「はぁ……まさかあと三日は此処にいなきゃならないのか」
「しょうがないわよ、集団自殺に神隠し、さらには変死も重なってるのよ、精密検査は必要でしょう」
「そうなんだけどさ、あっちの医療技術に慣れてるとどうしてもなぁ、」
ヘルサレムズ・ロットの総合病院はファーデムトリガを持った腕のいい女医がいたおかげで大抵は大怪我という部類が減ってたからな。特に俺は出血多量の危険性が全くないから点滴だけやって一番最後なんてよくあることだったし。
それに異界の治療をしないでくれと頼んでそれでなんとかやってこれたというのも大きいんだろうな、ファーデムトリガの分身能力は凄かったなぁ、眼と心臓、それと肺について言及した瞬間一瞬で集まるんだもん。びっくりだよ。
「というわけで、数日よろしく頼む」
「何か迷惑かけたらいなさい、私が止めるから」
「普通の人には迷惑かけねぇよ」
「……お二人は付き合ってるんですか?」
「つき?!違うわよ!普通の友達よ!」
「ああ、それに三年間行方知れずの俺をどう好きになるんだよ、」
「そう、ですか……ではよろしくお願いします神廻さん」
「ああ、」
部屋は変わらず暁美ほむらの隣のベッドに座る。筋トレしたいがそこは外に出てやるしかない。柔軟はベッドの上でもできるからそれでいいとして、病院食だよな、質素な味付けも好きだが、アメリカに一年入るとどうしても味の濃いものに慣れてしまう。食べた分は消費して、心臓の力で血液は最高の状態を維持、一介チェインさん達人狼局に嫉妬された。そう言えばそのときは身長が150とかなり小さかったな。レオさんより小さくて驚かれた。日本人は小柄なんだよ。それに成人してなかったしな。
「それ、大丈夫なの?」
「ん?なにが?」
右足を後ろに伸ばし、左足は前に出しながら股下に足先を持ってくる。そのまま後ろへと倒れ込む。斗流の中では一番柔軟な身体の持ち主だ。これくらいわけはない。最初は骨がきしんだが今はそんな音すらしない。足を変えてもう一度。
「ふぅ……」
「痛くないの?」
「全然、と言うよりやりすぎてこの状態でもリラックスできる」
今度は足をほぼ180°に開いて前に倒れる。もちろん胸もベッドの面につく。ふぃ〜
「ベッドの上でもできるのが利点だよね〜暁美さんもやったら?」
「わ、私は、」
「無理維持はしないけど、やったほうがいいよ、筋力がついても見た目変わらないから」
「そ、そうなんだ」
「病院はバランスのいい食事が出るから、そこさえやれば復帰した時楽だよ、そろそろ退院でしょ?」
「うん、」
「じゃあ、筋トレしてくるから、気が向いたら声かけて」
「わかった」
それじゃぁ許可をもらって走りますか。退院したらパルクール会場にでも行こうかな、街中を縦横無尽に走り回ることはできないから、このくらいしか方法がないけど仕方ないか、徐々に慣らしてかないと。
「いや、待ちなさい!」
「?何ですか?」
「もう少しペースを落としなさい、ランニングの許可はしたけど、ほかの人に迷惑になってるから」
「はい…」
まさか注意を食らった。しょうがないじゃん、ツェッドさんみたいに、スケートボードでの移動がメインだったけど、それはそれでバイクと並走することが多いからある程度はしれないといけないんだよ。それに師匠は走るのに特化した魔猪の好物を身体に血法で縛り付けて走らせていたからな……やべぇ、いるはずのない猪が後ろにいる。逃げろ!逃げなきゃ死ぬ!せっかく帰ってきたのにここで死ぬわけには行かない!なんで増えてんだよ!群れを横切ったから?なんでそんなものがある場所を走らせてんだ!いい加減にしろ!すいませんすいませんすいませんすいません、だから大蛇の好物を追加しないでください、今度こそ死にます!蛇の体の大半は筋肉なんですから捕まったら粉砕骨折で死にます!
「っぷはぁ……はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」
「大丈夫?」
「いや少しトラウマがな……」
またストレッチをして今日のイベントは終わった。ちなみに暁美には英語を教えることになった。何でも見滝原中学校に行くから少しでも追いつきたいらしい。すまんな、実践英語以外は知らないんだ。俺は三年間、小学六年の時から授業を受けなかったから。ちなみに卒業はさせてもらいました。現在はマミに頼んで数学を教えてもらっています。
そんなわけで病院生活三日目、暁美もマミに慣れてきたところで変化が起きた。暁美が三つ編みをほどき、いつから持っていたのかソウルジェムを付けていたのだ。
義眼でもって強く、深く見ると、マミと同じように魂が体のなかに入っていなかった。その魂はおそらく指輪になっているソウルジェムに入っているだろう。それだけではなく雰囲気と変わっている。
「なぁ、」
「え!?」
「……あんた、誰だ?」
「暁美ほむらよ」
「そうか、」
魂の質は同じ、形もすべて同じというわけではないが暁美ほむらという人間であることにはかわりないようだ。ただ、隣にいた俺に驚いたところを見るに、今の暁美には俺との面識がないようだ。キュゥべぇと契約したのはいつか、さすがに聞くわけにもいかない。疑念を残しつつ俺は一足先に退院した。ほむらは明後日退院するようだ。
「そうなの?」
「退院したら声かけてやれ、多分何かある」
「感?」
「経験から来る憶測」
「わかったわ」
現在神廻組の家、つまりは俺の家でマミとともに夕飯を食べている。警察とマミの遠縁と話し合いマミが使っていたマンションは売り払われた。現在は俺の家に居候している。警察はマミに頑張れと言っていたりした、何の話だろうか。帰ってきてから、家の金庫を除いてみたら銃や刀、あと鞭があった。うん、警察はよくこれを見逃したな。モデルガンじゃなくてマジのやつだ。本当になんで見逃した?!
「まぁ見滝原中に来るのならその時に声をかければいいかしらね」
「だな……それで今日も行くのか?」
「ええ、パトロールをしないとどんな被害が出るかわからないもの」
「そっか、早く免許取れるようになりたいねぇ」
向こうではK・Kさんとレオさんに教えてもらった。流石に車は駄目だった。まぁ航空機の頭で叩き潰したり、車ぶん投げだりしてたしな、経費では落とせるものも限りあるだろう、結局スケートボードで一年乗り切ったわけだし。
食器を洗い、
「結局それなのね、」
「ああ、ライブラはスーツタイプだったけど私服ならこれでいいかなって、洋服は動きづらいんだよな、特に足回りの違和感が酷い」
「そういうものなのね、」
話しながら街を回る、路地裏や廃ビルなど、裏側を重点的に眼を使い探る。やったことはないがノミや、微生物が見えるくらいまで拡大できるらしい。やりたくないけど。
「見つけた」
「視覚的に見つけてくれるからありがたいわね」
「行くぞ―――
結界の中にはスカートを履いた脚だけの使い魔と、逆に脚のない中年のような見た目の使い魔がいた。一面青空の背景にロープが渡され、そこに洗濯物のように無数のセーラー服がはためいている。
「学校と言うには変な感じだな」
「そうね……来るわよ!」
「問題ない!」
「―――
「そうね、――― ティロ・ボレー ―――」
炎とマスケット銃の四連射により落ちてくる使い魔を撃ち焼きにする。スケート靴か、スティーブンさんがダニエル警部補の「三回回ってワンと言え」と言う八つ当たりと嫌がらせとが混ざり合った情報共有の無茶振りに、スケートを利用した6回転を披露してくれたっけ。それを見るとしょぼいな。
そのまま、青天の下を駆け抜けて魔女の部屋とたどり着く。名前はPatriciaか、やっぱりこの結果にも奥に空間があるな。机と椅子、後とは文房具そして松葉杖、服だけの結界見考えてみれば学業に関連するものがあっても不思議じゃないな。
魔女自体は黒いセーラ服を着で腕が四本、首がなくスカートから除くのも脚ではなく腕である。
「マミ、速攻でかたをつける、一発でかいのを頼む」
「まかせて!――― ティロ・フィナーレ ―――」
「――― カグツチ
マミの砲撃で後方へ吹き飛ばしたあと瀕死の魔女に目掛けて大剣を振り下ろす。渾身の唐竹割りは魔女を容赦なく真っ二つに切裂き絶命へと追い込んだ。結界は崩れ元の路地裏へと戻ってくる。
落ちていたグリーフシードを拾い、マミへと渡す。
「今回もあったな」
「ええ、でも全開は最後まで使っちゃったからプラス1ね」
「次から取り分が減る可能性も考えるとまだ欲しいな」
「そうはいっても、あまり持ってないことのほうが多いわよ」
「それもそうか、」
マミと今後のことも考えながら帰路につき、眠りにつく。マミはもともとベットで寝ていたが、この家のフローロングがある場所は応接室と事務室くらいしかないので、売り払って現在は敷布団である。
Patriciaと昨日始めた魔女の名前ノートに記して、自身も寝る。明日は注文した教材を取りに行き、勉強である。まだ中一の前期分しか終わっていないので、まだまだ先は長い。暗記科目はマミの教科書を借りて熟読することで覚え、中三は公民なので社会はあとでいいらしい。科学は斗流を扱うにあたり体の感覚で覚えたため分野によっては高校レベルも問題なくいけるだろう。
国語も、ヤクザの子供としていろいろ学んでいるため論理国語などの文法問題もある程度できる。英語は言わずもがな実践英語は完璧と言っていいだろう。
やはり数学だ。1と0の世界だったはずなのに、なんだ解無しって、ふざけてんのか?けどπを考えた奴には賞賛の意を唱えたい、3.14とか丸付けする方も大変だろ、確実に少数が出る問題を、わざわざ作ることになるんだからな。
マイナスとか出てきたがそんなもの、引き算と変わらない、プラスが貯金、マイナスが借金と考えれば分かりやすい。貯金100万に対して借金150万なら1000000−1500000=−500000、借金50万というわけだ。分かりやすい。不等号は凡ミスが多かった、師匠には「確認を怠るからそうなるのだ、完璧を追い続けろ、正解以外に価値はない」とか言ってきそうだ。ともかく、追いつけるように勉強三昧ということだ。ふざけんな!