結局あの後栄養失調で倒れた俺は病院に担ぎ込まれた。まぁ核の回収に六時間、その前に偶然重なった召喚阻止に十三時間、元々の目的、核の流通網調査に七時間、この間食事なし、ぶっ倒れもするわな。点滴が刺さった腕、邪魔だから外したいが異界の技術がないこの世界でそれをやったら怒られるどころじゃないしな……
「寝るか……」
「先生…よんだら……」
「ん?君は?」
「えっ…あっ…暁美…ほむらです……」
「そうか、俺は神廻四季、ここ、見滝原病院であってる?」
「うん……」
そうやってお互い挨拶をしていると不意に入り口のドアが開かれた。
「失礼します。ほむらちゃん、今日の気分はどう…って四季くん!?先生!神廻四季くんが目を覚ましました!」
あっ…そういや時間軸わからんけど俺は行方不明になってるはずなのか、それも空間を歪ませてぶっ倒れてたとなるとそりゃ驚くよな。家の事もあるしマミ大丈夫かな……あれで結構寂しやりがだし、それにあの家マミの家の隣だしな……そもそもなんでヤクザの家の横にマンションがあるんだか……心配してるかもな、家族ともども仲良かったし、なんでヤクザの家と仲良くしてたんだろあの家。
「まず、君は三年間行方不明だった。君を発見した場所と同じように空間がねじれたというように異質な部屋が今ものこっている。今警察を呼んで事情聴取をすることになった。だがその前に何か食べたいものはあるか?」
「ハンバーガーでお願いします」
「……本来なら勧めないところだがまぁいいだろう」
こちとら二十六時間何も食ってないからなぁ、ハンバーガー食べずにこっち来たのやっぱやめときゃよかったよ……気づいち待ったものはしょうがないというけどさ、それでも二十六時間はおかしい、クソ兄貴ですら一日を超える断食はしてないっていうのに、やっぱり見届けるための眼には厄介事が集まるのかね。
ん、上手い、やっぱ彼処ほどじゃなあが普通に上手いな。
「君がこの三年間何処にいたかを聞きたいんだがいいかい?」
「んぐ……えっと…まずは………………」
「どうかしたかい?」
「あの……師匠、なんで俺は簀巻きにされてるのでしょうか、え?湿地に放り込むって?いや眼すら開けられない場所に放り込まんといてくださいよ、それに…………なんで湿地にサメがいるんですか?人食いサメだって?なおさらほどいてください!今夜がフカヒレとか今俺の命の危機がぁ?!痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い、腕腕腕腕腕腕腕もげるもげるもげるもげるもげるもげる、てかなんでサメよりデカいワニもいるんすか?!え?近くの村の人間数十人食った討伐依頼を出されたやつですか?なんで俺がエサになってるんですか?!人と食べる飯が上手いのは知ってますけど俺に仕事放り投げないでください!こっち来てまだ一年経ってないんすけど?!痛い痛い痛い痛い痛いぎゃあああァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙「落ち着け!」はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…すいません…………取り乱しました」
やべぇ修行時代がフラッシュバックした……あのデス仙人、人の心とかないだろ。てか、クソ兄貴のあの無法な行動はこの修行時代があったからか…………あの天才を二年縛り続けあまつさえ逃げ出したあの修行を俺はよく三年も耐えたものだ…………ああ、思い出したら目の前に三頭の大蛇が…………え?犬じゃないのかって?蛇です、大蛇です、なんならラーチャタニーブリーロムとかよくわからん鳴き声?叫び声?してます、バンコクの正式名称がどうしたって?この森にはこういう名前の生物がいるんです。強い順に、クルンテープ、マハーナコーン、アモーンラッタナコーシン、マヒンタラーユッタヤー、マハーディロックポップ、ノッパラット、ラーチャタニーブリーロム、ウドムラーチャニウェートマハーサターン、アモーンピマーン、アワターンサティット、サッカタッティヤウィサヌカムプラシットというふうにね。なんでこの名前かは鳴き声を聞けばわかります。サッカタッティヤウィサヌカムプラシットと鳴くからサッカタッティヤウィサヌカムプラシットという名前がつけられました。逆にサッカタッティヤウィサヌカムプラシットと鳴かなければサッカタッティヤウィサヌカムプラシットと名付けられないわけです。別にバンコクの森にいるわけじゃないです。ただそう鳴くからそうなっだけです、ちなみに姿形に整合性はないです。
「…………そうか……もう聞かない…………上を見てみろいろいろゲシュタルト崩壊してるぞ」
「ありがとうございます、この部屋の温度がマイナスと錯覚するほど震えてきたのでこれ以上はしゃべれませんでした…………」
「…………じゃあ君の家族についてだ、ヤクザとしては真っ当で周囲の人間からの人望も厚い、だから三年前の神廻組の壊滅には警察も動いた。君はあの時何をして何処にいたかを教えてほしい」
「…………呪術と言って信じてもらえるかはわかりませんけど、何故か手に入れたそれを組員全員を利用して発動し俺は飛ばされました」
嘘だ、呪術より恐ろしく、発動しようとしたものは知らないていで話したがそんなものではない、第一説明する気もない、異質が日常である事など知らなくていいし、何よりそれは世界の均衡に関わる。ライブラの一員としてそれは否定しなければならない。止めなければならない。悪いがあの情報が何処から来たのかわからない以上は警察も警戒対象だ。
「一応、現場のあったものはすべて回収してある、これがその資料だ。すべて血に濡れて読めたものではない………済まない君のような子供に見せるものではないな。それと君の家だが近所の家族が掃除をしてくれた。巴家というのだが知っているか?」
「…………そう、ですかやっぱり優しいなぁ…」
「関係があったか…………そして、少し悲しい話にはなるが、今巴家は御息女しかいない、君を探し出すことに最も力を入れていた子だ、呼ぶか?」
「はぁ?」
嘘だろ?あの家族にいたって自殺はありえない……なら何があった?この街は普通だならおきることも普通の異常のはずだ。でも今はマミしかいないのか?じゃぁ彼奴は今どこに住んでいる?
「大丈夫か?」
「お、お願いします…………」
「済まないな、あまりに話しすぎた。動けるなら下に降りて迎えに行ってやるといい、」
「はい…」
エレベーターを使い1階へと降り正面玄関を出る。大丈夫かな、いや大丈夫なわけないだろ。俺ですら修行のトラウマですら上書きできない記憶だぞ。マミが耐えられるわけがない、家族を失う気持ちは今の俺にはわからない。だって狂気に染まった別れと、日常の中の別れは、後者のほうがつらいのだから。
「神廻くん!」
そう叫びながら巴は俺に飛びついて、俺は支えきれずに押し倒されてしまう。おかしいな、鍛えてたからささえられるはずなんだけど。そう、だよな、ようやく会えたんだもんな。そういう顔になるのもわかるよ。
「マミ…ちょっと待って、向こうで色々あったとは言えいろいろと来るものがあるから…………」
「ご、ごめんなさい。でも、でも!ずっと怖かった!神廻くんの家が家族が全員死んでその後に、お父さんもお母さんも事故で死んじゃって!神廻くんも見つからなくって!もうこのまま一人ぼっちになっちゃう気がして!帰っても誰もいなくてぇ、寂しかったよぉ」
「ごめん、ごめん、ただいま」
「おかえり」
そう言えば、ここ病院のホールだった。あ、警察の人だ助けてください、この体勢からマミを傷つけずに起き上がれる気がしません。馬乗りになった人は腕を潰せというのがクソ兄貴から学んだことですがマミにそんなことはできないので。ありがとうございます。
「とりあえず、病室に戻ってくれ、詳しい話はそっちでやりなさい。しかし……なるほど、頑張れよ少年」
「はぁ…」
なんの話だ?がんばれって、とりあえず病室に戻るか、今だに涙目なマミを連れて。
「あっ…」
「ああ…どうしようか、」
「その人は……」
「行方不明だった俺を探し続けてくれた人、とりあえず話そうか、何があったかを」
それから話したのは修行期間の三年だった。ちなみに暁美は診察で部屋から出ていったありがたい。異常が日常となった街での死闘の一年は伏せた、さすがに時間軸の違いも神隠しでなんとかなるにはなるが、それとは別に今マミの肩に乗っている白い獣について行かなければならない。
すでに聞いたマミの事故のこととは別に聞かなければならない。再開して義眼で見たマミの魂は指輪にあった。何と契約したんだ。
「なあ、巴。お前なんか俺に隠してるだろ?」
「っ……なんの事かしら。別に隠してることなんてィないわ「じゃあその指輪はなんだ?」こ、これは…その……」
誤魔化そうとした巴に指輪について問い掛けるとついに彼女は押し黙る。指輪に触れた時に少し白い獣が動揺したように見えた。
こっちに来た時に俺も指輪を受け取ったが今はつけてない。
「それになんだよお前の肩に乗ってる白い獣は。俺とお前以外には視えてないみたいだし明らかに怪し、そして指輪に触れた時にその獣も動揺した」
「な、なんでキュウべぇが視えてるの?魔法少女やその資質がないと視えない筈なのに……」
「魔法か、こっちでも随分と厄介なものがあるもんだ」
「まさかボクが視える男の子が現れるなんてね、流石に予想外だよ」
「へえ〜。で?お前は何者だ」
「ボクはキュウべぇ。早速だけど君は魔法少女の存在を知っているかい?」
「知らないな、少なくとも魔法は」
此奴胡散臭い、なんだろう、スティーブンさんを超える胡散臭い存在がいるとは驚いた。あの人はまだ世界の均衡とかいろいろあったけど、此奴に関しては何処まで人の世界に寄り添っているかだ。
「いいや、知らないな?」
「だよね、よし!1から説明していこうか。」
話を逸らしたな、とりあえずろくでもないやつということは理解した。話を聞いて信用にならなければ殺すか。
「ボク達キュウベエは普通の人には視えない。視えるのは魔法少女の資質がある10代未満の女の子だけなんだ。ボク達はその少女達の願いを叶える。その代わりに生み出されるのが、ソウルジェム。それを手にした者は魔女と戦う運命を課される。マミの指輪はそのソウルジェムでいうなればカモフラージュかな。形状は人それぞれだけどね」
「なるほど…その魔女ってのはどんな存在なんだ?わざわざ倒そうとするってことはそれに足る理由があるということだろ?」
「…例えば、ね。理由不明の自殺とか、突然の災害、それと行方不明事件なんかも、大半は魔女によって引き起こされてるらしいの。あの事故だって…魔女さえ存在しなきゃおこらなかった」
「なるほど、不幸を寄せ付ける存在というわけか、命かけてでもマミが守ることなのか?」
「ええ、もう私みたいな被害者は出したくない」
意思は固いか、俺も意固地になっていたなぁ、世界の均衡というほどではないけど、国のトップに影響がないとも言い切れないしな、まずは手の届く範囲から、街を国を世界を守っていくとしようか。
「わかった俺も手伝う」
「で、でも!神廻くんは魔法少女じゃないから戦えないんじゃ……」
「問題ない、トラウマレベルの修行三年間だ戦うすべは身につけた、もう一人にはしないから、それに俺の家族の件もそれが関わっているかもしれないしな」
「……分かったわ、それじゃあお願い」
「ああ、まぁ一時帰宅をしなきゃだけどな、」
「ふふっそうね、鍵は?」
「家から飛んだから持ってない」
「そう、じゃあ私もついていくわね」
「頼んだ」
異常が日常となった街から帰ってきたら魔女という異常がある街であることを知った。そういや、家にあった重火器とかどうなってんだろ、押収されてるとは言われてなかったけど……それも確認しないとだな。
見滝原に戻ってきた四季、とうとうマミと再開しましたが、幼馴染を失い家族を失い、戻ってきた幼馴染に向ける感情は並大抵のものにはなりません。メガほむの戻ってくる前の横で目を覚ましたのも今後の都合によるもの…………学校どうしよう