前回のあらすじ:器、知らない場所で目が覚める。
今回はちょい長めです。
此処はどこだ。何故自分は此処にいる?
騎士は思考する。確かに自分はあの神を滅し虚無に還った筈だ。
本来、彼の王の計画では騎士はあの神殿で神を討ち果たし生を終える筈だった。
しかしこの状況はどうだ。騎士は今も生きており、全くの未踏の地にて目を覚ました。
だが、いつまでもここに留まっているワケにもいかない。
現に自分は生きており、意識も存在する。もし、未だ自らに果たすべき使命があるのならば、することは一つ。
そう。探索だ。
この地にもあの神の影響が及んでいる可能性も有る。情報が無ければ出来ることも出来ない。
それに話のできる者がいればよりこの場所の詳細が分かる。
騎士はそう結論付けると周囲を注意深く見渡す。幸いにもあの店主から買ったランタンは持っている。
視界に映るのは見渡す限り木、木、木。文明の光なんてあったものではなかった。
けれども自分には動くための足がある。あのイモムシ達*1のように地面を掘ることはできないが。
そうと決まれば探索者の行動は早い。ベンチはなく不安は残るが。
そうして探索者は木々の間を走り抜け、時には無造作に釘を振り回して肩慣らしも済ませる。
地図は無く、あのどこにでも居た店主*2の気配も痕跡も無いがまずは今できることを全部やってみるのだ。
そうやってかなりの時間走っていると視界に一瞬光が飛び込んできた。
光だ!探索者は興奮する。狂気に侵されていないものがいるのなら素晴らしい。
急ブレーキをかけた探索者は思案する。
いくら1人の旅であったとしても誰とも関われないのは探索者でも寂しいのである。
探索者は光の見えた方向に体を向けると全身に思い切り力を込めその場で踏ん張る。
水晶の鉱山にて探索者が手に入れたその力*3は、探索者の全身を駆け巡ると探索者の足元に紫色の結晶が発生する。
そして力を急速に解放する━━━━━━━━━
瞬間
探索者の体が弾丸のように一気に打ち出される。その速度は瞬間的に加速していく。
探索者は一直線に光に向かって飛んで行く。見るものからすれば流星の様にも見える薄紫のその弾丸は止まらない。
段々と光に近づいてくる。遠くから見れば小さかったその光は近づくにつれどんどん強く、大きくなっている。
大きな建造物なども見える。街だろうか。ハロウネストの建造物とは作りが違う様ではあるが確かに文明が存在し光に溢れている。
その光はあの思考を蝕む悍ましいものなどでは無く、文明の力によって作られた確かな光であった。
だが、様子がおかしい。確かにハロウネストとは雰囲気も違うのだが、余りにも整備されすぎているのだ。
道は見たことの無い黒い石の様なものが敷き詰められ、白い線が貼られていて、道端の街灯にはルマバエが入っていない。
建物は色とりどりの屋根をしていて壁が建物の外周を囲っており直角の多い様に感じられる。
極め付けには嫌な匂いがするのだ。悪臭を放つあの卵とも違う。まるで獣の巣*4にいたあの気味の悪い虫の様に陰気で、腐った様で、鉄の匂いが混じった匂いだ。
探索者は匂いの原因を探す。道中にベンチがあったので座っておく。これで万が一死んでもここから復活できるようになるからだ。*5
気を取り直して探索者は街の中を歩く。悪臭を辿って暫く歩いていると一際臭いの強い場所に着いた。
その場所は余りに大きな湖に併設されている場所で、金属製の余りに高い塔の様なものや大きな箱のような物がある。*6
探索者が歩き出そうとしたその時だった。
「ふざけんなッ!!!!お前なんかに食われてたまるか!!!」
夜の帳を引き裂く様な余りにも場違いな声がが聞こえた。
恐らく何かに襲われている。襲われているということは理性のあるものである可能性が高い。
そして何より困っている者を見過ごすことは出来ない。
探索者は迷わず悲鳴の聞こえた方向へと走り出した。
探索者Side out
Side???
(なんで!?どうしてこうなったの!?)
倉庫には余りにも場違いなその少女は走る。息が切れそうになるが止まってはいけない。
何故なら━━━━━━━━
「ゲヒャヒャヒャヒャ!ニク!オンナ!コドモ!ウマイ!ニゲルナ!」
「ひっ」
あの化け物が自分を狙い追いかけてくるからだ。
非日常。そんな言葉では表せない程に状況は危機的だった。
始まりはそうだ、今日学校で教師から言われた言葉だった。
(最近、駒王町で失踪事件が相次いでいます。原因も犯人も不明。皆さんは学校が終わったらすぐにまっすぐ帰宅してください。)
他人事だと思っていた。自分は大丈夫だと思っていた。夕方、学校に課題を忘れたことに気づき、夜の校舎に入り、近道だからと港の倉庫街に入ったことが少女の間違いだった。
突然背後から鉄がひしゃげる様な轟音が鳴り響き反射的に音の鳴った方を向いた。向いてしまった。
そこにいたのは異形。ライオンとカマキリを無理矢理組み合わせた様な冒涜的で異臭を漂わせるその異形はニタニタと下品な表情を浮かべ自分を見ている。
「ニンゲンノオンナダナァ?」
「ッ〜〜〜ぁ、ひぁ」
声にならない悲鳴が口から漏れ出る。一歩後ろに後ずさる。幸いにも腰は抜けていなかった。
怪物の粘っこい視線が注がれる。まるで値踏みをする様な、嘲笑うかの様な視線だ。
「う、うわああああああああああああああああ!!!!!」
そんな情けない叫び声を上げながら少女は反射的に逃げ出す。それは少女にとって余りにも恐ろしすぎた。
「マテェェェェェェェェェェ!!!!!オレノニグゥゥゥ!!!」
そんなふうに逃げ続けていると走っている途中で脚を引っ掻き血が出てしまう。
「うぐっ」
脚がもつれ転んでしまう。マズイ、早く逃げなければ。またアイツが来る。
だが、現実とは非情なものである。それは少女にとっても。
「ヤッドトマッダナァ?」
「ぁ」
恐怖で体が震えて力が入らない。もう、腰が抜けてしまった。
嗚呼、こんなの理不尽だ。あの化け物は自分がずっと優位に立って自分より弱いものを徹底的に痛ぶるのだ。
自分はそんな理不尽な化け物に今から殺されてしまう。
でも、そんなのいやだ。
ふざけんな。まだ生きたいんだよ。
そう簡単に食われてたまるか。
だから、最後まで抵抗する。これは意地だ。
私が最後まで抵抗したという証だ。
大きく息を吸う。恐怖は不思議と無かった。
「ナンダァ?」
化け物は首を傾げている。獲物が今更何をするんだとでも考えているんだろう。上等だ。
死ぬくらいなら自分で死ぬタイミングを決めてやる。
だから。
「ふざけんなッ!!!!お前なんかに食われてたまるか!!!」
化け物は一瞬面食らってそして激昂する。
「アア?ウッセェヨォオオオオオオオオオオ!!!!」
「ニクフゼイガアアアアアアアアアアアアア!!!」
怪物の腕が振り下ろされる。脳天直撃コースだ。避けることも出来ない。
私は此処で死ぬんだろう。呆気ない人生だった。
でも、やっぱり、
「しにたくないなぁ…おかぁさん…」
だが、不条理とは、平等なのである。それは、
「ア?ガァ?」
「…ぇ?」
痛みが来ない。化け物の困惑した様な声が聞こえる。なんで?少女は目を開ける。そこにあったのは━━━━━━━━
それは、蒼白なる者だった。虚無を体現したかの様な者だった。その小さな者は手に月光を反射し蒼白に輝く剣を構えていた。
蒼白なる者は化け物の剛腕を剣一本で防いでいる。蒼白なる者が動いた。
「ガアアアァァァ!?!?!!」
大きく化け物を大きく後方へと弾く。あの体格差でだ。化け物が戻ってこない。恐らく化け物はコンテナなんかにに突っ込んだのだろう。
化け物は夕に2、3メートルは超えている。対して蒼白なる者は精々50センチ程度。
しかしその体格差も物ともせずに小さき者は化け物を遥か後方へと弾き飛ばしたのだ。まさに御伽噺の英雄の様に。
小さき者は少女へ振り返る。少女はまだ腰が抜けている、2人の目線は偶然にも小さき者が見下ろす形となった。
月光がまるで祝福するかの様に2人を照らす。
その夜、少女は運命に出会った━━━━━━━━━━━━━━
こ れ が や り た か っ た
運命構図って良いですよね。自分は大好きです。
良ければ感想と評価もくださいお願いします。
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