斬影原典 ――贋作者から創造主になるエミヤの話――   作:みそそ

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二柱の神

そこは、法も、正義も、既存の神話も届かない、ただ「生」という熱量だけが荒れ狂う新世界だった。

 空を裂くのは鉄の羽を持つ巨鳥であり、大地を揺らすのは水銀の血を流す幻想種。美しく、残酷で、一瞬の油断が死へと直結する楽園。

「――よし、これで行こう。捕食対象が絶滅しないよう、繁殖能力と魔力循環のバランスを調整した」

 世界の頂に位置する断崖の上で、エミヤは満足げに言った。彼の傍らには、黄金の縁取りがなされた一丁の包丁が浮いている。かつての赤い外套は消え、その身に纏うのは概念そのものを編み上げたような純白の衣。彼は今や、生命の骨格を自在にデザインする、この宇宙の『設計者』であった。

「ヘッ、理屈はいいから早く形にしろよ。あいつらと殺り合うのを、俺の槍が待ちかねてんだ」

 隣で豪快に笑うのは、かつて神性を失ったはずの男。エミヤが描く「概念」に、自らの荒ぶる生命力を注ぎ込んで実体化させる『執行者』、クーフーリンだ。

 彼が青い髪をかき上げ、ルーンを刻んだ掌を虚空にかざす。エミヤの設計図に「闘争」という魂が吹き込まれ、新種の獣たちが咆哮と共に森へと放たれた。

「おいおい、今回のは気合が入ってんな! あんな牙、掠っただけで霊基が削れるぜ」

「君が退屈だとこぼすからだ。……それとも、怖じ気づいたか?」

「ハッ、笑わせんな。このスリルこそが『自由』ってやつだろ!」

 クーフーリンは、エミヤが醸造した「神の酒」を喉に流し込むと、獲物を求めて崖の下へと飛び降りていった。その姿は、兵器として消費される道具ではなく、自らの意志で死地を駆ける一匹の狼そのものだった。

 独り残されたエミヤは、眼下に広がる、残酷なまでに美しい自作の宇宙を見つめる。

 ここには、救うべき弱者も、倒すべき悪もいない。

 あるのは、精一杯に生き、腹を空かせ、戦い、そして笑って死んでいく生命の循環だけだ。

 エミヤは手元の包丁で、傍らにあった未知の果実を、かつて誰かのために夕食を作った時と同じ手つきで丁寧に切り分けた。

「……さて。次はどんな『驚き』をこの世界に混ぜ込もうか」

 かつて贋作者と呼ばれた男の唇が、穏やかな、しかしどこか悪戯っぽい弧を描く。

 悲鳴のような風の音と、生命の鼓動が混ざり合う騒がしい沈黙。

 二柱の神による、終わりなき「創世のごっこ遊び」は、まだ始まったばかりだった。

 

「……お前を連れてきて、正解だったよ、クーフーリン」

 その呟きは、獲物を狩る男の咆哮にかき消され、新しい世界の風の中に溶けていった。




エミヤが贋作者から創造主になって、新世界を構築する話を書こうと考えた。
オリジナル武器を作ることで、概念の書き換えと新たな世界を構築する能力を手に入れる展開を最初に思いついた。
魔術詠唱と、固有結界がオリジナリティがあるため、それをオリジナル武器に落とし込むことが可能なのではないかと考えた。
しかし、なかなか彼が作るオリジナル武器を思いつくことができなかった。
そこで、調理器具を武器と定義させることで、武器としてのオリジナリティを出す=概念の書き換えにつながるという屁理屈を使った。
また、アラヤの目を盗んで創造主になるという展開を作るために、ゲーティア戦敗北IFという舞台を使い、アーチャーを使用済み(監視対象から外れる)の駒にした。
エミヤは誰も死なない世界、恒久的な平和な世界を目指そうとすると考えた。
しかしゲーティアが作る誰も死なない世界を見た時に、エミヤは平和すぎると人は進化をやめ、停滞し、思考停止に陥り、繁殖しなくなり、緩やかな死へと向かうと気が付く。これは守護者としていろんな時代の流れを見てきて気がついた、研究結果ということにした。
そこで生と死、自由の象徴を持ったクー・フーリンをエミヤが作る箱庭に入れることで、停滞した世界を防ぐという方法を思いついた。
なぜ二人が対の存在として描かれるのかの一つの答えになったかもしれない。
二人が作った世界は、メイドインアビスの、アビスを元ネタにした。
幻想種が弱肉強食をする世界。そこに正義も悪もない。そして常に命のやり取りがある。
エミヤは悩まなくていい。クー・フーリンは退屈しなくていい。そんな世界を考えた。
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