「……ほう。これは驚いた」
ディオは城門を見上げ、不敵な笑みを浮かべた。
かつて非業の死を遂げた英雄たちが、今は汚れ一つない純白の鎧に身を包み、彫像のように完璧な不動の姿勢で並んでいる。彼らの瞳に宿るのは、かつての「怨念」や「復讐心」ではない。ジョナサンによって与えられた、凪のように穏やかで、空虚な「幸福」だった。
彼らはジョナサンの正義を維持するための、精密な部品へと作り変えられていた。
一切の無駄がない呼吸、寸分狂わぬ歩法。それはもはや軍隊ではなく、完成された時計の歯車に近い。
「見ろよ、ツェペリ。ジョジョの奴、あんなに情熱的だったタルカスたちの『パトス(情念)』を、徹底的に削ぎ落としやがった。……突き詰めれば、感情さえも『ロゴス(論理)』に到達するというわけか。ククク……最高に趣味の悪い冗談だぜ」
ディオは愉快そうに肩を揺らした。
「気に入らんな……。俺は、あいつらのように怒り狂い、呪いながら死んでいく『生の汚らしさ』の方が、よっぽど美しいと思うがね」
「……全くだ。あれはもはや騎士ではない、ただの装置だ」
ツェペリが沈痛な面持ちで叫ぶ。「波紋戦士たちよ! あの悲しき静寂を、生命の鼓動で打ち破るぞッ!」
「行くぞッ! 稲妻十字空烈刃(サンダークロススプリットアタック)ッ!」
屈辱を晴らすべく、ダイアーが再び跳躍する。ストレイツォもまた、鋭い指先から波紋を放射し、漆黒の闇を黄金に染め上げた。
「……迎撃セヨ」
ブラフォードが静かに、弦楽器を奏でるような声で命じた。
騎士団が一斉に動き出す。それは戦闘というよりは、完璧に振付された「演舞」だった。彼らは波紋戦士たちの変則的な攻撃を、ガチガチに組まれた鉄壁の秩序とルーチンで、冷徹に捌いていく。
「無駄だ。数式が整いすぎている」
ディオは最後尾で、戦場全体をハッキングするように眺めていた。
「ダイアー、右だ。ストレイツォ、三歩下がって左掌で突け。……トンペティ、あんたはその老いぼれた呼吸で、連中の『リズム』を狂わせろ」
ディオの「計算」に基づいた指揮が、波紋戦士たちに伝わる。
本来、志も性格もバラバラな彼らだったが、ディオの冷徹なロゴスが、彼らを一つの「破壊装置」へと変質させた。
「チェックメイトだ。……ブラフォード、お前のその美しい髪、俺の熱でドロドロに溶かしてやるぜ!」
ディオの全身から、かつてない濃度の波紋が噴き出した。
生命の讃歌ではない。秩序を壊し、混沌を引き戻すための、どす黒い黄金の火花。
ブラフォードの剣と、ディオの波紋が激突する。
ジョナサンの「静かなる正義」を守る騎士団と、ディオが率いる「泥臭き復讐の軍勢」。城門の前は、凍てつく静寂と、爆発する生命エネルギーが激しくぶつかり合う、極彩色のアリ地獄と化した。