「なぁ、これ俺たち必要か?」
「いいじゃないですか、せっかく仲良くなった先輩を紹介したって」
「そういうものよ、友達というのはそういうふうに増えていくの」
「なるほどねぇ…俺はそういや政治家の子供と遊んだことがあったな……」
「え?」
「親の伝でな、後は何だったか?金貸しもやってたからなぁ、近所の子供とは遊ぶことはあったけど、今はないに等しいし、」
神廻家はヤクザである。それも歴史あるヤクザだ。警察からは目をつけられることは少ない、かなりまっとうな部類のヤクザなのだ、三年前に潰れたけど……地域関係も良好、それどころか見滝原の都市開発を支えていた。そう、今見滝原で廃ビルが多いのは神廻組が潰れたからである。
なんとか、傘下の店に挨拶回りをして、起動回復を見込んでいるが流石に一人で回すのはきつい、マミも手伝ってくれてはいるが経営はしたことがないため、あまり頼ることはできない。
「四季さんが、私たちと違う理由が分かった気がする」
「私も……」
現在、見滝原病院に俺とマミ、暁美とまどかかさやかの付き添いに来ていた。何でも新しい友達を幼馴染に紹介したいらしい。ボーイフレンドか、と聞いたら顔を真っ赤にして否定してきた。分かりやすいな。
暁美は何か目的があるようで、黙って付いてきている。おそらくこの周辺に魔女が生まれるのだろう、俺の目に反応がないところを見るに、まだないことがわかる。
「あ、リハビリか……」
「しょうがないよ、帰ろうさやかちゃん」
「そうだね、付き合わせちゃってごめんね」
「いや、それはいいんだが、ちょっと待ってくれよ」
確かこの病院には借金をしていた家族が一ついたはずだ。契約書が消えたわけじゃないから、返してもらいたいんだが、えっと…百江家か、
「駄目だった……行方不明だと、おかしな話だ。癌患者が、それも子供が外に出られるはずがないのにな」
小児がんを患った子供、治すために金を無心してきたんだったけ。保険会社も長期入院には向かないし、それはする理由も分かるが、失踪か、親もろともね、どうやらこの街には魔女の問題以外も多いらしい。あれ?行方不明とかも魔女の仕業だっけ?
「そう、見つかるといいわね、」
「ああ、そいや風見野にも一つあったなぁ」
「よく覚えてるわね」
「家単体での借金はあまりやらなかったんだよ、百江家も金利は一番低かったし、ただ、風見野のえっと…佐倉家だったか?そっちは金利が多かったな」
「なんか、聞いていい話かわからないね」
「そうだね」
「佐倉?」
「どうかしたか?」
「いえ、何でもないわ」
ヤクザとしての話をマミとしていると、それを一歩引いたところから聞くまどかとさやかに、佐倉という家を知っているのか、復唱する暁美。否定するが何かのどの奥に引っかかっているようだ。俺にはそれよりも回さないといけないものがあるわけだけど。
「ちょうど揃っているみたいだね、」
「キュゥべぇ!どうしたの?こんなところに」
「更かしそうな卵があったからそれを伝えにね」
インキュベータが指差す方向には、どす黒いオーラを放ちながらも何処か違和感を覚えるグリーフシードだった。高さ的に届くものではないため別の場所に移動させることはできないだろう。驚いていない暁美の様子からここに魔女がいるのはいつものことらしい。
「マミ、確か病院って」
「ええ、最悪の場所ね」
「なるほど、マミと暁美は二人の護衛と巻き込まれた人の確認を、今回は突所の予定通り、魔女を殺す人間の戦い方を見てもら。俺の場合は魔女狩りじゃないけどな」
俺がやるのは魔女狩りではなく牙狩り、ヴァンパイアハンターだ。スマホを取り出し立ち話をしているように見せながら、臨戦態勢を維持し続ける。その間にこの病院に入院していたはずの百江家の少女の情報を調べる。
小学六年生11歳の御息女が小児がんにかかり治療費を求めてきたと……検診的に返していたため、特段問題はなかった。口座は二年半に振り込みが止まっていると。じゃぁその期間か……
「来るよ」
「了解」
広がった結界の中身はお菓子と病院の手術中という看板だった。何故が小児がんのことが頭から離れない、さっきまで考えていたからだろうか、一向に離れない。使い魔はまだ出てこないがグリーフシードから直接生まれた魔女のはそういうものなのだろうか。
「そうだね、人を襲っていないなら作れたとしても数体だろう」
「そうか……」
最短ルートで、魔女のプライベート空間へとたどり着く。そこにはキャンディの様な頭部に円らな目をしており、可愛らしい外見をした魔女がいた、名前をCharlotteか、覚えてな。隠された空間には大きなチーズ、全くなんでこうも、つながっているのか、つながってしまうのか。チーズは小児がんの子どもとは相性が悪い。まぁ一部のカビを含んだチーズだが。
「―――
ジッポを取り出し掌に穴を開ける。作った刀を構えながら、今度は逃げないように拘束をする。
「―――
近づいて、切ろうとすると、口を大きく空け押し出すように、脱皮をするように、大蛇のような黒く長い体とカラフルな目、パーティ帽のような鼻、頭部付近についた赤と青の羽をつけた魔女が出てくる。何かあるかもしれないと予想していたから簡単に避けれはするが、それはそれとして違和感がある。
通常魔女の気配は人のそれではない、陰鬱などちらかというと死ぬ間際の生物の気配だ。だがこの魔女は違う、人間と同じ気配がして、魂も同じく人間に近い。ただそれも時間が立つごとに変化していっている。おそらく一日放置するが人を食らえば完全に変化するだろう。
試してみるか、そこに希望もない、ただ何があるかわからない可能性、たったの数厘、でも手を抜く数厘でないことは確かだ、バッファーもいる。この考えが正しいのなら、俺が全身全霊を賭ける数厘の可能性だ。
「――― カグツチ
魔女を輪切りにして切り刻み、奥へと走り出す。やはりというか本体はキャンディのような魔女の方であとから出てきた方はいくら攻撃しても死なないらしい。乗らば無視をすればいい。
って、そう簡単にいかないか。隠されている空間の前には本体の魔女がいる、もちろん蛇のような魔女もそれを守るように動いている。肩を噛まれだか左手なら問題はない、刀を降る利き手を怪我するほうがきついからな。
◇◆◇◆◇◆
「肩が!」
四季の戦い方を少し心配しながら見る、その実力は一時帰宅のときに見せてもらったし、援護も完璧にできる用意はしてある。でも動きに切れがない、出血で死なないと本人が言ってはいたけどそれでも心配になる。
「大丈夫なんですか、四季さん」
「ええ、大丈夫よ、出血じゃ死なないから」
「そうなんですか?!」
「ますます不思議ね」
何も知らない三人の反応は当たり前だ、でも私が言いたいのはそこじゃない、何を迷っているかということだ。いつもなら容赦なく致命傷を与えるように動き回るのに。
「なんか、怖くない」
「そうね、いつもなら使い魔であろうと真っ二つにするのに」
「違和感がひどいからな、」
「四季!」
「試したいことがある、少し引きつけてくれ」
「……分かったわ」
全く無茶を言う、でもあの目は本気だ義眼を隠そうとしない、でも見るべきものをしっかりと見ている。なら私は彼の背中を押すだけだ。
「――― ティロ・フィナーレ ―――こっちに来なさい!」
◆◇◆◇◆◇
マミに魔女を任せて俺は奥の空間を開くために、別の技を繰り出す。手の平の出血だけじゃなくて、手首の動脈から血を流して焔丸と突流槍を量産する。
「―――
「―――
「―――
あの時のように、古代級の血界の眷属に使った技をその壁に叩きつける。空いた空間にあるチーズは濃厚な匂いを広がらせて、マミに攻撃しようとしていた魔女の動きをとめる。やはり魔女が求めていたのはチーズであり、正確にいうとチーズケーキである。
本体の魔女も蛇の様な魔女に飛び移り、巨大なチーズケーキを貪り始める。そうすると結界の効力が減ってきたのか揺らぎ歪み始める。魔女はというとボシュっという音を出しながら、縮んでいき、白髪の少女を残して消えてしまった。
ああ、最悪だ。マミに知られてしまった、こういった物は順を追って説明をしなければならないというのに、マミにもまどかとさやかにもこれは重すぎる事実だ。
マミはインキュベータに向き合い、銃を向けながら激怒する。
「キュゥべぇ!これはどういうこと!」
「ボクも分からないよ、想定外だ、まさか魔女に成った魔法少女を、もとに戻せるとわね」
「どういうこと!」
「聞かれなかっただけなんだけどね、君たち魔法少女はソウルジェムが穢れると魔法少女になる。この国では成長過程の女性を少女と言う、ならいずれ魔女になるのなら、魔法少女と言うのが相応しい。そうは思わないかい?」
「だまれ!」
手にしていた焔丸でインキュベータを粉々に焼き切り、俺は少女を背負う、義眼で周囲の人間には見えなくしてから、未だに動けない他の奴らに声をかける。
「まぁ、なんだ、そういうことだ。俺も詳しいことは知らないから、一度帰って話し合おう。マミもそれでいいな?」
「うん、そう…ね、」
上の空、信じていたインキュベータに裏切られ、事実から考える自分がしてきたことに対する罪悪感とが入り混じり、マミは歩き出そうとしない。手を貸して、家へと向かう。いまだに寝ている少女の為にもチーズを…マミが作っていたか、なら問題は……ないわけないよな。早急に対処しなければ。
戦い方なんて言っている場合じゃないだろ!まだ全員子供だぞ、普通の人間で成長途中の少女で、そして脆いH・Lで人を殺し続けた俺とは違うのだから、ああ、失敗した。
次回、新キャラ二人とタグの変更の第一弾回