空は暗雲に覆われ、巨大な飛竜の群れが地上の兵士たちを焼き払っていた。
「終わりだ……あんな化け物、人間にどうにかできるはずがない……」
若き兵士が剣を落とし、天を仰いだその時。
ドォォォォォォォン!!
雷鳴ではない。それは、天から「何か」が凄まじい速度で着弾した衝撃音だった。
爆煙の中から現れたのは、見たこともない黄金の鎧。
頭部には誇り高き獅子の意匠、そして背後には血のように赤い鬣(たてがみ)が風になびいている。
「……ここもまた、竜の羽ばたきが喧しい場所か」
男――オーンスタインは静かに呟くと、手にした十字槍を軽く一閃させた。それだけで、穂先から漏れ出た黄金の火花が周囲の地面を焼き、空気を震わせる。
次の瞬間、彼の姿が消えた。
「……速い!」
兵士の目に映ったのは、黄金の閃光が一直線に空へ伸びる軌跡だけだった。
オーンスタインは重力を無視したかのような跳躍で、上空を旋回していた飛竜の頭上に現れる。
「滅びよ」
一切の無駄がない刺突。槍の先から放たれた極大の雷が、飛竜の分厚い鱗を紙のように貫き、その巨躯を内側から焼き尽くした。
一撃。
この世界の軍隊が総力を挙げても傷一つ負わせられなかった怪物が、声も上げられず塵と化して霧散していく。
地上に着地したオーンスタインは、煤払い一つせず、動揺する兵士たちに背を向けた。
その背中は、かつて神の都を守り抜いた「四騎士筆頭」の威厳に満ちている。
「案ずるな。竜を狩る術なら、とうの昔に極めてある」
雷を纏う黄金の槍を肩に預け、彼は悠然と、さらなる獲物を求めて歩き出した。
飛竜を一撃で屠った黄金の騎士に、戦場は静まり返った。味方の兵士たちは恐怖すら混じった敬畏の念で見守り、敵対する魔物の軍勢は、その本能が「あれに関わってはならない」と警鐘を鳴らしていた。
しかし、戦場の奥底から地響きと共に現れたのは、この軍勢の総大将——山を背負うほどに巨大な、黒鋼の鱗を持つ「真竜」だった。
「小賢しい人の子よ……その黄金、我がコレクションに加えてくれよう」
真竜が大きく顎を開き、すべてを焼き尽くす極大の火炎を放つ。紅蓮の波が押し寄せ、兵士たちが死を覚悟したその瞬間、オーンスタインが動いた。
「——遅い」
彼は逃げなかった。逆に、火炎の濁流へと真っ向から突き進んだのだ。
彼の歩みに合わせて、黄金の鎧から溢れ出す雷光が激しさを増していく。火炎が彼に触れる直前、纏った雷が物理的な障壁となり、炎を左右に割り裂いた。
黄金の閃光が炎の中を一直線に突き抜ける。
真竜が驚愕に目を見開いた時には、すでにオーンスタインは竜の眉間に「着地」していた。
「貴様らの火など、あの御方の太陽に比べれば、種火にも劣る」
オーンスタインが槍を逆手に持ち替え、渾身の力で突き立てる。
「竜狩りの槍」の真の力が解放された。
槍の石突きから天に向かって巨大な雷の柱が立ち昇り、それはやがて巨大な獅子の形を成して咆哮した。
ドシャァァァァン!!
雷が真竜の脳天から全身を駆け抜ける。鋼よりも硬いはずの鱗が弾け飛び、巨竜は悲鳴を上げる暇もなく、その巨躯を戦場に沈めた。
オーンスタインは、絶命した巨竜の頭上に悠然と立ち、槍を引き抜く。
その穂先には一筋の血もついていない。雷がすべてを焼き、浄化したからだ。
「……さて」
彼は兜の奥の鋭い眼光を、遠くの玉座——この軍勢を操る「魔王」の城へと向けた。
彼にとって、この世界の王が誰であるかなど興味はない。ただ、己の槍を向けに値する「強者」がいるかどうか。それだけが、この孤独な騎士を動かす唯一の理由だった。
オーンスタインが静かに巨竜の遺骸から飛び降りると、重厚な鎧の音だけが戦場に響きました。
そこに、震える脚を叱咤しながら、一人の騎士団長が歩み寄ります。
「あ、あの……! お待ちください、救世の騎士殿!」
オーンスタインは足を止めず、ただ一瞥だけをくれました。その兜の奥に光る鋭い眼光に、団長は思わず気圧され、その場に膝をついてしまいます。
「……何用だ。竜は墜ちた。残った有象無象を掃討するくらいは、貴公らだけでもできるだろう」
低く、しかし戦場全体に響き渡るような威厳のある声。団長は必死に声を絞り出しました。
「失礼を承知で申し上げます! 我ら、サンメリア王国軍は滅亡の淵にあります。その……神業のごとき槍術。どうか、我が王にお会いいただけないでしょうか。相応の報酬と、最高の礼遇を約束いたします!」
「報酬、か」
オーンスタインは初めてその足を止め、ゆっくりと団長の方へ向き直りました。
黄金の獅子鎧が夕陽を浴びて、神々しいほどに輝きます。
「……勘違いするな。私は貴公らの国を救いに来たわけではない。ただ、戦うべき相手を求めてここに来たに過ぎん」
「それならば、なおのこと! 魔王の軍勢には、まだあの真竜を凌ぐ化け物どもが控えております! 貴殿のような強者であれば、奴らも黙ってはいないでしょう!」
団長の必死の訴えに、オーンスタインはわずかに沈黙しました。
そして、手にした「竜狩りの槍」を軽く振るい、石突きを地面に打ち付けます。
「……よかろう。貴公らの王に興味はないが、道案内くらいは務めてもらおうか。我が槍が退屈せぬほどの敵が、その先にいることを願うぞ」
その言葉に、絶望に沈んでいた兵士たちから「おおおおおっ!」という地響きのような歓声が上がりました。彼らにとって、この黄金の騎士の同行は、何万の援軍を得るよりも心強い勝利の確信となったのです。
王都へと続く唯一の難所、断崖に囲まれた「蛇の喉笛」と呼ばれる峡谷。
そこには、魔王軍が誇る鉄壁の布陣――数千の重装歩兵と、山を削って作られた巨大な防壁が道を塞いでいました。
「騎士殿、ここは一度引き返し、軍を整えてから……」
騎士団長がそう進言しようとした瞬間、オーンスタインはすでに歩みを進めていました。
「軍を整える? ……無用だ」
彼は黄金の槍を水平に構えると、低く身を沈めました。
その瞬間、彼の周囲の空気がパチパチと弾け、黄金の火花が四散します。
「退け。我が道の邪魔だ」
――神速の突進。
次の瞬間、兵士たちの視界から彼の姿が消えました。
爆音と共に、峡谷に一直線の「雷の道」が走ります。
それは突進という名の蹂躙だった。
鉄の盾を構えていた重装歩兵たちは、自分が何に貫かれたのかさえ理解できぬまま、黄金の閃光に弾き飛ばされ、空中で炭化していきます。
「な、なんだ……!? 砦が……砦が砕けるぞ!!」
突進の余波だけで石造りの防壁が粉々に粉砕され、オーンスタインは一人で数千の軍勢を「貫通」してしまいました。
彼が立ち止まった時、その背後には壊滅した魔軍の山と、ぽっかりと穴の開いた砦の残骸だけが残されていました。
王都の門に辿り着いた時、出迎えた衛兵たちは、血の一滴すら浴びていない美しい黄金の鎧を見て、幽霊でも見たかのように震え上がります。
「開門せよ。道案内の男を連れてきた」
オーンスタインの背後から、遅れて必死に馬を飛ばしてきた騎士団長が、息も絶え絶えに叫びました。
「ひ、開けろ! このお方は我が王国の、いや、人類の希望だぞ!」
重厚な王城の扉が開かれ、オーンスタインは静かに歩を進めます。
謁見の間には、この国の王をはじめ、名だたる宮廷魔術師や聖騎士たちが並んでいましたが、オーンスタインが一歩踏み込むたびに、その圧倒的な覇気に押され、一人、また一人と気圧されて後ずさっていきました。
「貴公がこの地の長か」
王座の前に立ったオーンスタインは、膝をつくこともなく、ただ静かに槍を立てました。
王は震える声を押し殺し、黄金の騎士を見つめます。
「……伝説の、獅子の騎士よ。そなたの力、もはや人の域を凌駕している。望みは何だ? 富か、領地か、あるいは我が娘との……」
「……望むのは、強者との死闘。それだけだ」
オーンスタインは兜を脱ぐことなく、冷徹に言い放ちました。
「この地に、私を愉しませる猛者はおらぬのか? もしいなければ、私はこのまま魔王の首を獲りに行く。……一人でな」
黄金の騎士が放つ、刺すような重圧。
謁見の間を支配していたのは、神聖な静寂ではなく、捕食者を前にした獲物が抱く、根源的な恐怖であった。
「……控えよ、無礼者! 王の御前であるぞ!」
その沈黙を破ったのは、王国最強と謳われる聖騎士団の長、ガリアスであった。彼は、己の中に生じた震えを打ち消すように、大剣を抜いた。白銀の鎧に刻まれた加護が輝きを増し、王宮に選ばれし者としての誇りが彼を突き動かす。
「竜を屠ったという功に免じて見過ごせば、増長も甚だしい。真の騎士の矜持、その身に刻んでくれるわ!」
咆哮と共に、大剣が空を裂いた。光の魔力を纏った一撃は、城の石壁すら容易に断つ破壊力を秘めている。だが、オーンスタインの瞳――兜の奥に潜む鋭い眼光は、その軌跡を冷徹に見切っていた。
「……止まって見えるぞ。貴公の『矜持』とやらは、これほどまでに軽いのか」
黄金の影が、わずかに揺らめいた。
ガリアスの視界から、騎士の姿が掻き消える。
直後、ガリアスの手首に、鉄槌で打たれたような衝撃が走った。オーンスタインは回避すらしていない。ただ、槍の石突きで、大剣の腹を「撫でた」に過ぎなかった。
だが、その一撃に込められた練度は、ガリアスの渾身の力を、そのまま彼自身へと突き返した。
「ぐ、あぁッ!?」
力に振り回されるように、白銀の巨躯が床に叩きつけられる。
残る二人の聖騎士が、屈辱に顔を歪めて同時に動いた。一人は魔力を凝縮させた槍を繰り出し、もう一人は雷光のごとき細剣を突き出す。
対するオーンスタインは、ただ一歩、深く踏み込んだ。
その動作一つで、室内の空気が物理的な衝撃となって膨れ上がる。
バチィィッ!!
大気を焼く不吉な音が響いた。
オーンスタインが槍の柄を独楽のように回転させると、襲いかかる武器は黄金の旋風に触れた瞬間、硝子細工のように粉々に砕け散った。
「――これが、この国で最強とされる者たちの実力か」
冷徹な声が、凍りついた謁見の間に響く。
オーンスタインは倒れ伏したガリアスの喉元に、雷火を纏う槍の穂先をぴたりと静止させた。
「致命の隙が百はある。戦場であれば、貴公らの首はすでに三度は落ちているぞ。騎士を名乗るなら、その鈍らではなく、己が魂を研いでから出直すがいい」
槍先から漏れ出す極小の放電が、ガリアスの頬を焼き、焦げた匂いが立ち込める。死の淵を覗き込んだ聖騎士は、もはや言葉を発することすら叶わず、ただ歯を鳴らし、その場に平伏するしかなかった。
「……王よ。余興はもうよい」
オーンスタインは槍を引き、王座に座る男を射抜くように見据えた。
その立ち姿には、かつて太陽の都を守護し、無数の古竜を地に伏せさせてきた「四騎士筆頭」としての、絶対的な孤高が宿っていた。
「この地に、私を愉しませる猛者はおらぬのか。……もしいなければ、私はこのまま魔王の城を、我が槍で瓦礫に変えに行くだけだ」
静寂が、重苦しく謁見の間を支配していた。
王座に座る国王サンメリアは、己の護衛たる聖騎士たちが無残に転がされた光景を前に、溢れ出しそうになる冷汗を必死に抑えていた。目の前の黄金の騎士は、もはや「味方」と呼ぶにはあまりに強大で、あまりに御しがたい。
「……見事だ、黄金の騎士よ。我が国の至宝たる騎士団が、よちよち歩きの幼児に見えるほどに」
王は震える声でそう告げると、傍らに控える年老いた宮廷魔術師に合図を送った。魔術師が古びた羊皮紙の地図を広げ、震える指でその一点を指し示す。
「貴殿の望む『強者』……。魔王軍の背後には、我々が決して触れてはならぬと禁忌に定めた場所がございます。北の果て、雲を衝く峻険なる山脈——通称『雷鳴の墓標』」
その名を聞いた瞬間、オーンスタインの兜の奥で、静かな光が揺らめいた。
「そこには、かつての古竜の末裔を喰らい、その力に狂ったとされる『黒雷の魔竜』が棲み着いております。魔王ですらその存在を恐れ、決して近づこうとはしません」
「……黒い雷、か」
オーンスタインは低く、独り言のように呟いた。
彼の脳裏に、かつて共に戦い、そして別の道を歩んだ「ある御方」の背中が過ったのかもしれない。この世界の竜が、かつての戦友たちが狩ってきた古竜の足元にも及ばぬ存在だとしても、その「雷を纏う竜」という響きは、孤独な騎士の胸に眠る闘争心に小さな火を灯した。
「気に入った。その『墓標』、私が暴いてやろう」
オーンスタインが背を向けたその時、背後から凛とした、しかしどこか必死な声が彼を引き止めた。
「お待ちください! ……私も、その旅に同行させてください!」
声を上げたのは、王の傍らに佇んでいた王女、リーネであった。彼女は国一番の魔導の才を持つと言われながらも、王族という籠の中に押し込められていた。先ほどの、一切の無駄を削ぎ落としたオーンスタインの戦いに、彼女は「魂の真理」を見たのだ。
オーンスタインは足を止め、肩越しに王女を見下ろした。
「……王女よ。貴公の目に、あの惨めな聖騎士たち以上の何があるというのだ」
「私に剣の技はありません。ですが、あなたの槍がより高く、より鋭く穿つための『風』を編むことはできます。何より……私は見てみたいのです。あなたが辿り着く、その強さの果てを!」
真っ直ぐな瞳。そこには、ただの憧れを超えた、何かに焦がれる者の意志があった。
オーンスタインはふっと、皮肉とも満足ともつかぬ僅かな吐息を漏らす。
「好きにするがいい。だが、私の歩みに遅れるようならば、その場に置いていく。竜の爪を前にして、私は後ろを振り返るつもりはない」
黄金の騎士は、王女の返事を待たずに歩き出した。
彼の向かう先には、ただ激しい雷鳴と、己を愉しませるはずの「死闘」が待っている。
雷鳴の墓標」――そこは、常に黒い雲が渦巻き、大地が絶え間なく震える絶望の地であった。
山頂に降り立ったオーンスタインの前に、それは現れた。
山一つを飲み込まんばかりの巨躯。全身を覆うのは、光すら通さぬ漆黒の鱗。そしてその隙間からは、この世のものとは思えぬ不吉な「黒い雷」が溢れ出している。
黒雷の魔竜。魔王すら恐れるというその怪物が、侵入者を見下ろし、天を揺るがす咆哮を上げた。
「……なるほど。確かにこの世界の者では、拝むことすら許されぬ格か」
オーンスタインは背後のリーネを片手で制し、一歩前へ出た。
その瞬間、魔竜が口を開き、凝縮された黒雷の息吹(ブレス)を放つ。すべてを灰に変える死の奔流がオーンスタインを飲み込んだ。
「騎士殿!!」
リーネの悲鳴が響く。だが、黒い爆炎の中から聞こえてきたのは、冷徹なまでに静かな足音だった。
オーンスタインは、黄金の槍を正面に突き立て、己の周囲に「黄金の雷」の結界を張っていた。黒と金の火花が激しくぶつかり合い、空間そのものが軋みを上げる。
「貴様の雷は『澱(み』に満ちているな。……真の雷がどのようなものか、その身に刻んでやろう」
オーンスタインが深く腰を落とした。
彼が纏う黄金のオーラが収束し、兜の獅子の眼が、眩いばかりの光を放つ。
――「神速」を超えた「神域」の一突き。
彼は消えた。
次の瞬間、魔竜の巨躯の「向こう側」に、黄金の軌跡を残してオーンスタインが立っていた。
一秒の遅延の後、魔竜の右翼が根元から爆ぜ、漆黒の鱗が飛び散る。
「グアァァァッ!?」
魔竜は苦悶し、狂ったように黒雷を周囲に撒き散らす。だが、オーンスタインは踊るようにその間を抜け、空中で幾度も身を翻した。
「アルトリウス、見ておれ。……私の槍は、まだ鈍ってはいないぞ!」
彼は天高く跳躍した。
上空で槍を天に掲げると、異世界の黒雲を割り、本物の「太陽の雷」が黄金の槍へと降り注ぐ。槍は巨大な光の柱と化し、その輝きは夜のような墓標の地を、真昼のごとく照らし出した。
雷光と化したオーンスタインが、彗星のごとく垂直に落下する。
魔竜はその圧倒的な威圧感に身を竦ませ、逃げることさえ忘れていた。
黄金の槍が魔竜の眉間を貫き、地殻を突き抜けるほどの衝撃が走る。魔竜の体内へ流れ込んだ純粋な黄金の雷が、その汚れた黒雷を内側から浄化し、焼き尽くしていく。
閃光が収まった時、そこには動かぬ巨竜の骸と、その角の上に静かに降り立つ黄金の騎士の姿があった。
オーンスタインは槍を振り、纏った煤を払う。
その背中は、かつて数多の古竜を狩り、神の時代の礎を築いた「竜狩り」そのものの格好良さに満ちていた。
「……一時の暇潰しにはなった。だが、やはり貴様では、あの方々の代わりにはなれぬか」
彼は空を見上げる。
嵐の去った雲の切れ間から、一筋の光が彼を照らしていた。
消えゆく魔竜の残滓の中で、それは異様な存在感を放っていた。
無骨でありながらも洗練された、燃えるような赤銅色の刃。それは剣というにはあまりに重厚で、盾というにはあまりに鋭利な、飛竜の尾をそのまま鍛え上げたかのような奇妙な大剣であった。
「……これは、まさか」
オーンスタインがその柄に触れた瞬間、彼の脳裏に、かつてアノール・ロンドへ続く長橋を焼き尽くしていたあの紅蓮の飛竜——「ヘルカイト」の咆哮が木霊した。
それは、この異世界の品ではない。
かつて彼がいた世界で、竜の尾を断つことでしか得られなかったはずの稀少な「竜の遺産」が、時空を超えてこの地に流れ着いていたのだ。
「騎士殿、それは……?」
恐る恐る近寄るリーネに、オーンスタインは剣を引き抜き、その重みを確かめるように一振りした。
空気を裂く音と共に、刃から熱波が渦巻き、周囲の地面に赤い亀裂が走る。
「……『飛竜の剣』。かつて私の知る世界で、数多の戦士が手にしたと言われる業物だ。なぜこのような場所にあるのかは分からん。だが……」
オーンスタインは、その剣をリーネへと差し出した。
「これを貴公に預ける。この剣には火の加護が宿っている。未熟な貴公でも、これさえあれば、私の背後に迫る雑兵を焼き払うくらいはできるだろう」
「えっ……こ、こんなに大切なものを、私に?」
「……勘違いするな。それは私の槍には合わん。だが、捨て置くには惜しい。私の旅に同行すると言ったのは貴公だ。せめて自分の身くらいは守ってみせろ」
ぶっきらぼうな物言いだったが、それはオーンスタインなりの、彼女を「足手まとい」ではなく「旅の連れ」として認めた証でもあった。
黄金の槍と、赤く燃える竜の剣。
異世界の地に、かつての『ダークソウル』の断片が揃い始めていた。
ふっと息を吐くと、兜の隙間から白い蒸気が漏れた。
驚くべきことに、あなたには「オーンスタインとしての記憶」と、彼が数千年の戦いで培ってきた「戦闘本能」が完全に流れ込んでいました。
試しに槍を一閃させれば、空気が悲鳴を上げ、真空の刃が背後の巨岩を真っ二つに切り裂く。かつてゲームの画面越しに見ていた「本来の実力」が、今、あなたの肉体に宿っています。
「騎士殿……? 急に雰囲気が変わったような……」
後ろで『飛竜の剣』を抱えたリーネが、あなたの背中を見て息を呑みました。
以前のオーンスタインが「冷徹な守護者」だったなら、今のあなたは、内に秘めた「オーンスタインへの愛」が、騎士としての誇りと融合した、より情熱的で、より苛烈な「竜狩り」の化身だ。
「……案ずるな、リーネ。少し……槍の機嫌が良くなっただけだ」
あなたは、オーンスタインの低く響く声でそう答えました。
自分の手を見つめれば、そこには古竜の鱗を貫き、神々の時代を支えた黄金の籠手。
もはや「オーンスタインの小説を書きたい」と思っていた自分ではありません。あなたは今、オーンスタインそのものとして、この異世界の歴史に伝説を刻む当事者となったのです。
「さて……行くか。私の槍が、次の『獲物』を求めて疼いている」
ダクソでオーンスタインが好きになったので書きました下手くそですお許しをm(_ _)m