「では、何も覚えてないんですね?」
「はい、お役に立てず申し訳ないです」
「武器をさばくのに集中して顔はわからない、」
「……」
事情聴取、人為的な怪我なのだから当たり前だ、傷は縫ってもらった。でも俺は呉キリカに届かないように情報を提供する。
「不審者に関しては警察に相談してほしかったですね」
「すいません、証拠も私の証言だけなので」
「顔は見てないんですね?」
「はい……」
「わかりました………近隣住民にも聞き込みしてみます。なにか思い出したら、どうぞ連絡を……それで君のほうなんだが……中学生だよね?」
「ああ、神廻組の現組長で頑張って復興をしている」
なんであの場にいたかという理由は、もちろん島を荒らされたら調べるのは同然だろ、と聞いたら納得してくれた。ヤクザって便利でいいねぇ。
詳しくは、数日前夜になると家の周りを怪しい何者かが彷徨いていたのを見てから夜廻りをしていた浅古さんがその人物を発見。相手も明らかに狼狽えて逃げ出し、浅古さんが追いかけ、五郷工業跡地で武器を使われて、左胸と肩を浅く斬りつけられた。
行方は浅古さんの妹さんにに相談を受けており、浅古さんが五郷工業跡地に居るのをGPSで確認し夜遅くに何を、と不安に思い向かい、その後のことは良く覚えていない。ショッキングな場面だから気絶させたことにておいた。
でもって俺の方だが…
「黒い斧にも似た爪だった、到着したときに見たのはそれとは別に蛇腹剣のようなものを使用していた、そっちの娘が受けたほうだな、ウルミじゃなくてそっちを持っていたから、恐らくは自作だろう。どちらにせよかなりの手練だ、鞭のように打撃だけならまだしも、切傷もできる蛇腹剣を複数扱うなら、練習も必要のはずだ、計画犯の可能性が高い。身長は150後半、かなり低い」
「それで本当に顔わからないの?」
「ああ、止血しながらだったからな。持っていたジッポで可燃性のものを燃やしたが、軽傷のはずだ」
「なんでそんなものを持っている……そして一歩間違えれば過剰防衛に…」
「それは頑張ってもみ消すよ、それに武器持ちにそれくらいやっても問題はないだろ。ジッポは知り合いに貸すと言われたんでね、いつか返すために肌見放さず持っている」
「そ、そうか」
少し驚かれながらもその特徴を伝えておく。なんでここまでの記憶違いが起きるか、簡単だ。お嬢様学校に通う少女と、ヤクザの組長および、神隠し経験者肝の座り方が違うのだ。だから彼方と浅古さんは真実を話さなかった。話すことができないという当たり前で、呉キリカを魔法少女という異常を隠し通した。
「でも、蛇腹剣は強度が弱いからな、薙ぎ払うのが目的なら槍やハルバードとかの長物のほうがいい、それに、刃物をつけるより鉄球をつなげたほうが殺傷力がある。それにナイフを差したほうが傷が深い、爪などできり裂くよりも効果的だ」
「君……内臓に届いてたからね?内臓自体に傷はなくとも、気を抜けば外に出てくるような重傷だったからね?」
「そんなことにはならなかったでしょう、実際、今重傷なのは出血が多かった……浅古さんのほうだ」
「うん、聞いてて私も理解してない」
「うん、神廻くんの方には情報を渡しておくけど、外に漏らさないでね」
「了解です」
警察が去っていったので、他の魔法少女を呼んで、と言ってもマミとほむらだが、なぎさはさやかと杏子に任せている。呼び出して到着を待っていると。彼方さんが浅古さんに詳細を聞いていた。
「それで、昨日のアレなんだよ………小巻は何時から超能力者になったわけ」
「あれはどっちかと言うと魔法で……まあ詳しい話は……それに、私も理解してない行動を取っていた奴もいるし」
「神廻四季だ。あれば血法というものだ。浅古さんの技が魔法だとするなら、俺のは魔術に近い、厳密には違うけどな」
【魔法】魔法は神や精霊など【人智を超越した存在の力】を借りて奇跡を起こすものを指し、【魔術】は世界に存在するエネルギーや法則を解明し、技術や理論によって再現するものを指す。だからこの場合血法も魔術としていいだろう。
そして、確かにあの場にいたのは確かなんだけどさ、
「お前には聞かれたくなかったね」
「なるほど……魔術か、確かに今の人間にもそれはある。でも随分と非効率だ」
「そうとも限らないぞ、何せ魔法のように才能が無ければ使えないというわけじゃないんだ。それに、魔法は副作用に対処ができない」
魔法はあくまで借り物である。願いそれを叶えてくれるモノの力を指す、故に力を貸してくれる、人智を超越した力を持つものでしか対応ができないのである。それに比べて、魔術は詠唱や術式を挟むが、その分数式として理解されているものを扱う。まぁ神秘の秘匿性とかいって最近じゃ使われることのない手法だけどな。
「余計にわからない」
「魔法は願い、魔術は計算。そう覚えていれば間違うことはない」
「そうか……キュゥべぇ魔法少女についての説明を」
「分かったよ」
そこから話されたのは、魔この世には絶望から生まれた魔女がいること。それを軽い魔法少女がいること、魔法少女に成る際、どんな願いも叶えられることが挙げられた。お前、俺の前でよくその商法ができたな。
「何か問題でもあったかい?」
「いや…ソウルジェムの説明は?」
「それをするのかい?今の子達に」
「した方がいいだろ、魔法少女狩りに無関係のまま置いておくわけにもいかないんだ。説明しろ」
魔法少女はソウルジェムに魂を移された存在である。ソウルジェムはけがれに染まるとグリーフシードになって魔女に成ること。これらを説明しないのは、この場で魔女に成る可能性が有るからだが、それでもいずれ知ることであり、そこから別の方向に走る可能性も有るのだ。早いうちに説明したほうがいい。
「グリーフシードって?」
「魔法少女の回復アイテムであり、魔女の卵」
「え?じゃあ戦ってたのって……」
「そうだね、魔法少女同士の対立はグリーフシードの供給からなることが多い」
そこから何か考える彼方。
「んー……でも、小巻が態々奪いに行ったりはしないと思うし、あの子が小巻に喧嘩売ったってこと?」
「まあ、そうね……」
「あんな危険な事、やってたんだ。願いってさ、林間学校の時だよね? 少しだけ、意識があったんだ【私達を守って】だっけ?」
「………覚えてたの」
「まあね」
私達を守って、か。ずいぶん変わった願いだ。助けてではなく守ってこれなら話しても問題はないかな。さやかみたいなよっぽどのバカじゃない限りな、
「ところで、どうしてそんなに知っている?」
「あー…それは…ん?丁度来たな、入っていいぞ」
「なんでノックする前に気づいてるのよ」
「目がいいからな、あと魔法少女の気配は特殊だ」
「そう、」
話しているうちに、マミとほむらが到着した。事のあらましを説明して、ほむらは恐らく既に過ぎ去った過去の経験から該当するものを探しているのだろう。マミも事の重大さに今後に悩んでいる。
「なるほど……魔法少女狩りね、」
「予想はしていたけど、やっぱりまずいわね。それに四季は狙われるはずだし……」
「確かに呼んだのは俺なんだが、俺は普通に退院しようと思えばできるぞ?つまり戦える」
「え?!」
「出血した時に、腹筋で血を留め、さらに血法でほかのところに血が流れないように、血管同士をつなげて、麻酔をしたときに、いろいろあったみたいだけど、軽症で済んだ」
「……」
「君のそれは、驚きよりも呆れが勝つね」
インキュベータ、お前の魔法の方も大概だぞ。
「まだ何人かいるが、魔法少女に知り合いがいるんでね、それと。キュゥべぇ、いや、インキュベータ。話してないこと全部話せ」
「インキュベータ?」
「しょうがないね、聞かれたら答えるのがボク達だ。魔法少女に成る際に作ったソウルジェムがあるだろう?」
「これね、」
「それは穢れが溜まり切るとグリーフシードに変わる、つまり魔法少女は魔女に成る。その為にというわけでもないけど、今の浅古小巻の魂はこのソウルジェムにある」
「え?」
「は? え? そ、それ? 小巻が………その宝石?」
「存外、冷静だな」
「そりゃぁねぇ、「魔法少女とは言え」あんたはそう言った、怪我をしても治るということも気がかりだった。何かあるとは思っていたけどね、」
インキュベータからしてみれば、戦う際に、怪我をしてもいいように、痛覚を少なくしている、体を使い捨てできる、等のいろいろな利点からこの方法を採用しているらしいが、それでも、魂のあり方というのは人間にとって重要なことなんだよな。H・Lじゃ、魂こそが人であることの証明みたいなものだ。姿形が変わり、人に見られず、霧の中からも出られず。それでも、人のように生きている。知覚できないから、そんな理由で在り方を変えられたらたまったものじゃない。
「痛覚か…確かに、最初はビックリしていたけど、慣れたわけじゃないのか」
「いや、慣れてはいるだろ、小さくなった痛覚に慣れているんだ。転んだ程度の傷じゃ泣き叫ばなくなるようにな」
「でも、神廻四季、君は違う、痛みは抑えられていないし魂もそのままだ。魔女と戦うもの達の中で一番脆いのは君だ」
「確かにな、でも俺が戦う想定の相手は不死者だ。確実に殺せる魔女とじゃ雲泥の差だろう。何より、精神においては現存する魔法少女誰よりもある」
マミもなぎさも、少し小突けば崩れてしまった。甘える先という分かりやすいものがあったから繋ぎ止めることも容易い。
「そうだね、だから君が魔法少女の甘え先になることは避けたい」
「……たぶんだが、浅古さんはそういうことはならないぞ」
「まるで他の娘なると言っているみたいだね」
「例が少ないからな、ほむら別として、俺の知っている魔法少女は親をなくしていることが多い、故に背伸びをしているだから、絶望しきらなかったとき、絶望したとき、インキュベータは俺を真っ先に潰すんだな」
忠告であると同時に、これは警報の役割でもある。俺の周りで、俺が知る魔法少女が絶望する可能性に対面した時、インキュベータは確実に俺のことを邪魔しに来ることが多くなる。ならば、嘘をつけないコイツラに魔法少女の居場所を吐かせれば、対処ができる。
「ごめんなさい。ごめんなさい………私達を助けなければ、私達のせいで………」
「……………ばーか」
「あう!?」
インキュベータの今後のやりとりに目処を付けさせているうちに、彼方さんは浅古さんに謝っていた。助ける必要はないと、そう言って。だが、その言葉に浅古さんは目を細め彼方さんの額を指で弾いた。
「勘違いすんじゃないわよ。私はあの時、自分じゃ何も出来なかった。だから力を求めてキュゥべえの契約に応じた。助けると決めたから、助かると決めたから」
「なるほど……魔女化の心配はなさそうだな」
「なる可能性はあるでしょ」
「いや、ほむら、お前等と違って、自分の願いに他者を巻き込まないタイプだ。言葉に責任を持つ人間。崩しづらいけど、崩れた時の立ち直らせ方は分からん、」
「よく見てるんだね」
「目がいいもんで、それじゃぁなぎさとまどか、あとさやかを頼んだ、一番魔女しやすそうなのは……さやかだな、」
「それについては理解してるわ、」
そう言って、ほむらは帰っていき、マミと彼方さんが帰ったところで、インキュベータと浅古さんと病院を抜け出す準備を始めた。
ヤンデレ織莉子の方向性
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甘えさせてくる
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甘えてくる