君に見つけて貰うまでの物語 作:新世界
願いを叶える大彗星、なんともロマンのあるお話だった。
流れ星の事かと言えば、なんでも無数の星々を繋ぐ事で呼び出し、願いを叶えてくれるという意外と具体的な話であった。
その大彗星に帰りたいという願いを叶えて貰おう、というのがスージーちゃんの提案だった。
星を繋ぐ……どうやってと思えば、星に古くから設置されている『夢を司る泉』に祈りを捧げていく事で繋げていく事が出来る……らしい。
『……泉、ねぇ』
なんだかそこはかとなく嫌な予感がした。
とはいえ、宛がある訳でもない……手懸かりもない。
あらゆる世界、時代を行き来する事が出来る『船』にとって、一つの銀河の星々を回る事は大した労力でもない。
ならその可能性にかけてみる……ダメで元々、一先ず試してみようという流れになった。
【了承致しました。目的はそれぞれの惑星の『夢を司る泉』、そうして現れる大彗星。並行し貴女様の治療と……乗り物をご用意致しましょう】
私の言葉に、スージーちゃんはきょとんと瞳を瞬かせた。
目的と治療は言うまでもない事だけど、乗り物……これは大事だ。
マスターのマホロアは魔術師であり自分の力で浮遊も出来て、様々な力を持っていたが、スージーちゃんは本当にただの子供だ。
星に降り立ち、『船』だけで事を済ませられれば良いけれど……『船』とは独立した移動装置が必要になる時がくるかもしれない。
「のりもの……じゃあ、えっと、はい! わたくしからていあんさせてください!」
その提案は、『ハルトマンワークスカンパニー』で開発されているアーマーが良い、というものたった。
乗り込み型の作業用ロボットであり、まるで手足のように操れる主力商品の一つなのだとか。
適当に、浮かぶボードに風避けをつけた程度のものを想定していたのたけど……そういう要望があるのなら叶えよう。
とはいえ少女の覚えてる程度の情報で同じものが作れる筈もない……結果的に似たような別物となるだろうけど……軽く聞く限り搭乗者の安全を第一に考えられたものなのだろうし、やれるだけの事はやってみようか。
【承りました。それでは製作に取り掛かります。もしもご意見ご要望ありましたら、遠慮なくお申し付けください】
スージーちゃんが安心して探検出来るように、しっかり設計図ひこう。
マスターが素材を船内にそこそこ残していたから、それを使って……うん、問題なさそうだ。
後はスージーちゃんの治療も続けないとね。
ご飯も栄養のあるものを作って……ふふ……忙しなくなってきたね。
「は、はい……! よろしくおねがいします……!」
ペコリと行儀よく頭を下げる少女の健気な姿を見て……私は決意を新たにする。
必ずこの子を家族の元に返す……。
そう強く心に決めたのだった。
……さて、お粥が出来たから食べて貰おうかな……何はともあれ腹拵えから……体が第一資本だからね。
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少女を乗せた『船』は、異次元ロードをくぐり抜けた。
『夢を司る泉』の存在する銀河は、幸運な事にすぐに見つかった。
それはピンク色の英雄、はるかぜのたびびと、星のカービィが住むポップスターの存在する銀河だった。
『船』はその偶然に存在しない眉をしかめた。
「きれいなおほしさま……」
モニターに映し出されたポップスターの姿に、スージーは感嘆の息を漏らす。
ポップスターが平和であることを『船』は知っている為、ポップスターの探索は後回しにし、他の星の『夢を司る泉』の捜索に行こうと提案した。
スージーは少し名残惜しそうにしていたが、後の楽しみだと思い直してポップスターに背を向けるのだった。
そして、『船』とスージーの旅が始まった。
「~~~♪ ~~~~~♪」
歌を口ずさみ、試作アーマー『レインバー』に乗るスージーはご機嫌な様子だった。
真新しいピンク色に塗られた『レインバー』は星を駆ける。
凶暴な原住民を大人しくさせつつ、『船』のサポートを受けながら一つまた一つと『泉』を見つけ繋げていく。
順調な旅路であった。
【システムチェック……問題ありません。新たな素材を手に入れました……解析中……更新されました。新たなアップデートは此方になります。『レインバー』の強化を行います。強化する項目を選択してください】
道中手に入れたその星独自の素材を使い、『レインバー』の性能も強化されていく。
最初はぎこちなかった動作も洗練されていき、またスージーの操作も上達していった。
既に『船』のアシストもなく、『レインバー』を手足のように操っていた。
治療の方も順調であり、最早外傷は殆ど残っておらず、つるんとした柔肌で元気に星々を飛び回っていた。
「これで……トドメ、ですっ!」
『レインバー』の放つ光線が、何処か薄っぺらいドラゴンを撃ち抜く。
原住民……と呼ぶにはあまりにも奇妙な存在、文字を表示しながら消えていくそれを見送り、スージーはきゃらきゃらと嬉しそうに笑った。
やがてたどり着いたのは『杖』が頂上に飾られた泉、『夢を司る泉』……そこでスージーは祈りを捧げて歌を口ずさむ。
これが銀河の最後の泉……星と星、全てを繋げた事でネガイを叶える万能の願望器を星々に集められたユメのエネルギーが充たした。
【READY・>】
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『…………まずい……!』
宇宙空間に現れたそれを認識して、そう感じた……。
嫌な予感の通り……いやそれ以上にヤバイのが出てきた、と。
顔のついた懐中時計とでも形容出来る巨大な機械の星……『ギャラクティック・ノヴァ』……ネガイを叶えるという謳い文句の正誤はわからないけど、絶対にろくな事にならないと確信が持てた。
……わかるんだ……これはあの女の発明品で……『
【アナタの・ねがいを・ひとつだけ・カナえて・さしあげマス・・・>】
何故か宇宙空間に響き渡る機械的な言葉に、スージーちゃんは目の前の存在を、『レインバー』に乗ったまま甲板の上で見上げた。
金色の巨大な彗星は、ギョロッとした瞳でスージーちゃんを見下ろしている。
スージーちゃんの瞳は、伝説に出会えたからかキラキラと光り輝いていた。
……けどこれは、絶対にそんな良いものじゃない……!
「あの、アタシを……もといたばしょに……!」
【お待ち下さい】
私は咄嗟にスージーちゃんを止めていた。
私には確信があった……一度ネガイを口にすれば、これは止まらない。
そしてそのネガイを……正しく叶えてくれる保証はない。
あの女の発明品が、そんなまともな筈がない!
「……?」
首を傾げるスージーちゃんには悪いけれど、あまりにも不安な要素が多すぎる。
このままただお願いしても、ろくな事にならないという確信がある。
……少なくとも、コレに全てを任せるべきじゃない。
とはいえ折角呼び出したのに何もしないというのも……今まで頑張ったスージーちゃんが報われない……よし……それなら。
【ネガイを貴女様の元いた場所の座標にしていただけませんか? 私ならば座標さえわかれば、必ず貴女を元いた場所へと送り届ける事が出来ます】
私の言葉に、スージーちゃんは僅かに顔をしかめた。
それは、目の前に手っ取り早い方法があるのに、という呆れ、近道を邪魔された憤り、そして私を理解出来ない悲しみがない交ぜになった複雑な表情だった。
私も本来ならそんなまどろっこしい事をしたくないが……今回ばかりは我が儘を通させて貰わなければならない。
あの女の発明品に見入られたマスター……マホロアの末路を考えれば……それよりもタチが悪いだろうこの彗星に身を任せる選択肢はなかった。
【……仮マスターであるスージー様を故郷へと送り届ける役目を果たしたいのです。どうか聞き入れていただけませんか……?】
だからこそ、少しズルいけど……良い子であるスージーちゃんの良心を揺さぶらせて貰う。
こう言えば、良い子であるスージーちゃんに否はないだろう。
……まあ、まるっきり嘘という訳でもないからね。
最後まで責任を持って送り届けたいというのは、本音でもある。
「あっ、うーん……」
私の言葉に、スージーちゃんは悩む素振りを見せた。
腕を組んで、首を傾けて……ここまできたら貰ったも同然。
卑怯な自覚はあるけど……うん、ごめんね。
でも、責任を持って必ず貴女は故郷に送り届けるから……!
「……うん、わかった。ローアさんがそこまで言うなら……」
【OK> 3・2・1・GO!>】
…………!?
な、何……!?
こっちは、スージーちゃんは何も言ってないのに……!?
勝手に動き出した……!?
「えっ……!?」
ゴゴゴゴゴゴゴ
ブースター音を響かせて、此方に背を向ける彗星。
唖然とする私達を置いて、機械仕掛けの星はぐんぐんと加速していく……。
その先は……光輝く……呆れ返る程に平和なユメの星。
ポップスター。
【っ……! スージー様、申し訳、ありません……!】
「えっ、えっ……!?」
スフィアエンジン点火、エンジン全開!
何をするつもりかわからないけど、絶対にろくな事じゃない!
何が起きたか理解するかは、後。
ここで止めないと……良くない事が起きる気がする……!
【あの機械仕掛けの星……恐らく
「……どう、するんですの……?」
不安げな様子で言葉を溢すスージーちゃんには、本当に……本当に申し訳ない。
でも、ここでアレを見逃したら、絶対に何かをやらかす確信がある……!
必ず、必ず貴女を元いた場所に帰すと約束するから……だから。
だからどうか、今は協力して欲しい……!
【あの星を破壊します。アレは、この世界にあってはいけないのです……!】