前回のあらすじ:運命構図って良いよね
それでは、本編、どぞ。
勢いで助けたは良いものの探索者は現在非常に困惑していた。
自身の目の前で地面にへたり込んでいるこの大きな者がどのような種族であるのかが分からなかったからだ。
身長は自信の3倍はあり、体表は殻に覆われておらず柔らかい肉の様になっている。
この者の足にはかなり大きい切り傷が付いている。先程吹っ飛ばした化け物につけられた傷だろうか、血が滲んで痛々しい。
しかしあの光に汚染されていれば血は鮮やかな橙色になるのでこの者は汚染されていないのだろう。
あいにくと今は治療できる状況では無い。いつあの化け物が戻ってくるのかもわからない。
探索者がそう思考していると目の前の少女が唇を震わせた。
「あなたは、誰、なの…?」
誰か。探索者は思案する。自らを現す言葉さえあれど自身は器の一人。固有の名前など持っていなかった。
それに自分は話すことができない。できることと言ったらせいぜい頭を振って受け答えするくらいだ。
だからこそ探索者は目の前の少女を見つめると唐突にその場でジャンプを繰り返し始めた。
「え、ええ…」
少女は困惑している。当たり前だろう。自分を助けたかと思ったら突然目の前で奇妙な動きを繰り出してくるのだ。
恐怖で思考がまとまらない少女にとって目の前のそれは余りにも場違いであった。
だが仕方ないのである。探索者は自身の意図を伝えるのが苦手だった。ハロウネストでは相手との会話は聞きっぱなしであったのが状況を悪化させている。
探索者は必死だった。目の前の少女に如何にして自分が無害であると伝えるか悩んでいた。
このお互いのすれ違いこそが現在のこの余りにも場違いでカオスな状況を作り出しているのだ。
探索者が必死に意図を伝えようとし、少女が困惑しているその時だった。
「ガアアアァァァ!!フザケンナアアアアアアァァ!!!!!」
「ひっ!」
あの化け物だ。探索者と少女は知らないがこの化け物ははぐれ悪魔と呼ばれている存在だ。
はぐれ悪魔とは自らの主を裏切り逃げ出した眷属悪魔の総称である。このはぐれ悪魔グガンもその様な悪魔の一体だった。
今、グガンは激昂していた。痛ぶっていた獲物からは生意気にも反抗され、頭を叩き潰そうとすれば変なチビに防御され挙げ句の果てにはそのチビにブッ飛ばされコンテナに叩き込まれたのだ。
「コロスウッ!オマエもソノチビモクッデヤルッ!!!」
グガンは真っ直ぐに探索者と少女に向かって突進する。並みの人間なら掠っただけで良くて大怪我だろう。
しかし、グガンには誤算があった。少女を庇う様に剣を構える小さな騎士の武装は構えれた蒼白の剣だけだと考えたことだった。
「シネエエエエエェェェェ!!」
グガンは止まらない。止まるという選択肢はグガンの脳内には存在しない。
しかしそれが、己の敗因だったとグガンは気付くことはなかった。
探索者が突進してくるグガンを見据え一瞬力を貯める様な動作をした瞬間だった。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアア!?!??!!」
一瞬の閃光と共にグガンは血反吐をブチ撒けながら後ろにぶっ飛んだ。
グガンは突然目の前からまるでトラックに衝突された様な光景を幻視した。
復讐の魂。*1現在は虚無と一体化し黒色の弾丸となっており、威力はかなりのものである。
グガンが激痛と衝撃に怯んだ瞬間だった。探索者は一気にグガンとの距離を詰める。グガンと探索者の間は裕に10メートルはあったはずだ。
しかし探索者は一瞬虫の翅の様なものを*2展開し、グガンとの距離を一気に詰めたのだ。
探索者は釘を振りかぶるとダウンしているグガンに向かって高速で釘で斬りつける。チャーム*3高速切りだ。チャームによって攻撃の速度が跳ね上がった探索者は容赦なくグガンを斬りつける。
「グ、ググナメ、ル、ナァッ!!!」
グガンは反撃とばかりに探索者に拳を振りかぶる。その威力はかなりのものだろう。
「ダメ!避けて!」
少女が叫ぶ。自分よりも小さな者があんな攻撃をマトモに喰らったら一撃でミンチになってしまうだろう。
だが、騎士は動かない。まるでグガンの攻撃を見極めるかの様に。
グガンの鎌が騎士に直撃しようとするその瞬間であった。
瞬間、衝撃波と火花が散った。
パリィ。騎士はグガンの攻撃に完璧にタイミングを合わせ、攻撃を弾き返すどころかグガンの腕を斬りつけ浅く無い傷を与えたのだ。
「ガアアアァァァ!?!?!?!?」
グガンは恐怖した。先程までは自分が痛ぶる側だったのに!美味そうな人間の女を食えると思っていたのに!
今はどうだ!?自分は地べたの這いつくばってまるで命を乞うかの様になっている。怖い。恐ろしい。
なんなのだアレは!思考が上手くまとまらない。今此処にグガンの敗北は決定した。
哀れで、矮小で、卑しく、救いようの無いその悪魔は完全な敗北を突き付けられたのだ。
しかし騎士の攻撃は止まらない。当たり前だ。コイツは善良な無辜の市民を襲い、痛ぶり、嘲笑ったのだから。
「ヤ、ヤメ」
グガンは恐怖に負け命乞いをする。だが、オマエはそうやって命乞いをした人間を見逃したのか?否。
ならばこれは因果応報、自業自得。自らが傷付けた者たちに泣いて詫びながら死ね。
騎士はグガンの頭上に跳び上がる。騎士の小さな右手にソウルが集中していく。
"漆黒のダイブ"*4
虚無を宿したその拳はグガンへと躊躇なく叩き込まれる。爆発と衝撃波。
コンクリートの地面にできた余りにも巨大なクレーターと跡形も残っていないグガンがその威力を現している。
クレーターの中心には小さな騎士が1人。無機質なその仮面から表情を伺うことはできない。
「あ、あの!」
少女が探索者に向かって話し掛ける。まだ恐怖も抜けきっていないはずなのに、自らを助けてくれた小さな騎士に向かって精一杯の声を絞り出して話し掛ける。
探索者は少女を見る。奇妙な姿であれど理性的なその者を探索者は見据える。
「助けてくれて、あ、ありがとうございます!」
少女の口から放たれたのは感謝の言葉。純粋な善意からくる言葉に探索者は少し照れくさそうに首を横に振る。
しかし此処でとある問題が頭をよぎった。そう。
探索者が何やら焦っている様な雰囲気を少女は感じた。
「あ、あの、私の家に泊まりますか!?わたし、家に親がいなくて!」
突拍子もなく少女の口から放たれたのはコレまた余りにも唐突で探索者にとって都合の良い話。
少女自身も恐怖と感謝の心で思考がまとまらないのだろう。
探索者は少し考える素振りを見せると少女に向き直り━━━━━━━━
全力で首を上下に振った。
今此処に少女と虚無の器による物語が始まったのだ。
少年家を得る(居候)因みにこのはぐれ悪魔グガンのランクは大体B〜Cの間くらいです。
悪魔としては弱いし原作に登場したはぐれ悪魔達よりも弱いです。
お気に入り、評価ありがとうございます!次回はちょい間が空くかもしれません。
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