ジョナサン・ジョースターの完璧な台本   作:みそそ

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清らかな伝説

燃え盛る炎の中、ディオを強く抱きしめ、ジョナサンは最期の思考を巡らせていた。その瞳は、もはや濁ることのない、冷徹なまでに澄み切った「計算式」を映し出していた。

(ああ……ようやく、すべてが整った)

ジョナサンは、絶望の絶叫を上げるディオの顔を、慈しむように見つめる。

(僕は世界を憂い、愛する者を守ろうとし、そして宿命の友を道連れに、高潔に散っていく……。これ以上に『完璧』で『美しい』ジョナサン・ジョースターの物語があるだろうか?)

ジョナサンの脳内には、石仮面を被ったあの日から、この瞬間に至るまでの精緻なチャートが展開されていた。

彼は最初から、自分の「聖人」としての地位を確立するために、周囲を巧妙に利用していたのだ。

父ジョージを「悲劇の象徴」としてゾンビに変え、エリナを「守るべき無垢な聖域」として箱庭に閉じ込め、そしてディオを「自分という光を際立たせるための鏡(悪)」として、徹底的に追い詰めた。

(ディオ。君が理屈で波紋を練り、僕を殺しに来ることも……。そして僕が君に負け、心中という形で幕を引くことも。すべては、僕という『最高傑作』を完成させるための、避けられない予定調和だったんだ)

「ジョジョ、貴様……笑って……!? 貴様、何を考えて――」

ディオは気づいた。自分を抱きしめるジョナサンの腕が、かつてのような温かな情熱ではなく、「望んだ結果を手に入れた計算機の、冷たい充足感」に満ちていることに。

「……ディオ。君は最高の役者だったよ。君が足掻けば足掻くほど、僕の『正義』は、より純粋で、より神話的な輝きを得ることができた……。ありがとう。君のおかげで、僕は永遠に『清らかな伝説』になれる」

ジョナサンの唇が、ディオの耳元で氷のように冷たく囁いた。

「……エリナも、これで一生、僕という幻影を崇めながら生きていくだろう。僕が守った『美しい思い出』という檻の中でね」

「……き、貴様は……ジョジョ、貴様は、悪魔以上に――!」

ディオの叫びは、爆発するボイラーの轟音にかき消された。

ジョナサンは、満足げに瞳を閉じる。

船が沈み、海面が静まり返った後、歴史に残るのは「愛と勇気に生きた紳士、ジョナサン・ジョースター」の美しい物語だけだ。その裏側にあった、自分の美学のためなら世界さえも部品として扱う「冷徹な計算式」を知る者は、もう誰もいない。

真っ赤に燃える大西洋の波間に、二人の男は消えた。

あとに残されたのは、ジョナサンが書き上げた「完璧な悲劇」の台本通りに、夜明けの海を一人で漂い続けるエリナの、絶望に満ちた祈りだけだった。




ジョジョ1部のジョナサンとディオがもしも立場が逆だったらというIF設定を使って、パトス(情緒)とロゴス(論理)の戦いを書いてみた。
情緒的な言葉を多用していたジョナサンの裏には相手を自分の人生という物語のモブに固定するという、冷徹なロゴスが潜んでいて
論理的で理屈っぽいディオの裏には、生への執着、泥臭いパトスが潜んでいるという対比を表現してみた。
あとは、ゾンビになってしまった方が、知能が低下した方が幸せなのではないのか?という哲学的要素も入れてみた。
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