神工義肢持ちの魔法少女の幼馴染   作:紡縁永遠

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芸術に建造物を選んだ理由について

 病院で一夜を明かした後、マミとともに家に帰ってきた。ちなみにですが同じ部屋の暁美ほむらと言う子と仲良くなりました。かなり奥手ではあったけど磨けば光る原石だなあれは。K・Kさんやチェインさんに渡せば八方美人に化けるだろう。とまぁ雑談はさておき。

 

 「見た目は普通だな」

 「最初の一年は合鍵をもらってた私達が掃除をしてたからね、見た目は問題ないわよ」

 「四季くん?!」

 「あっ、お久しぶりです戻ってこれました」

 「あらそうなの?マミちゃんがよく掃除に来てたけど大丈夫なの?」

 「いろいろありましたけど今は大丈夫ですよ、迷惑かけたのでそのお詫びはまた今度に……」

 

 近所のおばあさんが声をかけてくれた。マミから聞いてはいたが、これは挨拶回りが大変になりそうだ。

 ちなみにだが何故か律儀に保険に入っていた神廻組は、俺が生きていたため莫大な生命保険が降ろされた。まぁ普通に金貸とか事業とかやってたからな。しかもそれなりにまっとうな方法で、あとでそっちの方にも挨拶に行かないと。

 

 「……ただいま……そう言えば組の人の遺体は?」

 「管轄内のお墓、結構人来てたんだよ?」

 「そっか…なんであんなになっちまったんだろうな……」

 「それは分からないわね、それに私達は葬儀と掃除しかできなかったから」

 「いやそれで十分だ」

 

 マミと一旦別行動を取り、あの部屋へと足を進める。血に濡れているわけでもない、ただ空間が歪んだ影響か、物理法則を無視した形で出来た部屋と成っていた。よく壊れなかったなこの部屋……はぁ何かいるな、奥にいる。とりあえずマミに報告?!急に広がりやがった?!

 

 「ちっ!騒動はいつも唐突だなぁ!ジッポ借りといてよかったよ!―――   斗流血法(ひきつぼしりゅうけっぽう) カグツチ 刃身ノ壱(じんしんのいち) 焔丸(ほむらまる)   ―――」

 

 普段俺が出血するために使っているのは両手に一つづつの腕輪だ。ドグ・ハマーの血殖装甲を展開するにあたった手首からの血液操作は髑髏を使う俺にとって、とても有意義なものでありそれを申請した。戦闘時には腕をクロスさせて腕輪の針部分叩くか、片方だけ叩いて出血させるかのどちらかだったが、ジッポは握るだけで出血でき、さらに師匠の指輪もあるため右手のみ出血にあたった時間ロスはないと言っていい。

 焔丸を抜刀するように構え、おそらく魔女の手下が襲ってくるのを待つ。鞘走りによる加速はできないが待ちの姿勢から放たれる斬撃を魔女の手下は避けることも防ぐこともできない。鉛筆のクロッキー画のような姿をして、顔はでたらめな線での猫写、しかも広がった空間には世界遺産などで見られる芸術作品が乱立している。

 オークションに出された作品は異界式のものが多かったから、芸術と言うより狂気に近いものが多かったが、現世にも理解しづらい芸術がある。それどころかこの空間には独自性、独創性がない、何処からか奪ってきたという表現が正しいだろう。

 

 「多いな、―――   カグツチ 刃身ノ四(じんしんのよん) 紅蓮骨喰(ぐれんほねばみ)   ―――うおぉぉ」

 

 というか三年の修行期間を終えてから一年の間で急激に伸びた身長により紅蓮骨喰をギリギリ振れる程度にはなったがそれでもカグツチの爆炎による加速に腕がちぎれそうになる。やっぱ巨大武器はシナトベのほうが使いやすいな、

 

 「―――   シナトベ 刃身ノ参拾七(じんしんのさんじゅうしち) 双頭海神槍(そうとうかいじんそう)   ―――」

 

 両端に三叉の穂先を持つ槍は、普段使いの突龍槍よりもでかく間合い振り回すだけで絶大な殺傷能力を誇る。ここにシナトベの暴風を織り交ぜれば、小さい敵は簡単に吹き飛ばせる。

 身の丈以上の槍を頭上に掲げて振り回す。

 

 「―――   シナトベ 天羽鞴(あめのはぶき) 奥義 轟天招来(ごうてんしょうらい)   ―――」

 

 家を崩壊させるレベルの暴風だ、木っ端程度に耐えられるわけがない、そのまますべて吹っ飛ばして槍を消す。

 

 「あっ、勢いでやっちまったけど連絡しときゃよかった、悪い癖だな」

 

 いや、そもそも今の俺に連絡手段というものはないか。あっちにいたときは、携帯は経費で落ちたし、何よりGPSがあったからか何かあればすぐに駆けつけてくれるようになっていた。戻ってすぐに巻き込まれたからしょうがないことではあるが、問題はマミだ。心配をかけてきたからこれ以上はかけたくないんだが―――

 

 「マミ……」

 「神廻くん?」

 

 怖い、なんでだ?師匠の修行より怖い、顔は笑っているのに、纏っている覇気がどす黒い。大丈夫だ俺は何もしてない。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 神廻くんの家にお邪魔して私は少し離れた。また何処かに行く可能性が怖いけど、親がいないことを飲み込む時間が必要だ。そう思ってキュゥべぇとともに別の部屋にいたのだけど、急に魔女の気配が現れた。確かにこの家には大量死という魔女が生まれやすい条件は揃っているけどそれならなんで今生まれたのかがわからない。

 私はすぐに魔女の結界のなかに入った。何処か見たことのある芸術作品がある結界内を駆け抜けて、昨日の発言を後悔する。いくらトラウマに成るレベルの修行をしても、相手は魔女だ、もう嫌だ、一人になるのも、周りの人が亡くなることも、私が最も怖いことは、結界の奥で否定された。

 

 「―――   カグツチ 刃身ノ四(じんしんのよん) 紅蓮骨喰(ぐれんほねばみ)   ―――」

 

 身の丈程もある大剣を振り回して使い魔を倒す神廻くんの姿がそこにはあった。豆腐のように切り裂かれる使い魔に私は戦慄する。魔女は使い魔は、魔法少女が扱う魔法以外で有効打になる物はない。使い魔だとしてもあんな豆腐みたいに倒せるわけがないのだから。

 今度は両端に三叉の穂先を持つ槍を取り出して振り回し始めた。頭上に掲げて回せば、竜巻のような風が巻き起こり集まっていた使い魔をすべて吹き飛ばしてしまった、ねぇ貴方は今まで何をしてたの?私は貴方をどうすればいいの?ねぇ、でも、今は心配をかけたことと、無茶をしたことを怒らないと、じゃなきゃ知らぬ間に遠くに行ってしまいそうだ。

 

 「神廻くん?」

 「マミぃ?!」

 「どうしたの?声が裏返ってるわよ?」

 「い、いや、何でもない…………」

 「何、してたの?」

 「!そりゃ、襲われれば反撃くらいするさ」

 「なんで、何で逃げなかったの?戦えることは聞いたわよ!それでも、私はそのことをよく知らないし、何よりもう私の周りから人がいなくなるのは嫌なの!もう離さない、そう決めたのに、今回の魔女の結界に神廻くんが巻き込まれて、私は生きた心地がしなかった!なんで、逃げなかったのよ、なんで戦えるのよ、戻ってきたとしても、そんな力は必要ないじゃない!家族すら救えなかった私が次助けられるかわからないのに、なんで、なんで、ねぇ!」

 「ごめん、騒動に、異常に慣れすぎてた。マミの気持ちを考えてなかった。これからはそういうことはしないから、でも、返ってこない可能性はマミも同じだ。戦えることは証明した。だから、その隣にいるくらいはいいだろ?」

 「…っぅぐ、わかったわ、ちょっと、順番が前後しちゃったけどこの先が魔女のいる場所だから、それは一緒に戦いましょう」

 「ああ、」

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 本当にマミには悪いことをした、そうだよな、死が当たり前じゃない、可愛がられたとは言え、他の組との揉め合いで葬儀はかなりあった。死には慣れていた。でもマミは違う、H・Lで余計に感覚が鈍くなっていた。家族を失う痛み、大事なものがいなくなる痛み、それは一生涯残るものだ、不躾で、考えなしだったのは俺の方だ。

 

 「……行こう」

 「うん、」

 

 少し赤く目の腫れたマミをささえながら結界の最奥に進む。急な変化に気づかなかったが、結界内にある物は全て芸術作品だ、ただし規則性もなければ独創性もない、全て盗んできたかのような盗品という感じがした。確かに芸術作品の大半は同じというわけではない、ただ真似をしているという印象のほうが強い。

 

 「ここよ」

 「全く、なんで僕には説明してくれないのさ」

 「こんな場所で説明するものでもないし、それにまたマミに心配かけるからな」

 「もうやめて、」

 「ごめん」

 

 特殊な文字をあしらった凱旋門のような姿、魔女と呼ぶのも変な話だ。これではただの建造物だし、芸術作品としても評価することもできるが、やはり元ネタがある事に気付く感じわざわざこれの姿にも理由があるのだろうか。

 

 「それじゃぁ準備はいい?」

 「ああ―――   斗流血法(ひきつぼしりゅうけっぽう) カグツチ 刃身ノ壱(じんしんのいち) 焔丸(ほむらまる)   ―――」

 

 今度はジッポではなく腕輪の仕込み針から出血をさせ刀を作り出す。使い魔、手下ではないのなら油断はできない、義眼もフルに使わせてもらおう。Isabelか、名前もあるとはね、意味はあとで調べるとして問題は結界の最奥にある空間、マミは魔女のいる部屋が最後の空間だといっていたが、じゃぁなぜあんな場所に空間があるのだろうか。

 気持ちを切り替えて、抜刀するように構える。息を一つはき、全身を脱力させ、抜き放つ。

 

 「硬いねぇ!」

 「あんまり無茶は!」

 「大丈夫、そんなに心配してもらう必要はないよ」

 

 中にあるのは、画材か?いや額縁か、中の絵はピカソの「ゲルニカ」、ゴッホの「ひまわり」、その他数々の名高い芸術品、結界内の物を見ていると、ただのパクリや真似という認識が薄れていく。なるほど、あれは求めて失敗した物か、魔女が芸術をそしておそらく凱旋門が一番再現度が高かったんだろうな。

 関係ないことを考えるのも悪い癖だな、意味があるのかと深読みしてしまう。そこにあるのは意思であり思考じゃない。真っすぐ、ただ、己の使命を全うする。それが今の俺がするとだ。

 

 「―――   ティロ・ボレー   ―――」

 

 マスケット銃の複数召喚による連射か、なるほどよくできているが、凱旋門のような相手には弱いな。

 焔丸を投げつけて刃身ノ二空斬糸に分解、ここにジッポで着火と同時にシナトベの風を送り込む。

 

 「―――   七獄(しちごく) 天羽鞴(あめのはぶき)   ―――」

 

 硬いなこのコンボで倒せないのなら、いや、面で攻撃するからだめなのか、一度大技をぶつければなんとかなるか?

 

 「伏せて!―――   ティロ・フィナーレ   ―――」

 

 最終砲撃か、いいねぇ必殺技は、でもそれで倒せる敵じゃない。だけど、これで倒し方は分かった。

 

 「―――   カグツチ 刃身ノ壱(じんしんのいち) 焔丸(ほむらまる) 大蛇薙(おろちなぎ)   ―――」

 

 これで終わりだ、さすがに斗流の必殺の切れ味には勝てなかったみたいだな。通常技じゃ使い魔程度が精一杯だったが、紅蓮骨喰とかなら結構削れるかもな。ともかくこれで終わったわけだ。結界も消え元の歪な部屋へと帰ってくる。結局最奥の空間については分からなかったが触れちゃいけないことだろうな。多分魔女にとって重要なことだ。

 

 「お疲れ様」

 「ええ、とりあえず貴方が使った技について聞かせてもらうわよ?」

 「はい…」

 

 結局、納得してくれたのは昼を過ぎた頃だった。朝から来てたから良かったものをこれで昼に来てれば深夜になってたぞ。でも、俺の落ち度だから甘んじて受けた。自分の部屋にあった使っていないノートを取り出してIsabelと記す、マミは怒り、泣き疲れて寝てしまった。また心配をかけるけどよろしくな、マミ。




芸術の魔女Isabelについてと言うよりこの作品の魔女の結界のオリジナル設定、

魔女のプライベート空間の奥には今まで誰も知り得なかった空間が広がっている。それは魔女本人にも開けることはできず、結界内の足りないものがそこにある。
(かく)()じたその部屋にあるものはそれぞれ違う。それをのぞくことができるのは神々の義眼だけである。
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