君に見つけて貰うまでの物語 作:新世界
あ、ああああああああ……!
いたい、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!
私は今、何をされているの!?
何も見えない、何も聞こえない!
ただただ、凄まじい苦痛が全身に走っていた。
いや、体があるのかすらわからない。
声も出ない、体も動かせない!
私、は、一体、どうなって、いるの……!?
ブチブチブチブチィッ!
あぁあああああああああああああ!?
痛い痛い痛いぃ!
引き剥がされてる!?
私から、大事な何か、がぁっ……!
やめて!
やめてぇっ!
やめてぇえええええ!
あぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!
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「完成したよ、歌うAIだ。ご注文どおり作詞作曲も出来る筈さ」
『博士』はそう言って朗らかに笑った。
そこには一仕事終えたという達成感が滲んでいて、完成したそれを満足そうに見上げていた。
「ついでに次元移動の安定性の向上やら、目標座標の特定速度の向上等々した結果、君達の宇宙船に追加でかなりパーツを取り付ける事となったけど……構わないだろう? 君達の乗ってきた宇宙船とはまた文字通り次元の違う代物となった筈だ」
視線の先には船が一隻、佇んでいた。
宇宙船、そう語ったがその形はまるで帆船のようだった。
ついている理由のわからない帆とオールは、そう言われなければ宇宙船だとは気付かないだろう。
「さあ、この新たな宇宙船をどう使うかは君達次第だ。確か新たな安住の地を見付けるのだったかな? この星はお気に召さなかったようだからね。それも仕方ないがね……この星は有機生物が生きるにはあまり適さない。とはいえ鉱物資源は豊富だから、もしも旅先で資源に困る事があればいつでも戻ってきたまえ。歓迎させて貰うさ」
嬉しそうに笑う協力者へと、『博士』もまた微笑みを浮かべた。
今回の『実験』は大成功だ、と『博士』は心の底から笑っていた。
何せ、依頼をこなす傍らで、別の実験のモデルケースにもなったのだから。
自室に戻った『博士』は、デスクに乱雑に放り投げられたレポートに改めて目を通した。
「ふふふ……エネルギー効率が過去最高だ……一つの有機生命体から捻出されたエネルギーとはとても思えないな……人のユメ、オモイ、ネガイ……これらのエネルギー化は星の杖システムで成功させていたが……このやり方での効率があまりにも良すぎる」
椅子に勢いよく腰掛ければ、背凭れがギィと音をたてた。
ギシギシと音をたてる椅子に身を任せながら、『博士』は思考を加速させていく。
「しかしながら、元が消費されてしまうのが難点な上に、抽出した後の処理に困るな。……いや、此方も上手く活用出来そうな気がする。もう少し試してみよう。ワタシの構想通りならば、この実験に加えて試作の『鏡』も参考にすれば『冠』の完成度を引き上げられる……!」
視線をあげた『博士』の視線の先には、設計図が刻まれた画面が映し出されていた。
『博士』がそれに手を加え続けていく。
その瞳は見開かれ、口元はつり上がる。
狂喜、そう呼べる程に狂った雰囲気を醸し出しながら、その手は止まる事はなかった。
「ただこのままじゃ使い捨てなのは確か……その点で言えば『杖』は素晴らしい。回収効率では明確に劣るものの、ほぼ永続的なエネルギー。だが一本で設置した星の有機生命体全てから回収出来るとはいえ、やはり微々たるもの……ワタシが求めるエネルギーが満ちるまでには……試算で軽く数百年はかかる……」
画面に映るのは、星がついた杖、羽の生えた鏡、金色の冠。
それらへと逐一手を加えて、『博士』は悩ましげに唸る。
かけている丸メガネが画面の光を反射し、キラリと光った。
「一長一短か……まぁ、まずは『冠』の完成を目指すかな。ふふ……今回の『船』……予定にはなかったものだったが……」
ふと手を止めて、浮かび上がった画面を満足げに眺めた。
「ふふ……ネガイを叶えるというのも良いものだ。良い事をした後というのは気分が良い……更にワタシの目標にも近付く、彼らも
『博士』はそう言って微笑んだ。
心の底からそう思って、満足そうに。
一つの有機生命体を実質終わらせたにも拘わらず、微塵も気にする事なく。
「ふぅ……さぁ、データを纏めよう……『船』の完成度は高いが、所詮は一つの有機生命体が元だ。なんらかの不具合が発生する可能性もある……となると、ここはやはり別に似たようなものをとり急ぎ製作するか? ここであの『船』が次元の狭間で藻屑になるのはあまりにも惜しい……起き得ないと半ば確信してはいるが、盲信するのは違う。万全を期してこそ、天才たるワタシの製作物として相応しいというもの……となると」
そこで『博士』の淀みなく動いていた手が止まった。
画面には、一つの星が映し出されている。
その星を、『博士』は目を細めて眺めた。
まるで、宝石箱を眺めるように……細めた瞳はひどく輝いていた。
「モデルケースと同じ場所から採取してみよう。何、数少ないとはいえまだまだ
『博士』は再び、手を動かし始める。
思考を続け、逡巡し、思いつきを設計図という形にしていく。
やがて集まるだろう
赤い舌が唇を濡らし、狂気的な笑みを浮かべ、『博士』は映し出される画面を舐めるように眺め続けた。
「……まずは、そうだな、複数の個体から引き剥がして加工し、一つに纏めてみよう。『船』は一つだけだし……まずは二つから。ふふふふ、楽しくなってきたね。科学は、実験は、トライアンドエラーの連続だ。さあさあ、やっていこう。管理AI.0起動。新しく材料の採取を頼むよ。今回は根刮ぎで構わない。楽しみでしょうがないな……さて、何を作ろうかな!」
見開いた瞳は狂気にまみれ、爛々と妖しい光を放っている。
そんか彼女の側には誰もいない。
残酷な所業を止める者は誰一人いない。
「ワタシの宿願、万能の願望器完成の為に、邁進していくとしよう」
彼女は、止まらない。
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―起動信号確認。
―各システム確認中……。
―反重力装置……正常。
―宇宙航行装置……正常。
―空間転移装置……正常。
―空気浄化装置……正常。
―水質浄化装置……正常。
―冷凍睡眠装置……正常。
―生命維持装置……正常。
―音楽再生機能……正常。
―楽曲歌唱機能……正常。
―作詞作曲機能……正常。
―…………全システム、正常。
―起動します。
―……起動成功。マスター権限を持った生命体の反応を検知。
―指示をどうぞ。
―未知の座標への転移、探索の為の航行。
―その間の音楽再生、ならびに楽曲歌唱。
―並行し新たな楽曲の作詞作曲……了承致しました。
―反重力装置起動します。
―空間転移装置起動します。
―座標確認……捜索中……発見しました。
―異空間ゲート生成……安定まで3、2、1……固定完了。
―全システム正常作動、いつでも航行可能です。
―起動指示……確認。
―航行開始。
―スフィアエンジン点火。
―船体が浮上すると共に異空間ゲートへ突入します。
―カウントします。
―3。
―2。
―1。
―0。
―異空間ゲート突入、空間転移開始します。
―目的地への到達予想……おおよそ6時間23分後となります。
『快適な航行をお約束致します』
―楽曲再生。
『皆様の健やかな日々をお約束します』
―歌唱開始。
『~~~~~~♪』
―各機能……動作正常。
はやく、あいたい。
『~~~♪ ~~~~~♪』
―……スフィアエンジン出力上昇……?
かれを、みつけたい。
『~~~~~~~~♪ ~~♪』
―当AIに僅かにノイズが発生……対処中……スフィアエンジン出力調整します。
わたしを、みつけて……。
『~~~~~~~~♪ ~~~~~~♪』
―……システムチェック……問題なし、スフィアエンジン出力安定……到着予想時刻が僅かに早まりました、およそ6時間17分後となります。
―異次元通信機能起動、グランドマスターへと今回のデータを送信……完了しました。
―引き続き航行を続行します。
―並行し、新たな楽曲の作詞作曲に取り掛かります。
―希望されたテーマは『海』です。
―暫くお待ち下さい。
『~~~~~~♪』
―私は制御AI.N。
―天かける船です。
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