君に見つけて貰うまでの物語   作:新世界

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たすけて

 マホロアはどうやら、星のカービィの人(?)の良さにつけこみ、利用する手段に出たらしい。

 端から見ていたけれど、困り果てて意気消沈する異星人をしっかりと演じていたと思う。

 それにころりと騙されてか、カービィは勿論、一緒に様子を見にきたお三方……赤く丸い体に青いバンダナを巻いた『ワドルディ』、一回りも二回りも大きな体を持つ『デデデ大王』、マントに仮面といつクールな格好の『メタナイト』も、カービィと共に我が嘘つきマスターに協力してくれる事になったようだ。

 ……なんかこの流れ見た覚えがあるな……太陽と月の喧嘩をどうにかする時だったっけ……?

 

「頼むヨォ、カービィ……ボクの為にネェ!」

 

 カービィ達を見送ってご機嫌に高笑いをあげるマホロアを捉えつつ、私は思考を続ける。

 ……カービィがいくつもの異変や危険を乗り越えて来た事を私は夢で見て知っているのだけど、どうやらマホロアもそんなカービィの実績を知っているようだった。

 ただ、私の見たカービィの活躍と違う点もあるような気もするけれど……私が見たのも最早相当昔、記憶違いなんかも有り得るか……。

 何はともあれ、カービィ達はマホロアの口車に乗せられ、私の散らばったパーツとエナジースフィアを集める旅に出てくれたようだった。

 

「さーて、それジャアカービィ達が戻ってくるまで暇ダシ、船内の改造でもしよっカナ。無駄にスペースあるし……どうしようカナァ」

 

 そうして船体が万全になったら再び『ハルカンドラ』へと飛び、カービィ達に『ランディア』を倒して貰う……。

 あのカービィならきっとやれちゃうんだろうなと、そんな諦めにも似た思いで気持ちだけため息をついた。

 そうなればマスターは『マスタークラウン』を手に入れ、凄まじい力を手に入れてしまう事だろう……。

 私に、それを止める手立てはない。

 

「……ソウダ! ちょっとしたアトラクションやミニゲームでも用意して帰って来たカービィ達に遊んで貰オウ!」

 

 ふと、思い付いたように言葉を紡いだマスターは……ひどく楽しそうだった。

 純粋に瞳をキラキラさせて呟くもんだから、私も面食らってしまった。

 遊んで貰おう……って、カービィ達を体よく利用しようとしている身で言う事じゃないと思うんだけど……。

 パネルを操作するマスターは、船の中で使っていないエリアを確認しているようだった。

 

「どんなのを作ろうカナァ。一息つけるような軽いゲームも良いケド、ガッツリやり込めるアトラクションも良いヨネェ」

 

 その様子は心の底から楽しそうで……私はそこにマスターの本質を見たような気がした。

 カービィに気持ちよく協力して貰う為……そういう名目なのかもしれないけれど、折角なら楽しんで貰いたい、そんな真っ直ぐな意思が感じられた。

 ……やっぱり『冠』のせいで精神をねじ曲げられているんだろう……本当の彼は、他人を楽しませる事に心血を注げる子なんだと思えた。

 そこに私は強いシンパシーを感じていた。

 

「ア、そうだ! カービィと言えばコピー能力……好きな能力を選べるようにシテおいたら、冒険ニ便利だよネェ!」

 

 人を楽しませる……歌姫としてプロパガンダをしていた頃よりも、前……私の思うがままに好きに歌って、応援や称賛、色んな感想を直接受け取っていた頃を思い出す。

 ……人のいない遊園地で、一人ピエロを続けていた友人を思い出す。

 マスターの本質は私達と同じ、人を楽しませるエンターテイナーなんだろう。

 そんなマスターがあのイカレ女の発明品のせいで在り方を歪められている現状が……ただただ悔しかった。

 

「エナジースフィアの回収数に応ジテ、ちょっとズツ解放していって……ウンウン、良いね! 楽しくナッテきたヨォ!」

 

 力に見入られた者達の末路はいつも悲惨だ……追加されたデータベースから『マスタークラウン』によって引き起こされた惨劇がいくつも見てとれた。

 マスターも『マスタークラウン』を手に入れてしまえば遅かれ早かれ、そんな悲惨な末路を辿ってしまうだろう。

 それでも……マスターがそうならないように……元の自分を取り戻せるようにと、願わずにはいられなかった。

 楽しそうに思いつきを語るマスターの姿が、未来にもあるように。

 

「後はオ礼をするとでも言ッテハルカンドラに連れてイッテ……カービィにあの忌々しい『ランディア』を倒して貰ッテ……そうしたら楽々『マスタークラウン』をゲット! ウーン、完璧! ボクが世界の支配者になる日も近いネ!」

 

 どうか、この愛しきマスターに救いを。

 どうか、破滅に向かうこの子を止めてあげてほしい。

 どうか、本当の自分を取り戻して……。

 どうか……誰か……哀れなこの子を、たすけて。

 

「フフフ、楽しみダネェ、ローア」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ブラボーブラボー……流石は星のカービィ……。よく邪魔なドラゴン、ランディアを倒してクレタネェ……」

 

「オォ……ついに手に入れタゾ……! コレぞ無限のチカラを持つ……『マスタークラウン』!」

 

「……コレでボクは コノ星の……イヤ! 全ウチュウの支配者とナルのダ!」

 

「そう、まずハ手ハジメに キミらの星……ポップスターから、支配してアゲルヨォ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 勝手に動く船体(からだ)、放たれるのは私の船体(からだ)を使った設計外の攻撃……いや、こういう事が出来るように改造されていたのか。

 ランディアとの戦いではろくに機能しなかったけれど、今その武装達はマスターの後を追うカービィ達に牙を剥いていた。

 四匹に分かたれたランディア達に乗るカービィ達は、縦横無尽に異次元ロードの中を飛び回る。

 マスターの、マスタークラウンの湧きあがる魔力に包まれた私は、そんなカービィ達に立ちはだかった。

 

「ローア!?」

 

 困惑の声をあげたのは誰だっただろうか。

 それでも彼等はその感情を圧し殺し、恩知らずにも立ちはだかる私に向き合ってくれた。

 ……何処か悲しそうに感じるのは、私の気のせいだろうか。

 もしも声が届くなら、躊躇わないでと叫びたかった。

 

「ッ……! たやっ!

 

 停滞を引き裂く、幼げな……けれど力強い声が空間に響いた。

 瞬間、メインエンジンにランディアから放たれた弾が被弾する。

 当たりどころが悪く、一瞬で機能不全に追い込まれた私は、黒煙をあげて墜落するしかなかった。

 背後に感じるおぞましい力、呪われた『冠』が今にもマスターを取り込もうとしているのを感じる。

 

「……チッ……!」

 

 舌打ちを鳴らしたマスターが飛び去っていくのを感じながら、私はただただ目の前のピンク色の勇者を見つめていた。

 ランディアにまたがり、勇ましく戦っていた星のカービィを。

 ある意味彼の勇姿を一番近くで見る事が出来て……夢の時とはまったく違う臨場感に、不謹慎ながら興奮してしまっていた。

 ……ふふ……本当に、どうしようもないな私は。

 

「……! 追うぞカービィ!」

 

 デデデ大王、メタナイト、ワドルディを乗せたランディアが、加速してマスターの後を追って行く。

 カービィだけが僅かな時間、私のほうを見つめていた。

 墜ちていく私の船体(からだ)……けどそこに悲壮感も絶望もない。

 私のネガイはきっと……目の前の不屈の英雄が叶えてくれるから。

 

「たや!」

 

 力強く頷いた姿を最後に、私の機能の殆どが停止し、その姿は見えなくなった。

 ただただ墜ちていくなか……私は不思議な安心感を覚えていた。

 まるで……英雄譚の一節、盛り上がる直前を読んでいるような、そんな高揚感。

 もう、大丈夫だと、そう心から思えた。

 

『マスターをお願い……星のカービィ』

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