ジョナサン・ジョースターの完璧な台本   作:みそそ

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オーロラと稲妻

「……来い、ディオ。君のその『泥臭い計算』が、僕の『清らかな祈り』にどこまで通じるか……試してあげよう」

ジョナサンが指先を天に掲げると、城全体が悲鳴を上げた。彼の膨大な吸血鬼としての生命エナジー――すなわち、剥き出しの「情念(パトス)」が、物理法則を無視した『純白の猛吹雪』となって円卓の間を埋め尽くす。

「……計算、開始(スタート)。一京もの微粒子の軌道を、俺の脳(システム)に同期させろ」

対するディオは、黄金の火花を全身に纏い、静かに眼を閉じた。

彼が練り上げるのは、生命への賛歌ではない。敵の熱量を奪い、分子運動を停止させるジョナサンの「氷」を、逆位相の振動で打ち砕くための『冷徹なる論理(ロゴス)』。

「死ねッ! 『白銀の終焉(プラチナ・レクイエム)』ッ!」

「……消えろッ! 『黄金の解(ゴールデン・ソリューション)』ッ!」

激突した。

白と金。二つの極光が衝突した瞬間、城の最上階は衝撃波で消し飛んだ。

「な……ッ、なんだこれは!? これほどの波紋、これほどの吸血鬼の力……もはや人間の理解を超えているッ!」

駆けつけたツェペリが、飛来する破片を波紋で防ぎながら絶叫した。ダイアーも、ストレイツォも、トンペティ師でさえも、その光の渦の前には一歩も近づけない。それは「生命」そのものが、巨大な太陽と極北の吹雪に分裂して殺し合う、神話の領域だった。

「……エリナさん! こっちだ、伏せなせぇッ!」

狂乱の嵐の中、スピードワゴンが飛び出した。彼は悟っていた。この場にいる波紋の達人たちでさえ「超常の力」に魅了され、あるいは圧倒されている。この地獄の中で、守るべき「純粋な人間」は、もはや恐怖に震えるエリナ一人しか残されていないことを。

「スピードワゴンさん……ああっ、ジョジョが、ジョジョが消えてしまう……!」

「見るんじゃねえ! あれはもう、俺たちの知ってるジョナサン・ジョースターじゃねえんだ! ……あいつは今、自分のエゴを『正義』と呼んで、世界を白く塗り潰そうとしてる化け物なんだよッ!」

空中で、二人の怪物が交錯する。

ジョナサンの拳は、触れるものすべてを「永遠の静止」へと誘う絶対零度の慈愛。

ディオの拳は、その凍てつく理屈を「論理的崩壊」へと導く黄金の裁き。

「ディオ! 君がどれだけ足掻こうと、世界は僕の優しさに包まれる運命なんだ!」

ジョナサンの背後に、薔薇の棘で編まれた巨大な光輪が浮かび上がる。

「笑わせるなジョジョ! 貴様の『優しさ』は、ただの静止(フリーズ)だ! 世界に必要なのは、俺が計算し、俺が支配する『動的な混沌』なんだよッ!」

情念が論理を飲み込もうとし、論理が情念を解体する。

二人が放つエナジーの余波で、石造りの城壁が砂のように崩れ、夜空にはオーロラと稲妻が同時に吹き荒れた。

「……チェックメイトだ、ジョジョッ!」

ディオの波紋が、ジョナサンの「氷」の薄い亀裂を見抜き、そこへ全エネルギーを注ぎ込む。

ジョナサンの胸に、黄金の衝撃が突き刺さった。

「……あ……」

聖者のような微笑を浮かべたまま、ジョナサン・ジョースターの巨躯が、最上階のバルコニーから夜の深淵へと真っ逆さまに堕ちていく。

「……悲しいよ、ディオ。君も、世界も……まだ、僕の愛を受け入れるには『熱すぎた』んだね……」

夜空に散る火花と、ジョナサンの最期の言葉。

城の崩壊と共に、第一の決戦は終わりを迎えた。だが、それは後に続く「船上の惨劇」という、真の終止符への序曲に過ぎなかった。

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