君に見つけて貰うまでの物語 作:新世界
コンコン
コンコン
…………。
ゴンゴン
ゴンゴン
……うるさいな……。
ドゴンドゴン!
ドゴンドゴン!
いや、痛っ!
痛いっ!?
何!?
何事!?
「クルルルル……」
……え、あ……赤い……竜……?
四つ首の竜ランディアから分離した……いや、元々四体だったのが融合してた……どちらかはわからないけど、そのうちの一体が私を見つめていた。
さっきまでカービィ達を乗せてしこたま
「グルァ……!」
そして何かを訴えるように上空……異次元ロードの中に上や空といった概念はないけど……に向かって吠えていた。
……その先、隔たれた空間の先にあの忌々しい『冠』の気配がする……。
そして微かに残る、マスターの魔力……力に呑み込まれて暴走しているようだった。
対峙するは目映い輝き……希望に満ちた星の力を感じる。
「グルル……」
助けに行こう、って事かな。
よくよく見れば、周囲には他三体のランディアの姿もある。
そのどれもが傷付いているけれど、まだまだ戦意は衰えていないようだった。
バサバサと力強く翼をはためかせる四体の竜の姿に……希望を失っていない姿に……エンジンに火が点る。
「「「「グォオオオオオオオオオン!」」」」
ゲートを開くのは……道を作るのは私の役目だ。
無事に運んでみせる……今度こそ。
マスター……そして、カービィ。
今、会いに行くよ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『ッ――――――――――――!』
異形と化した、黄金の冠に囚われた魔術師が、その体を崩壊させていく。
おぞましい力が、澱んだ魔力が、爆発とともに霧散していった。
やがて残ったのは、元の姿、青い衣の虚言の魔術師……マホロア。
宙に浮いた状態で目を閉じた魔術師に意識はなく、上へと登っていく。
バリンッ
そして、被っていた金色の冠、『マスタークラウン』が、音をたてて砕け……その姿はそのまま何かに吸い込まれるように消えていった。
そんな様子を、異形と化したマホロアを見事に倒したカービィ達は静かに見届けていた。
言葉に出来ないオモイを胸に秘め、彼等は小さく俯いた。
……しかし、そんな状態の彼等を置いて、事態は推移していく。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
現在いる空間が音を軋み始める。
極彩色の空間の中、足場が次々と崩壊していった。
慌てるカービィ達だが、彼等に今この空間をどうこうする事は出来ない。
どうしよう、もうおしまいかも、バンダナを巻いたワドルディの目が潤み始めた。
ギュオオオオオオン
その時、この冒険の中幾度も聞いた、空間が裂ける音が響き渡った。
思わず見上げたカービィ達の視界に、抉じ開けられた空間と、そこから飛び出す大きな影が飛び込んできた。
先程カービィ達がランディアと協力して墜落させた船。
この冒険でパーツを拾い集めやっとのオモイで修理した、空飛ぶ船。
「! ハーイ!」
笑顔で手を振るカービィに、天かける船ローアから四つの影が飛び出した。
赤い体に翼を広げた、つい先程マホロアに撃墜されてしまったランディア達が、カービィ達の元へと飛び込んでくる。
ランディア達がカービィ達をそれぞれかっさらい飛び上がると同時に足場は砕け、空間は崩壊していく。
そこから新たにローアの前に作り出された異空間ゲートへと、ランディア達は迷うことなく飛び込んでいった。
『…………』
最後に、崩壊していく空間の中、ローアだけが残る空間。
ローアは僅かな時間、その空間で佇んでいた。
マスター登録されているマホロアの存在を感じとろうしてレーダーを起動させるも、既に何の反応もなく、ただ空間が崩壊する音が響くだけ。
やがてそのまま、諦めたようにローアは異空間ゲートを通り抜けていった。
キュオオオオンッ
異空間ゲートを通り抜けてローアが飛び出した先は、涼やかな草原が広がる、見覚えのある光景だった。
カービィ達も無事にたどり着いていたようで、草原に転がって、頭に花を乗せたデデデ大王を見て笑っている。
空気は澄み、豊かな自然と、穏やかな住人、呆れ返る程平和な星ポップスター。
帰って来た、その達成感にカービィの表情も穏やかだった。
「「「「クォオオオオオン」」」」
上空にて、飛び交うランディア達の咆哮が響く。
それは勝利の雄叫び、彼等の使命としていた『冠』の守護はならずとも、見入られてしまい異形と化した哀れな魔術師の討伐はなった。
それを成した勇者達へと惜しみ無い称賛の声をあげながら、ランディア達はポップスターの平和な空を飛び交っていた。
ローアはその咆哮に呼応するように異次元ゲートを開く、彼等を元いた場所へと帰す為に。
「バーイ!」
新たに開いた異次元ゲートへと飛び込んでいくランディア達とローア、それを見上げてカービィは声をあげた。
小さな手を大きく振って、友達に別れを告げようと。
この冒険で新しく友達になったランディア達、ローア、そして
またね、とカービィは目を細めた。
『バイバイカービィ……』
「……ぽよ?」
ふと聞こえた聞こえた聞き覚えのない声に、カービィは目を丸くする。
辺りを見回してもメタナイト、デデデ大王、ワドルディの他には誰もおらず、彼等はその声に気付いていないようだった。
首を傾げて再度空を見上げれば、そこには閉じかけている異次元ゲートだけがあった。
カービィは最後にもう一度力強く手を振った。
『……ありがとう』
「……ぽよ!」
力強く答えたカービィの声は、真っ青な空に吸い込まれていった。
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『……マスターは、次元の彼方で行方知らず……か』
異空間の中で『船』である私はエンジンを最低限にして静かに佇んでいた。
カービィ達をポップスターに送り届け、ハルカンドラにランディア達を送り届けて……再び異次元ゲートをくぐって……そこで途方に暮れていた。
AIの思考回路としてマスター権限を持つ存在を求めているのだけど、いくら探そうとマスターの反応は依然として感知出来なかった。
異次元ロードの中は空間として滅茶苦茶で重力も常識すらあてにならない……そしてそれは、止めどなく流れる筈の時ですらも。
『もしかしたら未来や過去に跳んだ可能性もある……』
そうしたらお手上げだ。
けれど、マスターがもしその身のまま、自身の保護すら行えずに異次元ロードの中に消えてしまったのであれば……その行く先は
確かに異次元ロードの中であるなら、未来や過去に飛ぶ事も出来るけれど……それで見つかるとは到底思えなかった。
『……どうしようかな』
体があればため息をつきたい……想像の中の私が肩を落とした。
マスターは生きている、そう信じているけれど……現状私に出来る事はそう多くなかった。
結局は異次元ロードの中、マスターの反応がある事を信じて探し回る事だけ……。
異次元ロードというどこまで存在しているのか定まってすらいなさそうな空間で、たった一人の迷い子を見付ける……その途方も無さになんともやる気が失せてしまってスフィアエンジンに火が点らない……。
『はぁ~あ…………え?』
そう内心でため息を吐いた時、ピンク色の何かが視界の端を通った。
ピンク、という事でカービィが頭を過ったけれど、その何かは球体ではなく……人型のように見えた。
なんだ人か……いや、人!?
異次元ロード内で生身の人!?
『れ、レスキューレスキュー!』
私は思考を切り換えて、そのピンクの人影……異空間ロードの中を漂う少女を助ける為にスフィアエンジンを稼働させるのだった。