「はい、」
「ありがとうございます」
「お二人は一緒に暮らしているんですか?」
「そうね、私も四季も親がいないから、一緒のいるほうが警察や周りの人間も気配りしやすいのよ」
「え?大丈夫なんですか?それ」
「問題ないわよ、それにここいろいろあるから」
心配してくれまどかさんに私は断りを入れる。実際この家にはいろいろある、弓道ができる部屋だったり道場だったり、なんだったら地下室もあった。ヤクザ事務所ってこういうのが必要なのかしら、まぁ地下室は最近教えてもらったものだけど、服と刀が保管されている以外は何もなかった。聞いてみると組同士の戦争に使うものらしい。最近ではヤクザも減っているらしく、必要ないらしい。
話が脱線したわね、戻さないと、
「とりあえず何から聞きたい?と言ってもいろいろあるわよね、まずはこれかしら、」
私は指輪を宝石に戻して二人に見せる。隣の部屋で話している四季の方も気になるけど必要なことを終えてからだ。
「なんですか、これ」
「綺麗……」
「これは、ソウルジェム、魔法少女の資格みたいなもので変身にも使うわ。そしてキュゥべぇと契約したときに生み出される」
「契約?」
「ボクが君たちの願いを叶えることを指すよ、それこそなんだって構わない。奇跡だって起こしてあげるよ」
「金銀財宝とか?」
「そういうのはやめておいたほうがいいわよ、信用問題につながるし、命を懸ける戦いには向かないわ」
そう言えば四季にもこのことを聞いたわね、どんな願いでも叶うなら何を願うって。
「さぁな、その時にならなきゃわからない、今はそうだな、H・Lに自由に生き来できるようになる力、かな。家族にはまた会いたいけど、禁忌に触れた代償だし、それこそ、それ自体が禁忌になるだろ」
そう言って、彼は笑っていた。人を殺してきた。見た目は人じゃない人を殺してきた。全員犯罪者で、世界を崩壊させるようなこともあったらしいけど、それでもその苦しみには何があるんだろう。平和を願わないあたりいろいろ見てきたことは確実だ。
まどかさん達は願いにイマイチ自覚がないらしく、首をひねっていた。
「そう言われて出てくる人は少ないわ、じっくり考えて。それに、辞めておいたほうがいいわよ、四季は特殊だし、私の願いも矛盾していることに最近気づいたしね」
「矛盾?」
「私は交通事故にあった時にキュゥべぇと出会ったの、そこで生きたと願ったわ。それなのに命の危険がある戦いに赴くのだから矛盾していると言うことよ」
四季は仕事としてやっている、多分家族が見つけた契約書の起源を探るというのは名目であり本心ではない。慣れてしまった戦闘に、命のやりとりに、鈍くならないように、いえ、違うわね。忘れないようにしているのかもしれないわね。
「いい、契約をするのならまずは私達に相談して、命を懸ける覚悟があるのなら、それでも戦うというのなら、まずは直に見てみるといいわ」
「直に見る……」
「魔法少女体験コースといったところかしら運が良ければ、護衛二人にお手本一人と言ういい感じになることだしね」
四季は遠近どちらも可能だけれど危険を知らせるには四季の戦闘スタイルの方がよくわかるだろう。なにせ出血を前提として、化け物と殴り合うことも視野に入れている。魔法のような幻想、奇跡ではなく、文字通り血の滲む努力で得た技術の戦闘。見ることに特化した四季は見稽古を主として戦う。外から見る分なら四季を護衛に回したいけど、それを許してくれる人ではない。今日の戦いも最後を締めたのは四季なのだから。
「じゃあ、なんで四季さんは戦うんですか?」
「やっぱり気になるわよね、真意は私も知らないわ。だからこそ、一回で諦めがつくならそれでいいけど、二回目は四季の戦い方を見てもらうわ」
「それで話は終わりだな」
「四季……そっちはいいの?」
「ああ、魔法少女なんて響きみたいなキラキラしたものじゃないからなぁ、命のやりとりだ、バカなことは考えるなよ」
どうやら暁美さんを、グリーフシードの取り分問題に当てはめるようだねなるほどそれなら契約したくない理由もわかる。まどかさんに執着するのは因果律の大きさだということを、
「それじゃぁ送って……マミ頼んだ」
「変なところである警戒心はなんなの?」
「なんとなくだ」
四季なら大丈夫だと思うけど、男が女の子の家に上がることに抵抗があるらしい、何でも兄弟子の一人がそれで死にかけたことが何度かあるらしい。死にかけても死ぬことはないから懲りないと言っていたけど、貴方も大概であることを言いたい。思わせぶりな態度が酷いなら……ふふっ、流石になしね。
◆◇◆◇◆◇
マミに三人を送ってもらって、弓道場に行く。足踏み、胴造り、弓構え、手の内、打起し、引分け、会、離れ、残心。射法八節で打った矢は真っすぐに、的のどまんなかに当たる。やってなかったはずだけど身体は覚えているみたいだ。結界内で不倶戴天を使ったが、魔法じゃないから射撃補正なんてものはない。遠距離技を使うなら練習をしないとな。
しかし、彼処まで知っているのなら魔女の結界の先を知らない理由がわからないな。ここがイレギュラーなのか本当に知らないのか。
繰り返される時のなかで何を思い、繰り返していたのだろうか。あの場では言わなかったが時を超えることは基本的に無理である。今から未来への片道切符ならH・Lでは二人ほどやっていたがあれは物体に効果を及ぼすものであり時を飛んでいるわけではない。
今暁美ほむらがいる世界は、彼女が知っている鹿目まどかがいるわけではない。同姓同名、見た目も性格も同じな別人であり同一人物である、いつ教えるか、いつ伝えるか。
願いが呪となって縛り続けているこの状況をどう打破するか、彼女がそれで戦えなくなるのでは意味がない。現実を知ったときのサポートと、そこから先について。そもそも彼女が時間を巻き戻したら、この世界にもともといた暁美ほむらはどうなるのだろうか。戻ってくるのか肉体ごと別の世界に行くのか。
いろいろ考えながらでも、正確に的にあたっていく、この技術だけは師匠に褒められたっけな斗流の中でも取り分け繊細な精神を必要とするため、戦闘には使われることはない、主に最初の一発の奇襲の一つとしてあるらしい。
「ふぅ……」
「ただいま、」
「!おかえり早かったな」
「違うわよ、貴方血を使ってまで弓を射る必要はあるの?」
「え?あ、」
気づけば出血したが指先で矢を作り、的に向けて指していた、正確には的の真ん中に当てた矢に向けて放ち悪ということを続けていたのだ。染み付いた技術という子は恐ろしいな。
「戦う意味か……」
「聞こえてたのね」
「そりゃな……別に俺は魔女と戦う必要も意味もない。でも世界の均衡を崩す可能性があるというのも否めない。けど彼処がH・Lがそう言う街だったとしても殺しをしてきた。それなのにこの日本にいていいのかとふと思う。
「俺の居場所は本当にここなのか、契約引き継ぎをした時点で俺はH・Lの住人と同じなんじゃないか、そう考える。幾ら世界を救うという大義名分でも、ソイツにとっては世界よりも優先するべきことなのかもしれないない。
「そこにあるのは正しさじゃなくて、都合だ。
「魔女を倒すことで自分は人の為に戦っているという大義名分が欲しいのかもな」
嘘ではないが、最近気づいたことがある魔女の魂は魔法少女の、魂に似ている、質は全く違うが形は似ている、今思えばまそう言うことなんだろう。暁美が言っていた魔法少女の行き着く先が魔女であることを指している。どうやら魔女を殺しても人を殺していることになる。だから今度は成仏できるように祈るしかなくなるわけだ。
「マミにもわかる時が来るかもな、他の街に行ったときとかな」