

 

 小さな欠伸をもらした私は、そのまま微睡みに沈んでいく。

 ゆっくりと昼寝するなんていつぶりだろうか。

 これからはもう、時間を気にする必要はない。

 ただただ、ゆったりと、時を過ごしていこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夢を見る。

 

 平和で、危険で、穏やかで、荒々しく、楽しく、大変な、そんな日々を夢で見る。

 

 まだ旅人だった彼が、暴君をこらしめる夢。

 

 幾度となく夢で見た姿が映し出されて、今度はどんな活躍をするのかと胸が弾んだ。

 

 悪夢を撃ち破る夢。

 

 暗黒を切り払う夢。

 

 純白の闇を、白き翼を、仮面の騎士を、悪魔の道化を、偽りの天使を、鏡の魔神を、嫉妬の魔女を、暗黒の支配者を……。

 

 どんな困難も乗り越え、その身ひとつで突き進む姿はまさにヒーロー。

 

 活躍する姿を夢で見る度に、胸が高鳴る。

 

 闇を払い、希望を振り撒く姿は、まるで星のように輝いていた。

 

 ……その希望が、私達と交わる夢は、まだ見ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パチッ

 

 開いた瞳に飛び込んできたのは茜色。

 一部が紺色に染まり始めた空を見て、寝転んだまま大きく伸びをした。

 ちょっと寝すぎちゃったかな。

 鳴りこそしないものの、私の体は空腹を訴えていた。

 

「ケーキでも買って帰ろうっと」

 

 人はかなり減ったけれど町は機能している筈だ。

 いつか破綻する時が来るかもしれないけど、それは今じゃない。

 旅立った人達は見限ったこの世界だけど、このまま続く事も……有り得はする、かな。

 ……まぁいいや、今は取り敢えず……歌姫としてプロパガンダに協力し続けた事で有り余る財力にものを言わせて、好きなだけケーキを買い漁ろう。

 

「生クリームたーっぷりの~♪ イチゴショート~♪」

 

 立ち上がって、軽い足どりで町のほうへと向かっていく。

 モールのケーキ屋さん目指して、ゆったりと。

 即席のメロディに乗せて、笑みを浮かべながら。

 紺色に染まっていく空の下、見捨てられた星、夢の跡……私達はまだ生きていく。

 

「あまーいパイもあるといいな~♪ スイートフェスティバル~♪」

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